7.元気なんだ。元気なんだ!元気なんだ?
「二人とも、何をそこでしゃべってるの?ご飯が冷めちゃうわよ」
二人をテーブルに急かすと、祥子と雅志は私の顔を見て、目を見合わせて笑った。雅志が、まるで駄々っ子を宥めるように優しい口調で、「今行くよ」と返事する。
久しぶりに三人がそろった、和やかな夕食。
景子は食器を棚にしまいながら、昨日のことをぼんやり思い出していた。
食器洗い機には3人分の食器。
私と雅志と祥子。大人だけの夕食。
食後にはコーヒーを飲みながら、雅志が買ってきてくれた高級チョコを食べて。
まるで、雑誌にでも出てきそうな、優雅さだった。
それでも、景子にとってはどこか空虚で。
食器を片付け終わった景子はテレビをつけて、ソファに座り込む。
自然とため息がこぼれる。
実は、景子はこのところ、不安だった。
もうすっかり調子は戻っている。
だから、祥子と雅志に心配をかけまいと、顔には出さないようにしている。
でも、毎晩見ていた、あの七海の夢を最近見なくなった。
夢のせいで悲しくなることはなくなったけれど、
そわそわして、気が気でない。
人間、不思議なものだ。
苦痛だった夢、悪夢を今は見たいと願っている。
祥子も最近では週に1度くらいしか、訪ねてこない。
今みたいに、一人、居間でテレビを見ていると、
どうしても頭が七海の方へとスイッチしていく。
七海は元気だろうか?
寂しがってはいないだろうか?
次に会ったときも自分に優しく微笑んでくれるだろうか?
七海の金魚をぼうっと見る。
ちょっと元気がない。
塩水にでもいれれば元気になるだろうか……。
このままでは駄目だと分かっていても、ついつい陥ってしまう、魔のループ。
誰にでも経験のある悪循環を景子は断ち切れないでいた。