表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/32

忘れられた町での忘れ物(能力クリエイト編:リサイクル)7

前回のあらすじ:二つの石から出来たモノ

「やったぞ、やったぞ、やったぞ。『聖なる乙女の魂の石』が出来たぞ」


 ブラックは白濁した石を指でつまみながら、喜びを全身で表す。


 ブラックの仮説は間違ってはいなかった。幾何学的な石の配置をすることで、レアモノが合成される。さらにそこから、何千回もの実験の結果、幾何学的な形の中で、より美しい?とされる、正多面体の形をとった時、レアをさらに超える、スーパーレアモノが合成されるとわかった。


 石の数12個、正二十面体の石配置のときに合成されたスーパーレアモノ――『聖なる乙女の魂の石』はファンタジアでは伝説とされるモノの一つだった。伝説の勇者のパーティーメンバーの一人、聖女マリアンヌが亡くなった時、自らの思いと魔力を宿した石とされている。


 それは、持つ者の、魂を癒すという。


「やはりな・・・」


「何がやはりなの?おじちゃん」


 鉱山の周辺を意味もなくぶらつき、落ち着いた仕草で石の上に座ったブラックに、セシルは声をかける。


「ああ、セシルか・・・この石は素晴らしいぞ。実に素晴らしく、感情の起伏がほとんどなくなるんだ」


「それって、どういうこと?」


「常に冷静でいれるということだ」


「それって、すごいことなの?」


 セシルは、まだ子供だったので、感情の起伏が抑えられ、常に冷静でいれることの素晴らしさがよくわからなかった。


「ああ、すごい。人は、緊張したり、不安になったり、恐怖を感じたり、悲しくなったり、様々な場面で心揺さぶられる。例えば、意味もなく、殴られたりしたら、むかつくだろ。それが身近な奴で、逃げる術がなかった場合、恐怖や不安で押し潰されて・・・」


 と言葉を発した時、ブラック――黒峰黒也は中学時代に受けたいじめを思い出した。意味もなくいじめられ、毎日、いじめる奴らに、明日は何をされるんだろうと、布団にくるまり、恐怖と不安と悲しみで押し潰されそうだったそんな日々を――自分の心の奥のブラックボックスにしまっておいた、その記憶を思い出した。


 嫌な記憶を思い出し、怒りのあまり、すべてを破壊したくなった。

 しかし、『聖なる乙女の魂の石』効果によって、怒りは消え去り、なんで、こんなことを話しているんだろう、といった無意味さを、ブラックは感じた。


「さあ、センチメンタルな話になってしまったな」ブラックは立ち上がる。「まだ、『リサイクル』で生み出される極限のスーパーレアは何かを検証はしていない。さっさとやってしまうか」


「おじちゃん・・・」


「ん?」


「あたし、よくわからないけど、おじちゃんも、辛い過去があったんだね。物が食べられなかったり、いろんな人に、無視されたり、いろんな人にひどいことされたり・・・えっと、えっと・・・え?」


 ブラックは、セシルの頭を撫でていた。


 埃に汚れ、艶を失った髪をブラックは優しく撫でる。


「俺のことなんて、大したことじゃないさ」ブラックはセシルの頭をポンポンと叩いた。「さあ、最後のスーパーレアモノが一体どれほどすごいものなのか、調べてみるか。言っておくけどな、『聖なる乙女の魂の石』を出すのだって、何千回もの施行を繰り返したんだ。今度はもっと大変だぞ」


 ブラックは、そうは言いつつも、この場所に長居しすぎてしまったと思っていた。

 このような長居したことで、以前、嫌な経験をしたような気もした。

 仲良くなったセシルとの別れを思うと、少しだけ悲しいような気もしたが、

 その悲しみは、次の瞬間には消えていた――『聖なる乙女の石』の力によって。


次回予告:夜、緑、過去

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ