夏色花火と
「人、多いね・・・・・・」
「・・・・・・暑い。」
「あ、あはは、ごめんね?」
人でごった返す花火大会の会場。
道行く人とは逆方向に私達は進んでいた。
「あ、・・・」
ドンッ
「あ、ごめんなさい、すいません」
どんどん駅から離れていく私達に、駅へと急ぐ人々はぶつかる。
その度に頭を下げて「すいません、すいません」と謝っているうちに、私と一緒に来ていた彼は遠くを歩いていた。
なぜこうなったかと言うと--
「花火大会?」
「そう! 行きたいな、って!」
まばらにクラスメイトたちがいる教室で、私は彼に興奮したように顔を近づけていた。
私達は、今月で付き合って2年が経つカップルである。
そして、明日から夏休み。
早い所、デートの約束をしたい。
花火大会は明後日だ。
目をキラキラさせていると最初は渋った顔をしていた彼も諦めたのか、「ん。」と言って了承してくれた。
そして、花火大会当日。特に何かあったわけでもなく、ただ花火を見て終わるこの日。
彼は終始不機嫌だし、楽しみだったはずなのに帰りたいと、思っていた。
「え、あれ? ない・・・」
気づいたのは、電車の駅に着いた直後だった。
「何が?」と聞く彼は、いつもより声が低く、イライラしていることが分かる。
出来れば、もうこれ以上機嫌を損ねるような事はしたくないのだが、私が無くしたものは私の命よりも大切な物だった。
「ご、ごめん、無くしものしたから探してくる」
震える声で彼にそう告げる。
(見つからなかったら、どうしよう)
そんな事で頭がいっぱいになってただただ涙が溢れた。
「・・・・・・泣くなよ。ほら、探すぞ」
彼はそう言って、私の腕を掴む。そして、人混みを2人で逆走するのだった。
「あわ、ごめんなさい、あ、ごめんなさい」
1人にぶつかるとまた1人、また1人とぶつかってしまう。
私は彼との距離を縮められないまま、ぶつかってしまった人に謝るしかできなかった。
(う、、最悪・・・・・・)
せっかく、彼のおかげで引っ込んだ涙もまた溢れ出す。
「もう、嫌だ」とつぶやいた瞬間、手を強く握られた。
「へ」と間抜けな声を出して、涙で歪んだ視界を凝らしながら前を見るとそこにははるか前を歩いていたはずの彼が私の手を引いて歩いていた。彼は私を人混みから守るように前を歩く。
「なんで、」とかすれた声で聞くと彼は「お前が泣いてるから」とつぶやいた。
この場で叫びたくなる程きゅんとする。
ようやく人混みを抜けると、彼は私を振り返り
「探しに行くよ」
とだけ言って、私達が来てから通った道を歩いて行く。
人混みを抜けたのだから、手を離しても良いはずなのに手は繋がれたままだった。
「・・・・・・ないよ・・・・・・」
花火を見た場所まで戻り、すっかり人が居なくなった駅まで戻ってきたが探し物が見つかることは無かった。
自然と手に力が入る。
その手を、彼はそっと包んで、
「あの花火の形をしたネックレス、大事にしてくれてありがとうな」
と私に笑いかけた。
私が無くしたネックレスは彼が告白してくれた時にくれた物だった。
花火が似合うからと言って、クールな彼が優しく苦笑いをしながら不器用ながらも私の為に買ってくれた大切な物だった。
それなのになくして、私は、
「う・・・・・・」
今日1日で何度も涙を流した。自分でも泣きすぎだと思うが、止まらない。
すると、彼が私の手を離してポケットを探り始める。
そして、私の手に赤いものを落とした。
「ネックレスは、もう無いけどその代わりにその指輪、付けとけば?」
顔を真っ赤にする彼。
空いた口が塞がらなくて、手の中にある感触だけがこれは現実だと物語っている。
「へ、え?」
「・・・・・・よく見て」
「あっ・・・・・・」
手の中の指輪を見ると、赤い模様で花火が描かれている。
「ありがとう、」
と鼻をすすりながらつぶやく私に、彼は優しく笑って
「夏の花火は、夏生まれの華美に良く似合うよ」
そう、呟いた
リア充め。そこをどけぇえ!!
皆さん、夏祭りとか花火大会行きます?ボクは行きません。
無性に、イラッ☆とするからです。( ˙-˙ )