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忘れられた街での忘れ物(能力クリエイト編:リサイクル)8

前回のあらすじ:心が落ち着く

 夜が訪れていた。

 青い月の光が周囲を照らしている。

 ブラックは、20個の石を正十二面体の頂点にくるように配置し、

 12321回目の『リサイクル』を行った。


「おじちゃん、まだ寝ないの?」

「ああ、俺は寝なくても平気な体なんだ」


 12321回目でできたモノは、

 Bランク魔法石だった。

 色は黒。

 271個目の――同じモノだった。


「すごい体なんだね」

「そうかな・・・」


 黒峰黒也だったときは、一日の半分以上寝ていた。

 それを、考えると、すごいのだろうが、もうずいぶん昔のことなので、

 ブラックは実感がわかなかった。


「セシルは、自分の家に戻らないのか?もう、深夜だが・・・」

 ブラックは、黒の魔法石を投げ捨て、次の『リサイクル』に移る。

「うん、家に帰っても誰もいないの」

「両親は?」

「お母さんは、物心ついたときにはいなかったの。お父さんは、出稼ぎに行っている」


 12322回目のにできたモノは、澄んだ湖の宝石。

 湖そのものが結晶化したと思えるほど、美しい宝石で、

 これ一個で、金貨何百枚にも相当する。

 58個目の――同じモノだった。


「ガルハイム王国に出稼ぎにいっているのか?」

「わからない。けど、たぶん、ガルハイム王国かも」

「かも?」

 澄んだ湖の宝石を投げ捨て、ブラックは次の『リサイクル』うつる。

「うん、どこに出稼ぎにいっているのか、あたしわからないの。もうお父さんに、一年くらい、会ってない」

「そうか・・・」


 一年も、会っていないとなると、

 父親に捨てられたのか、とブラックは思った。

 よくある話だ。


「セシル、寂しくはないかい?」

「ときどき・・・」セシルは目を擦る。眠たそうだ。「でも、今は、おじちゃんがいるから、さびしくは・・・」


 言葉が途切れ、セシルの寝息が聞こえて来た。

 セシルはブラックの隣で横になっていた。

 体はゆったりと上下していた。

 月の青白い光が、セシルの華奢な体を薄らと照らしている。


 ブラックは、黒衣を脱ぎ、セシルにかけてあげた。

「んんん・・・」と小さくセシルはうなる。


 ガルハイム王国は軍事国家だった。

 周辺国と、頻繁に戦を起こし、ガルハイム王国は潤す。

 戦があるところには、物資の流れが活発になる。

 その結果、金があふれかえる。


 危険があるから、セシルを置いていったという可能性も考えられなくもないか。

 わずかな、可能性だがな。


 ブラックはそれ以上、深く考えなかった。

 どうでもいいことだ。関係のないことだと思った。


 12323回目の『リサイクル』。

 何も期待せず、何も考えず、作業のように、行った。

 不思議なもので、欲がない時こそ、いいことが起こる。


 その12323回目は、今までの『リサイクル』明らかに違った。

 白く淡い光が、石で形作られた正十二面体をぼんやりと包む。

 普段なら、その光が静かに消えていくだけなのだが、

 今回は、光はすぐに消えなかった。

 虹色の光が、正十二面体から空へと伸び上がり、

 一瞬、夜から日中になったかのような、輝かしい光が周囲を包んだ。


 目を開けたブラックの目の前には、

 緑色の燐光を輝かす、美しい石が出来ていた。

 名前はわからない。

 ただ、その、スーパーレアを超えたモノは、

 恐ろしい効果を秘めていることだけはすぐにわかった。

 それは、ブラックにはもったいないすぎる――モノだった。


 だから、それを――――――。


 

次回予告:リサイクル編おわり

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