あなたのための初めてのキス(入門編)
前回のあらすじ:偽勇者ざまぁ
「キスでもするか」
ブラックはファンタジアの『ろくでなし市場』を歩いているときに、
キスでもしてみようかと思った。
この街はいたるところで、
男女が人目をはばからずキスをしていた。
基本的に男と女、
時には女と女、
まれに男と男もキスをしていた。
それで、興味を持ってしまったのかもしれない。
以前、悪役令嬢ひのこにキスを迫られたことがあったが、
あの時は拒否をした。
興味がなかったからだ。
だが、今は興味がある。
すごく、キスがしたかった。
「さて、誰とキスをしようか」
正直、誰とでもよかった。
ただ、まだ初心者だから、
はじめは、低年齢の方がよかった。
そこから、少しずつ上達してゆけばいいとブラックは思っていた。
手頃の女を探した。
何百人と吟味し、
そして、ついに、
自分のファーストキスの相手として、
最高の相手を見つけたのだ。
「お嬢ちゃん、何歳?」
「あたし、4歳だよ」
おさげな女の子だった。
目がクリとした可愛い子だった。
服はピンクのワンピースを着ており、
靴はカウンターに隠れ見えなかった。
「お嬢ちゃんは一人で武器屋の店番をしているの?」
「うん、あたし、一人でしているの」
武器屋の店番を四歳の女の子一人でさせるとは、
かなりレベルの高い武器屋だとブラックは思った。
「ねえ、お嬢ちゃん、おじちゃん、キスがしたいんだけど、キスしてくれない?」
「え~やだよ~」
簡単に断られた。まあ当然だ。
「なら、どうしたら、してくれる?」
所狭しと積まれた武器が、ガラッと音をたてる。
「う~ん、そうだなあ~。この店の武器を全部買ってくれたら、キスしてあげるよ」
女の子は結構なやり手だった。
何百種類と武器はある。
それでも、キスがしたくてしょうがないブラックは
「しょうがないな~、ここにある武器全部で、いったいいくらなんだい?」
金貨1000枚」
四歳の女の子とのキスは、
金貨1000枚の価値があるらしい。
「しょうがないな~」
限界突破しそうだったブラックは金貨1000枚をあっさり払った。
「ありがとう。おじちゃん。あたし、すごくうれしい」
これだけの武器が売れたのは初めてだったらしい。
かなりさびれた武器屋なので、
もしかしたら、武器が売れたのも久しぶりだったのかもしれない。
「さあ、お金は払ったよ。早く、おじちゃんにキスをしておくれ、もうやばいんだ」
「うん、いいよ。なら、目をつぶって」
「わかった」
ブラックは目をつぶった。
初めてのキスだから、
ドキドキした。
「ねえ、キスをするよ」
女の子の顔が近づいて来た。
ドクンドクンドクン。
そして、
ちゅっ。
キスをされた。
それも、ほっぺたに。
これが、ブラックの初めてされたキスだった。
ブラックのキスレベルは1ー>2にレベルアップした。
次回予告:チュ、チュ、チュ