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3つの場所で(再起動)

そろそろ物語も動き出しますよ!

ビオラが立ち去ったあと。


地面に血だまりを広げていた忠人に変化が起きていた。


初めは小さく。

僅かに何かが忠人から流れ出る。


そして少しづつ大きく。

流れ出る何かの量が増え、それにより小石が転がる。小枝が揺れる。砂が飛ぶ。


数秒後、放出は止まり今度は逆に吸収が始まった。周りに放った何かを忠人の身体が吸っていく。


その時、動くはずのない忠人の身体がゆっくりと動き出し、仰向けになった。


そして操り人形のよう右手が動き出した。動き出した右手は忠人の腹部、貫かれた傷にそっと置かれ、そして右手は青く光り始める。


右手の光が傷口へと移動していく。


まるで舐めるように、包むように光が移動していく。


全ての光が傷口へ移動したあと、不自然に動いていた右手がぽとり、と落ちた。


直後光が一際強く輝くと忠人の腹からだらだらと流れ出ていた血は止まっていた。傷口が、塞がったのだ。


本来ならありえない現象。しかしそれは現実に起きていた。


「……う」


寝起きのような声をあげ忠人は目を覚ます。


「……ッ!?」


真っ赤に染まった服、血がべっとりとついた右の掌。慌てて上着を捲り上げ腹を見る。しかし何度見ても腹の傷はなかった。


「……どういうことだ?」


鉄の香りの中で、忠人は考えを巡らせる。


(俺、死んだはずだよな。腹刺されて)


赤い記憶。貫かれた腹部の痛みは簡単に思い出すことができる。


「……裏切られた、か。いや……」


忠人は自分の腹をさすりながらあぐらをかく。


(落ち着いて考えてみればあの状況で信用も約束も裏切るもない、か)


自らの愚かしさに、判断力のなさにくつくつと笑う忠人。


「結局なにがどうなってるんだかわからないままだし」


うだうだしていても仕方ないと忠人は立ち上がる。


「どうすっかな」


ここからの命に関わる選択は失敗できない。既に色々間違ったような気もしているが、それは横に置く忠人。


(いや、まあ、明らかにここ日本じゃないよな。こんな巨大な建物があるのに電線の一本も見えないし)


いや、そもそも今時の地球じゃ鎧姿とかありえないしと続ける。


「…………て」


しかし忠人に選択権などない。事態はまだまだ動き出したばかり。異世界からの来客である彼にはまだまだ事態の大きさを把握することは叶わなかった。


「助けて!」

「うおぁ!?」


忠人の耳に響くのは誰かの叫び。あまりに唐突なそれに忠人はかなり驚いていた。


「助けて!助けて!」


振り返った忠人の目に壊れたレコードのように助けてと繰り返す緑色の小さな光の玉が入ってきた。


「助けて…………助けて…………助けて…………助けて……」


だんだんとか細くなる悲しげな声に忠人の心は揺れる。声が幼い子供のような声であることも忠人の心を揺らすのに一役買っていた。


「助けて…………助けて…………助け……て……」


その、助けを求める声は少しづつゆっくりになり途切れてゆく。


「……助……けて…………助……………け……て……」


図書館にいたはずが急に知らない土地へと送られ、追われ、刺され、あっさりと死線を彷徨うことになった忠人。


そんな訳のわからない状況。そんななか他人に気を割いている余裕はない。


「ま、でももう慎重さも何もないか」


訳のわからない状況だからこそ。

忠人は深く考えることを投げ捨てた。


「ああ、良いさ!助けてやるよ!もう何もかも知ったことか!」


憑き物でも落ちたかのようなスッキリした顔で忠人は光へと触れる。


「………………ありがとう」


忠人は手から離れふよふよと移動する光の玉を追いかけ歩き出した。






……忠人は気がついていなかった。緑色の光の球を見る彼の両の瞳が金色に輝いていたことに。



◆◇◆◇◆◇


そこは施設の地下。


日の光もほとんど差さず、空気すら淀む場所。


少女が1人、鎖につながれ眠っていた。傷んだ白い髪、傷の多い身体。腕、脚、みえるといたるところに傷がある。着ている服も粗末なのもので最低限隠れていれば構わない、という意図が見えるようなものだ。


よく見れば、周りにはその少女の同類とでも言うべきかつながれた者が多数いる。


すでに事切れている者、薄くだが呼吸している者、何事かぶつぶつとつぶやいている者。とにかくまともな様子ではない。


ーーだれか、たすけて


そんな思いは闇に消え、じわじわと絶望して正気を失う場所。


そこが帝国第四研究所の地下に存在する、生体魔力保管室と言う場所であった。


エルフの騎士であるビオラ・ウォーキンス、異世界から召喚された少年の夜梨忠人、両者とも知らないことだったがここでは捉えてきた亜人ーー人族の言うエルフなどの他種族のことだーーか大きな魔力を必要とする魔法の発動のために魔力を無理やり吸い上げていたのだ。


この世界の魔力というものは人々の精神、特に意志の力に密接した力だ。そのため、愛、友情、欲望、憎しみ、殺意、どんなものでも強力な意志であればあるほど大きな魔力に変化する。


そして全ての生物が持つ生存本能、つまるところ生きる意志というのが魔力の根本である。そんな魔力を無理やり抜き取れば精神へとダメージがいき心が摩耗していく。


生きる意志の搾取、その果てがこの地下室の惨状だった。


そんな中ただ一人命も、正気も失っていないものがいた。


それがその白い髪の少女である。毎日何か一人で喋っている少し気味の悪い面もあったが基本は何もできない幼い少女だった。


一人正気を失わない少女を処分しようかと言う意見もあったが少女の種族がエルフという珍しい種族で魔力の保有量が多かったためその意見は廃棄された。


しかしそんな少女も自由になりたくないわけがない。


そしてーー件の夜。


少女は大きく自分の魔力が減少するのを感じた。そして、何か懐かしい雰囲気をまとったものが境界を突き破り現れるのを彼女の友人に伝えられーーそこで意識が途絶えた。



















そして、目を覚ました彼女がいの一番につぶやいた言葉は当然の如く



ーー助けて、であり。


彼女の友人もそれに応えるため少ない力を全力でかけるのだった。


◆◇◆◇◆◇



「……ぐ……ぅ」


1人の男もまた目を覚ましていた。


彼は帝国第四研究所の研究員である。細かく言うなら帝国第四研究所所属魔力強制抽出研究課研究員なのだが。


そんなことはさておき。

魔力強制抽出術の研究をしていた彼はある日スポンサーからの依頼を受ける。


帝国第四研究所のスポンサー……つまるところ帝国の首脳部である。その依頼を断るなど言語道断。実質のところ命令であった。


その内容とは、異世界からの勇者召喚を行うための魔力を何処からか調達してこい、というものだった。


彼が行っていたのは下等な亜人族から魔力を奪うことのできる魔力強制抽出術の研究。ある程度のロスはあるものの実用可能なレベルであったため研究所トップからの白羽の矢が立ったのだ。


そして、帝国に心からの忠誠を誓っていた彼は一も二もなく承諾した。


突貫工事も良いところ。かつてない大掛かりな魔法の使用に耐えうる魔法陣を作るため高額な素材を。複雑な魔法回路を組み上げるために貴重な素材を。片端から集めては昼夜を問わず調整に調整を重ね、彼は完成させた。


“試作型連動式特殊魔力供給魔法”。


本来なら接続することができなかった二種類の魔法陣を連動させ。

本人の意思を無視して魔力を強制的に他の魔法陣に送りこむ。

ある意味史上最悪の魔法である。


これを使い行われた異世界召喚。


今まで最高の状況。伝聞から魔力量が多いほど現れる勇者は強力な力を得るとされている。


だが、献体30体分の魔力を一挙につぎ込んだその召喚はエルフの遊撃部隊によって妨害された。


より細かく言えばたった一人で部屋に突入してきた騎士により一撃で制圧され、彼は気絶したのだ。


魔法の余波で絶命した者も多かったのだから彼はある意味運が良かったのだが。


そして話は彼が目を覚ましたところに戻る。


「……」


彼はその惨状に慄然とした。

必死に組み上げた魔法陣は無残に破壊され。

クライアントは逃げ失せ。

同僚たちは絶命し。


ある意味彼はこの一連の騒動のトップクラスの被害者であった。


「……許さん」


そして当然その怒り、憎しみ、悲しみは魔法を妨害したエルフへと向く。


「許さんぞ!尖り耳風情があっ!」


その感情、そして残された魔力を全てつぎ込み、彼は魔法を組み上げる。


全てはあのエルフへの復讐のために……

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