表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

1.景子の夢 〜水の中で〜

気がつくと、真っ青な水の中にいた。冷たい水が気持ちいい。

上も下も右も左も、水でいっぱいだ。

水の中をゆっくりと流されながら、私はため息をつく。

水の中なのに、呼吸は苦しくない。

最初は水の中にいると分かって、パニックを起こしたっけ。



分かっていた。

これは、いつも見る夢。

私はこれから起こる事を知っていた。

この夢のせいで、朝起きると、とても辛い気持ちになるってことも。

もう夢なんか見たくない。そう思ったこともあった。


それでも夢を見ることはやめられない。

いつしか夢に抵抗することを私は諦めていた。


いったん、夢に身を任せてしまうと、

この夢の始まりの、水の中は清清しく、気持ちよかった。

自分が洗い立てのシーツみたいに、白く、柔らかく、生まれ変われるような気がした。



透明なブルーの中を私は、泳ぎ始めた。

ああ、あともう少しだ……急がないと。

景子の目の前には小さな黒い点が表れる。

それはみるみる、大きくなっていき、人の形をとる。

少女だ。

少女がこちらに向いて、泳いでくる。

私は急いで、その少女に触れようと、手を伸ばす。

呼吸には何の問題もないのに、手を伸ばすのには水の抵抗を感じる。

少女は、今にも私のすぐ横を、すり抜けて泳いでいってしまいそうだ。

一生懸命に手を伸ばして、少女の腕をつかんだ。

少女は振り返って、私の目をまっすぐに見つめ、問いかける。

「私と遊びたいの?」

私は、黙ってうなずく。

「名前は?」

「景子」

「じゃあ、景子ちゃん、一緒に遊ぼう」

少女が微笑む。私も少女に微笑み返す。

ここまでは良い夢だ、ここまでは。

たとえ、少女が私を覚えていなくても。

彼女が微笑んでいるのを見るだけで、私は嬉しい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ