忘れられた町での忘れ物(能力クリエイト編:リサイクル)5
前回のあらすじ:リサイクルの法則1
「おおおおおおおおおお、すごいぞ、すごいぞ。こういった法則だったのか」
次の日、再び、ブラックにセシルは会いに行くと、何やら発見があったようで、ブラックが嬉しそうに叫んでいた。
「おじちゃん、また何かわかったの?」
修道服にメイドの靴、さらに、それから幾度のゴミ箱でのリサイクルによって生成された、猫耳と猫の尻尾を装備したセシルは、ブラックの背後から覗き込みながら聞く。
ブラックの手元には、輝く石が幾つも乗っていた。
「おお、セシルよ。見よ。魔法石がこんなにもできたぞ」
「魔法石?」
「そうだ、魔法石だ。魔法の力を内部に蓄えた石。ほら、こうすると」
ブラックは赤色の魔法石をつまみ、放り投げた。
「あっ!」
セシルが声を発すると同時、鉱山の壁面に当たった魔法石は、赤色の炎を上げて爆発した。
細かな破片が、セシルとブラックへと降り注ぐ。
「どうだ、すごいだろ」
「でも、それってすごくあぶないんじゃあ・・・」
セシルは修道服についた埃を払いながら言う。
「なんでだ?なんで、あぶないんだ?」
「だって、それって爆弾みたいなものなんじゃあないの」
まだ、父親が鉱山で働いていた時、その鉱山のふもとで、穴を掘るために仕掛けられた爆弾の爆音と粉塵をセシルは幾度となく体験していた。
「ははははは、無知だな、セシルは。こんなものは爆弾ではない。そもそも、俺が今使った魔法石は、魔力を持たない者には使えない粗悪品だ」
「そあくひん?」
セシルは人差し指を口元に持って行き、首を傾げる。
「そうだ。粗悪品だ。魔法石はだな 物によって分類がされているんだ。自発的に魔法をこぼすSランク魔法石、使用者が覚えていない魔法を使えるようにするAランク魔法石、そして、この俺が使った魔法石は、そうだな、使用者の魔力を限定的に増大する・・・まあ、よくてEランク魔法石と言ったところだ」
ブラックは手に持った魔法石をポイッと捨てた。
「あ、何で捨てるの?」
「ん?いらないからだ。俺はそんな粗悪品には興味がない。俺が欲しいのはSランク魔法石で、それも超がつくくらいのレアスキルが付加されたものだ。それを、俺の能力『装飾クリエーション』で加工して、くくくくく・・・だから、俺はそんなものはいらないんだ」
「なら、あたしがもらっていい?」
「好きにすればいい」
セシルは、ブラックが捨てた魔法石を拾った。
ビー玉くらいの大きさだった。赤く輝く部分はごく一部で、大部分が石に覆われている。鉱石の原石に似ているな、とセシルは思った。
それでも、太陽の光を当てるとキラキラ輝いていた。魔法石に当たった赤い反射光がセシルの目にちらついた。
「さあ、実験、実験」
「ねえ、おじちゃん・・・」
「ん?まだ、用か?ああ、そうか、飯か・・・そうだな、そろそろ飯を作らないといけないか」
ブラックは、頭をかく
「違うよ。あのね。あたしよくわからないかもしれないど、、そのう、おじちゃんの能力である『リサイクル』ついて、昨日から新たにわかったことが知りたいんだ」
「・・・な、何を生意気なことを言っている。なんで、俺がお前みたいながきんちょに、自分の能力の新たに分かったことを説明しないといけない」
「え?」
セシルは、あまりにひどいことを言われたので、んんんと涙ぐんだ。
「―――なんて、言うと思ったか?ははははは」
「・・・ん、もう、ひどい!おじちゃん!」
セシルは、ブラックの体をポコポコポコとたたいた。
ブラックはすまないすまないと詫びていた。
「で、そこまで知りたいなら、教えてやる」
ブラックは地面に落ちていた石を二つ手にする。
「まだ、すべてがわかったわけではない。それに、恐らくこの能力は完璧にコントロールはできないだろう。この能力はガチャガチャ、ある種のガチャガチャなんだ」
「ガチャガチャ?」
セシルはガチャガチャが何なのかわからなかった。
「そう、そして、俺が実験をし、分析をし、検証をする行為は、どの種類のガチャガチャの箱を選ぶかという行為でしかない。ただ――」
「ただ?」
「精度を高めれば、ガチャガチャから出したいカプセル出せたらな~なんて、夢を見ている」
「ガチャガチャ?カプセル?夢?」
「そう、夢だ。夢は大切だぞ、セシル。それが喜びに通じるからな、ははははは」
セシルはブラックが何を言っているのかわからなかった。でも、ブラックが楽しそうに話しているのを見ていると、セシルも、不思議と嬉しくなった。
次回予告:直線、三角形、四角形?
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