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悪役令嬢ひのこ、私、あなたに近づいている(悪役令嬢底辺編)

前回のあらすじ:蠅ざまぁ

「「「ひのこさん、どうしたの? すごく輝いている」」」


 廊下に集まった、同学年の生徒たちが私を見ながら、呟いていました。


 廊下には、期末テストの結果が張り出されています。

 張り出されているのは、上位者30名のみ。

 その一番上に私の名前がありました。


「ふん、偶然よ。たまたまいい点を取っただけ」


 高坂リオが。長い髪をかきあげながら、

 呟いていました。

 高坂リオの学年順位は13番だったようです。


「あら、高坂さん、あなたも頑張ったようね。13番?あなたにとってはありえないくらいに、素晴らしい順位じゃない。写真でも撮っておいたらどう?もう二度と、このような順位は取れないかもしれないでしょ」

「・・・・・・・ぐっ」


 高坂リオはは唇を噛みながら、

 私に何も言わず、教室に戻って行きました。


 そう、数字による客観的な格付けの前には、

 どんな言葉も負け惜しみになります。

 それほどまでにこの聖マリアンヌ女学院では、

 テストの成績が大きな意味を持っていたのです。

 特に今回の期末テストでは、その比重が大きかったのです。


 同学年の生徒の中心にたたづみ、

 学年でトップの成績をとったことに、

 気分を良くしていますと「クリスティーナ・ひのこさん、クリスティーナひのこさん、至急職員室までおこしください」という、眼鏡マリア先生が私を呼ぶ放送を耳にしました。



「で、何の用なんでしょうか、眼鏡マリア先生」


 眼鏡マリア先生は、眼鏡の奥から、

 じっと私を見つめています。

 その瞳に浮かぶ淀みには、

 私の成績結果に疑いをもっているのは明らかでした。


「あなた、どのようにして、あのような点をとったの?」

「どのようにって・・・勉強を一生懸命し、とりました」

「けれど、こんなことありえるのかしら、以前の輝かしい時のあなたでも、10位以内に入るのがやっとというかんじだったのに」

「そうですね。以前の大して輝いていない時の私は、確かに10位以内に入るのもいっぱいいっぱいでした」

「マリア像があなたを見つめていますよ」


 眼鏡マリア先生は職員室奥におかれているマリア像に目を配ります。


 古びた石で造られたマリア像。

 その右手には、まだ幼いイエス様が抱かれています。


「それが、どうしたんですか?」

「どうしたかですって!あなた、本当のことを白状しなさい!」


 マリア像の前では偽りを話すことは許されないと思い込んでいる古い体質のクソババア。

 分厚い眼鏡の奥にある淀んだ目。

 その脇には、細かな皺が幾つも刻まれています。


 数十年前は確かに美人だったのでしょうが、

 私には、眼鏡マリア先生が、時代遅れの服のように見えました。

 生地は色あせ、ところどころ虫が喰い、

 今にも捨てられそうな誰も見向きもしない、廃品回収行きのそんな服。


 肌の劣化と皺を厚化粧で、

 色と艶を失った髪を毛染めとヘアスタイリング剤で、

 何とか誤魔化していますが、私にはそれが実に憐れに見えました。


「それだけですか?眼鏡マリア先生」

「い、いえ、それだけではないわ」


 私に成績についてけちをつけたとしても、

 私が不正を行った事実はありません。

 私は実際に勉強をし、努力をし、トップを獲得したのです。

 不正などしていないのですから、

 どれだけ文句を言われようが、

 それは私には負け犬のとうぼえにしか聞こえませんでした。


「私は、あなたのことを信じていませんが、結果は結果です。今回、あなたが5位以内に入ったという事実は不本意ながら認めないといけません。つまり・・・」


 眼鏡マリア先生は悔しそうに口を結びます。


「なら、私は、聖マリアンヌ女学院の代表として、クリスチャン高校とのお茶会に参加してもよろしいのですね」

「残念ながら、私にはその権利をはく奪する権利はありません。本当に、不本意ながら・・・」


 私はざまぁみろクソババアと、

 悔しがる眼鏡マリア先生を見て思いました。


 クリスチャン高校とのお茶会、聖マリアンヌ女学院代表としての出席。

 どうやら、私の人生に光がさしてきたようです。


 ブラック、私はあなたに少しずつ近づいている。


 


 

次回予告:金髪、碧眼、ホワイト

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