表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

7.元気なんだ。元気なんだ!元気なんだ?

「二人とも、何をそこでしゃべってるの?ご飯が冷めちゃうわよ」

二人をテーブルに急かすと、祥子と雅志は私の顔を見て、目を見合わせて笑った。雅志が、まるで駄々っ子を宥めるように優しい口調で、「今行くよ」と返事する。

久しぶりに三人がそろった、和やかな夕食。


景子は食器を棚にしまいながら、昨日のことをぼんやり思い出していた。

食器洗い機には3人分の食器。

私と雅志と祥子。大人だけの夕食。

食後にはコーヒーを飲みながら、雅志が買ってきてくれた高級チョコを食べて。

まるで、雑誌にでも出てきそうな、優雅さだった。

それでも、景子にとってはどこか空虚で。


食器を片付け終わった景子はテレビをつけて、ソファに座り込む。

自然とため息がこぼれる。

実は、景子はこのところ、不安だった。


もうすっかり調子は戻っている。

だから、祥子と雅志に心配をかけまいと、顔には出さないようにしている。


でも、毎晩見ていた、あの七海の夢を最近見なくなった。

夢のせいで悲しくなることはなくなったけれど、

そわそわして、気が気でない。


人間、不思議なものだ。

苦痛だった夢、悪夢を今は見たいと願っている。



祥子も最近では週に1度くらいしか、訪ねてこない。

今みたいに、一人、居間でテレビを見ていると、

どうしても頭が七海の方へとスイッチしていく。


七海は元気だろうか?

寂しがってはいないだろうか?

次に会ったときも自分に優しく微笑んでくれるだろうか?



七海の金魚をぼうっと見る。

ちょっと元気がない。

塩水にでもいれれば元気になるだろうか……。



このままでは駄目だと分かっていても、ついつい陥ってしまう、魔のループ。

誰にでも経験のある悪循環を景子は断ち切れないでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ