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ずいずい(ryと鍛錬

頑張ってお正月3日で書いた!褒めて!

「どうした?寝不足か?」

「……ちょっと試行錯誤を繰り返していたら寝るのが遅くなりまして……」


翌日。


ビオラたちのあとを歩く忠人は片目を擦っていた。


自らの“輝眼”の可能性に気がついた彼はその夜遅くまで一人、魔法の実験をしていたのだ。


「……いや、少し面白い魔法の使い方を思いついたんですが……まだ、要練習ですね……」


そこまで言うと忠人は大きく口を開けてあくびを漏らした。


「……今日の行程には触らないんだな?」

「……ああー多分平気ですー」


間延びした調子で忠人は答えた。エルフ三人からすれば全く平気に思われないのだが。


「……無理は、するなよ」

「あー、はい」


ビオラは思った。つい数日前に殺し合いをやった相手を前にして睡眠不足だからと言ってここまで眠くなるものだろうか、と。


大胆不敵、とは少し違う。自然体といえばいいのか。言うなればいつも通りの夜梨忠人(・・・・・・・・・)であった。もちろんエルフ三人は平時の忠人のことなど知らないのだが、とにかく彼らには、特にビオラにはそう感じられた。


「おにいちゃん今日はごきげんだね?」

「……そうかな?」

「うん!ユリの友だちもいっぱいくっつけてるし!」


忠人が“輝眼”で自身の身体を見ると身体の各所に光る玉がくっついていた。


「……やっぱり友だちってこの玉か………」


ビオラに背中から刺され奇跡的に目を覚ましたときにいた光の玉と同種のそれ。


「……精霊……かぁ」


何か思っていたのと違う。

精霊ってオオサンショウウオだったり小人だったり女性だったり羽生えた妖精だったりするじゃないのか。


「はっくし!」


そんな忠人の考えは自らのくしゃみによって中断された。


「うう……」

「無理をするからだ」

「体調管理が出来ない奴は、死ぬぞ」

「……はい…」


鼻を擦る忠人に厳しい言葉が飛ぶ。

しかし抑えようとする本人の意思とは裏腹に身体鼻をくしゃみを連発した。


「……すいません」


ゴシゴシと擦りすぎたために鼻を赤くした忠人にビオラたちは呆れたように笑った。


「ああ、そうだ少年。これを」

「木の棒……メイス?ロッド?槍?」


差し出されたのは研究所で忠人が降りまわしていたモップと同じくらいの長さの木の棒。


「お前が振り回していた掃除用具と同じ長さの木の棒だ。いざという時はこれを使え」

「……ありがとうございます?」


普通の武器ではないものを貰いなんと言えばいいのかわからない。剣や槍に憧れる心がないわけではないが、この木の棒はよく見てもらっていたと言う証しでもあり……


「木刀?木剣?木槍?杖……でいいか」


軽く振ると忠人は杖を肩へと担ぐ。


「……うん、まあ、いつも通り。使えます。ありがとうございます」


その様子は少し嬉しそうであり。

子供っぽい顔の忠人に仕方ないなとアスターは笑った。


「ところで、少年。お前は何をしてたんだ?」

「えと、学生ですけど」

「……それは聴いた。ただその身のこなしに、成長速度。一般人だとは思えないのだが」

「……あれじゃないですか?勇者補正」

「そんなものは聴いたことがないが……」

「……つか、俺もおかしいとは思ってるんですよ。こっちに来てから身体が思った通りに動きすぎるんです。例えるなら……大きなアップデートがかかったネトゲ見たいな」


日本にいた時よりも想像通りに身体が動くと忠人は訴える。


「……いや、ねとげが何かは知らないが言いたいことはわかった」

「ねとげ……?なぁにそれ?」

「……俺のいた世界のゲーム……じゃなくて遊戯だ。自分の分身に冒険させたりする遊戯」

「ゆーぎ?」

「……ああ、そこから、ね。遊びだよ、遊び」

「……それっておもしろい?」

「いい大人が熱中する程度にはおもしろいな」

「おもしろいの⁉︎ユリもやりたい!」

「それは、ちょっと難しいかなー……」


電波も飛んでないこの世界でネットゲームはおろか電子ゲームはファミコンですらプレイできないだろう。


「ずいずいずっころばしで勘弁してくれ」

「それ、おもしろいの?」

「まあ、面白いと思う。少なくとも俺が8つの自分にはずっとやってたから……」


ここでユリにずいずいずっころばしを教えたために忠人は1日歩きながらずいずいずっころばしをひたすらやり続けることになった。


「ずーいずーいずっころばーしごーまみそずい……」

「……ビオラさん……代わって……」

「すまん、無理だ。ルールがわからん」

「団長、顔。笑ってます」




◆◇◆◇◆◇




日は暮れて。


「ずーいずーいずっころばーし、ごーまみーそずい!まーつごーにおーわれーてとっぴんしゃん、ぬけたーらどんどこしょー!」

「かーわらのねーずみーがこーめくってちゅー、ちゅーちゅーちゅー……」

「団長、少年の目から光が消えてるんですが」


パンとスープだけの夕食を摂り、いつもなら忠人がアスターとビオラに鍛錬を受けている時分。


「おにーちゃん、もう一回!」

「……勘弁してくれ……!」


何処か魂の抜けたような状態になっている忠人を見ぬふりをしてアスターは土をならす。ユリには小石が背に刺さるのは辛いのだ。

もちろん、忠人にはそんなことはしてもらえない。自分でやれ、である。


「忠人ー、鍛錬するぞー」

「ちょ、ビオラさん⁉︎引き摺らないで!足が!足が!歩けますから!自分の足で歩けますからっ!」


3日も一緒にいて扱いに慣れたのか騎士二人組の忠人の扱いは大分気安い(・・・)ものになっていた。



……単に雑になっただけとも言うが。


「さ、やるぞ」


ぽい、と忠人を放り投げるとビオラはことも無げにそう言った。


(最近……ビオラさんからの扱いが……あれ?アスターさんからの扱いも……ええ?)


「惚けてると死ぬぞ?」


空気が唸る。

条件反射的に忠人が飛び退くと地面を木剣が叩いた。


「せめて構えくらいは取らせて欲しいんですけど」

「起きなかったお前が悪い」

「ほぼノータイムでしたけどね!?」


色々言いながらも杖を構える。もちろん杖術など習ったことはないため我流もいいところの適当な構えだが。


「ていうかアスターさんは?」

「今日は私と一対一だ。魔法も使うからな。死なないように頑張れ」

「えぇ…!?」

「行くぞ」


待ってください、という言葉を追い抜いてビオラの剣が忠人を襲う。


「うおあああああ!?」


なんとか杖で受けたもののあっさりと弾き飛ばされる。


「次、いくぞ?」

「なんか何時もより速くないですか!?」

「“フィジカルブースト”してるからな」

「本気すぎる!」


忠人の喚きなど知ったことかとビオラは再び突撃した。


「あーッもうッ!“輝眼”!」


どの魔法よりも、一番初めに覚えた“快癒の御手”よりも自分に馴染むそれを起動する。


忠人の両眼が差し込む陽光のような金へと変わる。動体視力が向上し加速されたビオラの姿を正確に捉えた。


木剣と杖が衝突し木屑が舞う。

防ぐ。必死で忠人は剣を防ぐのだが。


「クッ!ソッ!」


防げるのは多く見積もっても半分。それも防ぎきれているとは言えない。


見えてはいる。身体も思うように動く。だが、圧倒的に速度が足りない。間に合わないのだ。


「ぁッ!?」


腹部を抉る衝撃。

ひたすらに後手に回り続けた結果、あっという間に限界が訪れたのだ。


(二発は、貰わない!)


忠人は右の手から左手に“ハンドトリック”で杖を移すと空いた右手でビオラに掌底突きを放つ。


届かない。


それは無様なほどに空を切る。ただほんの僅かな空気を揺らすだけの結果に終わったその掌は。





「“スキンエクスプロード”」





爆ぜた。

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