ウィルクネーゼ・キュイ・アドラの楽しい誕生日
はい、運動会が終わって次の日は休みで、祝ってもらいたい気持ちをいつも隠しているアドラ姉様の誕生日がやってきました。楽しく書いていられる間は、まだ大丈夫だなとは思う。
百話まであと3話。もうちょっと頑張りたいけれども、うん、次の日で100話目指そう。100話は文化祭にしたい。文化祭に楽しい思い出がいっぱいあります。中学の運動会の時は不良に絡まれて、非常に嫌な気分でした。
今日はウィルクネーゼ・キュイ・アドラ姉様の誕生日で、実家へ帰郷していたエリューにその事を伝えると、エリューは、誕生日プレゼントを一緒に買いに行こうと言いました。
私としても、誕生日プレゼントで姉様が欲しがっているものを確認しておいたので、誕生日プレゼントを買いに行く場所は、最近はやりの洋菓子店『フランシスカ』に向かう。そこでは、やはり人が群れをなして並んでいたが、姉様の笑顔とそこまで辛そうではない行列の待機を秤にかけた結果、圧倒的な差を見せて、姉様の笑顔を手に入れるための戦いが幕を開ける。エリューは別行動であるが、私は待つのも面倒になって顔パス出来ないかな、と思っていく。
一方その頃、ワタクシは大言壮語を言ったことをはやくも後悔していた。ワタクシは自慢ではないが、カミサマと変態紳士とストーカーにしか誕生日プレゼントを貰った記憶も、プレゼントをあげた記憶ぐらいなのだ。そんなワタクシは、友人などに聞くのも、無駄な羞恥心で無為となり、近くにいた変態紳士に聞いても、納得のいかない答えが返ってくるし、カミサマは、自分の欲しいものをあげればいいと言ってくれるが、それではないと思うのだ。自分なんか居るのか居ないのかわからないような人間と家族で居てほしいなんて過ぎた願いを叶えて貰える訳ではないだろう。それは、カミサマですらも禁則行為ならしいから。
とりあえず、ワタクシはフラリと立ち寄った神社の神主に許可を貰って、自分との家族の写真を入れて、家族がどんなに離れても繋がって居てくれる『家内安全』のお守りを、様々な手段を使って作る。このお守りは正真正銘の神様のお墨付きも貰ったことだし、ラッピングなんかはどうするかも考えものである。
(さてさて、こんなに誕生日プレゼントを選ぶことが楽しいだなんてなぁ……)
ワタクシはとても真面目にそう思うのだ。
ちなみにこの頃、私は待ち続けて居た洋菓子店にようやく店に足を踏み入れて、迷うことなく、アルモノを選んで買う。ついでに、市場でケーキの材料を買って、メイドのサラに姉様の姿がいないことを確認させて、バレないように屋敷に入る。
屋敷に入ると美味しそうな匂いのする厨房に、エリューがいつのまにか帰って居て、味見をして居る。エリューを叱りつけた後に、私は材料を机の上にドスンと音を立てて置く。私とエリューは、こうしていると本当の姉妹のようだなって思いながら、二階の私の部屋に戻る。私の部屋では、エリューからのメモと共に妙な膨らみのある届け物が机の上に置いてある。届け物の封を開けて、中身を見るとウサギちゃんのぬいぐるみ。メモにはこう書かれている。
『昨日の贈り物、ありがとうね。ささやかながら、お礼だよ。ワタクシが居なくなっても、これをワタクシだと思ってね』
私は、そのメモを読み終えると不覚にも目から汗が湧き出て止まらない。必死に手で拭こうとしても、目からの湧き出す汗は止まらない、止まってくれない。私が涙を流し終えると、ウサギちゃんのぬいぐるみをギュッと抱きしめる。ウサギちゃんのぬいぐるみを抱きしめていると扉をノックする音が聞こえる。慌てて、ウサギちゃんのぬいぐるみを後ろに隠して、用件を聞く。
「はーい、誰ですか?」
「ワタクシだよ。エリューちゃんだよ。ぬいぐるみを縫っている最中に手を怪我してエリクサーをかけられてパニクるエルちゃんです。プレゼント気に入ってくれたかな?本当に渡したいものを渡すために来ちゃったよ」
「え、なにかな?今扉の鍵を開けるから、少し後ろに下がっておいてね」
「うん、わかったよ」
扉の鍵を開けて、サンタさんの格好をした時期外れの幼女の妹にツッコミを入れる。
「サンタさんは12月に来てよ」
「いやいや、ワタクシはサンタさんはいるんだよ。ワタクシはただカミサマと心の声に従っただけですわ」
「その不思議ちゃんなのに、本当のこと全て言っているのが笑えないね」
「はい、プレゼントですにゃ」
彼女の思惑がわかってしまった。私の誕生日には、彼女は帝国の始業式でバタバタして、誕生日プレゼントを渡す機会が遠のいてしまう。さらに、前例があるからこそ、彼女は怯えているのだろう。だから、私がするべきは笑顔でプレゼントを受け取る。プレゼントには、銀髪のエリューそっくりの女の子のお人形さん。疑問を頭の中に浮かべていると、お人形さんがエリューの声で話しかけてくる。私は二度めの涙の襲来になすすべもなく泣いてしまう。慰めてくれるエリューに向けて、エリューに指切りげんまんをする。
『指切りげんまん 嘘ついたらはりせんぼん飲ーます。指切った』
どんな約束かは、私は彼女以外の誰にも内緒にするつもりなのだ。だって、こんなに恥ずかしくて思い出して赤面してしまうような約束なんて......
数時間後、夕暮れどきで烏がアホーアホーと鳴いている時に、お父様が下に降りてきなさい、と私達に声をかける。私がエリューを起こそうと辺りを見回す。すると、エリューはいつの間にか私の膝を枕にしてお昼寝して居たらしい。私の顔を見てリンゴのように赤面する彼女をからかいながら、下に降りる。
一回では、姉様が嬉しそうに笑顔を見せている。
そんな姿を見た私達は、誕生日の祝福の歌を歌いながら、誕生日プレゼントを一斉に渡す。エリューから渡された、ピンク色のリボンに結ばれた袋の中には一つのお守りと懐中時計。懐中時計の蓋をあけると、エリューが描いた家族の絵が中にある。そして蓋に刻まれた文字には『どんなに離れていてもワタクシ達は家族ですよね』と書かれている。また、お守りは『家内安全』と書いているらしい。遠目で見ただけなので、上手く見えないが、姉様の笑顔だけが印象に強く残り続けている。さらに、メッセージを見たお姉様は、滅多に見ない泣き顔でいる。私が次に渡したプレゼントは、洋菓子のフィナンシェ。
お姉様は笑顔で受け取って、さっそく夜ご飯を食べ終わると頂くわと言ってくれる。
夜ご飯も終わり、ケーキのロウソクを吹き終えると万雷の喝采を浴びた姉様がドキドキしているらしいのを見た私達が思わず声を出して笑ってしまう。
この誕生日は、私達の最後の別れではないのだから、さぁ、楽しんで、これから歩み続けるのだ。




