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あなたのための初めてのキス(暗黒編)

前回のあらすじ:8歳の女の子とキス

 競走馬として優秀な成績を残した牡馬は種馬となる。

 その種馬の初めての相手は、経験豊富な熟した雌馬らしい。

 つまり、

 熟練の技術を手取り足取り、教えてもらうのだ。


 二度のキス?をすましたブラックは、

 次の相手を熟練の熟女と決めていた。

 ターゲットの年齢は40歳。

 前回、8歳の女の子を攻略したことで自信をつけたブラックは、

 キスのレベルアップにブーストをかけるために、

 無謀にも、前回の5倍の年齢である女性に挑戦しようとしたのだ。


 ブラックは、『ろくでなし市場』の繁華街を歩き回り、

 数百人もの吟味のすえ、

 一人の熟女に手取り足取り教えてもらうことに決めた。


 その熟女は、パン屋で働く未亡人だった。


「こんばんわ。ベーコンロール100個ください」

「ほほう、すごいね。お兄さん。一人で、こんなにも食べるのかい?」

「いえ、僕一人では食べません」

「うらやましいね~。彼女とでも食べるのかい」

「いえ、このパン屋で働いているお姉さんと・・・あなたと食べたいんです」

「・・・え?」


 パン屋で店番をしていた熟女はそこそこふくよかだった。

 相撲取りぐらいふくよかだったと言っていい。


 ブラックは繁華街にいる熟女を吟味に吟味を重ねた。

 しかし、お眼鏡に叶う熟女はいなかった。

 当然だった。ブラック――つまり黒峰黒也は17歳、

 美少女ゲーム好きの高校生なのだから。


 なので、その選ばれし数百人の熟女の中で、

 もっともブラックにとって評価値が高かった熟女を選んだ。


 パン屋で働く熟女は、体形を除けば完璧だった。

 髪は艶やかなピンクのストレート。

 肌はつるんつるん。

 なによりも、未亡人であるにもかかわらず、

 暗さを微塵も見せず、

 明るく振る舞っていることがポイント大だった。


 本当に、着ている服が、

 はちきれんばかりにピッチピッチという以外は完璧だった。


 そして、深夜、

 『ろくでなし市場』の『永遠の愛を誓いあう木』の下で二人はおち合った。

 魔法石による照明が、

 ブラックとパン屋の熟女をやさしく照らしていた。


「本当に、わたしなんかでいいのかい?」

「はい、あなたは完璧です」


 体形以外は、という部分は省いていた。


「あんたが初めてだよ。おとっさんが亡くなってから、あたしに言い寄って来たのは」

「あなたは、すごく魅力的です」


 これも、体系以外は、という部分は省いておいた。


「ほんとうにいいのかい?あんたにキスをしても」

「もちろんです。僕に教えてください。熟練の技術を」

「嫌だね。熟練の技術だなんて・・・そんなにうまくはないよ」

「いいえ、僕に教えてください。僕を導いてください」

「そうかい、そこまでいうなら・・・久しぶりだからうまくできるかわからないよ。なら、目をつぶっておくれ」

「はい!」


 ブラックは目をつぶった。


 女横綱、いや、パン屋の熟女の顔を近づけてくる。


 ちゅっ


 フレンチキスだった。


 あれ、この程度なの?と思った。

 これが、熟練の技術なのかよと、

 ブラックは鼻で笑いそうになった。


 しかし、それは序章でしかなかった。


 熟女の舌が、

 ブラックの唇をこじ開け、

 侵入してきた。


「な、なぬ!」


 熟女の舌がブラックの舌を攻撃する。

 それも、猛烈に、苛烈にアプローチしてきた。

 ぬちゃぬちゃぬちゃ・・・と。


「はっ、はっ、はうっ!」


 ブラックはそのあまりの舌さばきに、

 膝がガクガク震え、

 やがて、地面に膝をついた。


 それでも、欲望を溜めに溜めた熟女の攻撃は終わらなかった。


 長く


 長く


 激しく


 戦いは


 続いた。


 そして、


 夜が明けた。


 朝日が、やけに眩しかった。

 戦いを終えたブラックには世界が違った風に見えた。

 空気が実に美味しかった。


 気がつくと、ブラックのキスレベルは3->30にレベルアップしていた。


 ブラック曰く、その熟女との激しいキスの余韻は、

 しばらく消えなかったという。

 何度も、悪夢にうなされたとか・・・。



次回予告:王子、洞窟、新世界



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