第一話 王宮陥落
木曜に毎回更新して行こうと思ってます!
そのとき王宮内は、慌ただしかった。
それもそのはずだ。
王宮を攻め落とそうとする軍勢5万が波のように押し寄せてきたのである。
国軍が遠征に行っている今が期だと攻め入ったのであろう。
それに対し、迎え撃つこちらの勢力はたった5千。
たった十分の一だ。
勝敗などとうに決まっていた。
王宮内には砲弾の打ち上げられる音、倒れゆく兵士たちの断末魔と、硝煙のひどい臭い、金属の甲高い叫び声。
そして、足元に広がりゆく真っ赤な血の色。
私の眼の前で側近であったユル・ミストレアが敵の銃弾に撃ち倒れ、床一面に彼の血が広がってゆく。
「さぁ王女様、次はお前の番だぜ」
私の2倍はあろうかという大男が、自身の剣を舐めながらニヤリと笑う。
「お...逃げ...ください」
ユルは最後の力を振り絞り、床に体を引きずりながら大男の足を掴んだ。
「姫様が...生きていれば、王宮にまだ希望が...ゴフッ」
ユルの口から大量の血がこぼれる。
見ていられない。
「ユル!そんな男切り捨ててしまえ!!一緒に逃げるのだ!」
「なりません、たとえ私がどの様な状態にあっても、振り向かずお逃げください...!第13代目アリシア国が王女、ルルム・ストロギア・アリシア様が...!この王国の希望が...こんなところで死んではなりッ!」
言い終える前に敵の剣が、ユルの頭部を貫いた。
男を掴んでいた腕が、力なく床に叩き付けられる。
「あ?なんか話し中だったか?」
男は頭をボリボリと掻きながら、面倒くさそうに剣に付いたユルの血を払っている。
私は、心底憎かった。側近を切った男も、攻め入った軍勢も、力ない自分自身も。
走るしかなかった。逃げるしかなかった。
ユルの言葉を死を無駄にしないために。
涙をこらえ、唇を噛みしめ、ただただ走った。
王宮を出て、せめて国外へ。
捕虜でもいい。
とにかく遠くへ。
「見ぃつけた~」
背中に鋭い痛みが走った。
手足が動かない。
「おいおい、逃げんなよさっきの奴と話の途中だったんだろ?」
大男の地面を揺らすような足音が近づいてくる。
「だから、あの世で話の続きさせてやんよ」
剣は、私に狙いを定め、真上から真下に振り下ろされた。
あたり一面が、真っ赤に染まった。
何も見えない、真っ暗だ。
皆よ、すまない。
私が不甲斐ないばかりに、
散らせてしまったその命達に、償えるのであればもう一度
もう一度、やり直したい…
『おはよう』