表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/32

悪役令嬢ひのこ、底辺からスタートします(悪役令嬢底辺編)

前回のあらすじ:王子と新領域に

 100人との男性と、1000人の女性に酷いことをしてしまった私は、

 誰よりも美しく清らかな――ブラック様に、

 私が犯した数々の酷い行いを指摘され、

 婚約破棄されました。


 数々の罪を償うため、

 私はまず自分の血筋が築き上げてきたものを、

 両親の相談なく勝手に、処分しました。


 そのことに、気がついた両親は、

 酷く哀しみ、

 また、酷くお怒りになり、

 私は家を追い出され、

 独り暮らしをすることになったのです。



「ねえ、ちゃんとお客様に笑顔であいさつしなさいよね」


 マクゴナグゴでバイトし、

 生計をたてている私は、よく叱られます。


「す、すみません」

「まあ、いいけどさ。気をつけなさいよね」


 お客様への笑顔。

 プライドが高く温室育ちの私は、

 うまく笑顔が作れません。

 なので、しばしば、こういった些細なことでよく叱られます。


「ねえ、あんたの家、お金持ちらしいけど、どうしてバイトなんてしているの?社会勉強か、なんかのつもり?」

「いえ・・・とある事情で、家を追い出され、生活するのにお金が必要で・・・」


 自分の犯した罪を洗い流すためとは、

 私は口が裂けても言えません。


「はあ?それって、マクゴナグゴのバイトだけじゃ、無理じゃん。薄給だし」

「はい、他にもバイトを四つほどかけもちしています」

「え?四つ?学校は行っているの?」

「はい」

「そんなの・・・体壊しちゃうじゃん」

「いいんです。私、それくらいのことをしてきましたから・・・」


 あっ、と私は思いました。

 うっかり、変なことを口走ってしまったのです。

 しかし、バイトの先輩はそのことに気がつかず、

 私が実家で犯した問題について言っているのだと思ったようです。


「いろいろ大変なんだね。さっきは強く言ってごめんね」

「いえ、いいんです」

 私は100人の男性に酷いことをし、1000人の女性を傷つけました。

 強く言われるのは、当然なのです。


 マクゴナグゴのバイトは夜の9時に終わりました。

 私は、とぼとぼと帰路についていると、

 とあるコンビニの前で、ある女性を見ました。


 その女性は、ちょうどコンビニで買い物を終え、出てきたところでした。


「・・・・・・ちゃん?」


 気がつくと、私は走り出していました。

 その女性に向かって、叫んでいました。


「あれ、ひのこちゃんじゃない、久しぶり。何年ぶり?小学校以来じゃない?」


 その女性は、私が551番目に酷いことをした女性でした。


「はあ、はあ、はあ、はあ、ごめんなさい。沙耶ちゃん。あの時、貴方の好きだったケイ君を奪い取って、はあ、はあ、本当にごめんなさい。あなたの目の前でケイ君と触れ合って、ごめんなさい」


 私の目から自然と涙が零れ落ちます。

 私にこのようなことを言われると、予想だにしていなかった沙耶ちゃんは、

「え~、もういいよ。あの時のことは。えっと、気にしていないからさ」

 と優しく言ってくれました。


 それが、沙耶ちゃんの本当の気持ちかどうかはわかりません。

 けれど、私の心は少しだけ軽くなったような気がしました。


 私の残りの罪は、男性100人、女性999人です。



(私との婚約破棄したブラック。私は、あなたが求めるような女性に必ずなってみせる。そして・・・)

 

次回予告:眼鏡、マリア、テスト

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ