過去の勇者とペナルティー。
お久しぶりでございます。
ようやく少しずつ執筆できそうです。
薪を探すこと既に40分。
あと少しで目標に到達する、というところだ。
「しかし、最後ってなるとなかなかないですね」
「この辺りのものは取り尽くしてしまったのかもな」
実際には今の量になるでには15分ほどしかかかっておらず。残りの25分は最後の二、三本を探して歩き回っていた。
「しかし、ないな」
「文字通り目を光らせて探してるんですけどね」
忠人は40分間“輝眼”を使用したままだった。
夜の森を目から光線を出しながら彷徨く少年。
怪しいことこの上ない。
「そろそろ、限界です……」
「魔力切れか」
忠人は両手で顔を抑えると“輝眼”を解除する。
「……目がいたい、です」
目をぎゅっと瞑る。
今までとは違い魔力に関わる情報も全て写す“輝眼”により疲弊していた。
「“フライング・トーチ”」
そんな忠人を横目にアスターは明かりとりのための魔法を使う。
三つの優しい炎が忠人とアスターを取り囲んだ。
「……便利ですねー、魔法」
浮かぶ炎に興味深々といった様子で忠人は炎をつつく。明かりとしてのみ存在するそれは触れても火傷することはない。
「お前は魔法のない世界から来たのだったか」
「あ、はい。俺のいた世界には魔法はなかったですね」
「ふむ、では2代目と5代目勇者と同じ世界かもしれんな」
「……やっぱ俺以外にも勇者っているんですか?」
「先代……6代目が500年ほど前だな。もっといた可能性もあるが記録に残っているのは6人だな」
「ってことは、俺は7代目勇者夜梨忠人……ってことですかね?」
「まあ、そうなるな」
(6代目で500年ほど前であれば2代目や5代目はさらに昔だろうな。会うこともなければ記録が詳細に残ってる可能性も低い、か)
冷たい風が吹き抜けた。
忠人はぶるっと身震いをするとアスターに尋ねた。
「……2代目や5代目って元の世界には帰ったんですかね?」
忠人は喉が乾くのを感じた。この質問は、何にも置き換えることのできない非常に重要で大切な質問だ。
アスターは忠人の目を見て、良い加減な答えが許されないことを理解した。
下手をすれば殺すぞ、と言わんばかりのその目は猛禽のように鋭かった。
もちろん忠人にそんな気はなく、飛びかかっても勝ち目はないのだが。
「二人とも元の世界へと帰ったと伝えられている。2代目に至ってはこちらからエルフを一人、連れて帰ったとか」
「……」
忠人の目が、点になった。
「……連れて帰った?」
「恋仲になったエルフを一人、元の世界へ連れて帰ったそうだ」
「……ええ……」
俺なんか大した能力もなくこんな苦労してるのに……と忠人は愕然とする。
「というか勇者といったら最強のユニットだろ!?物理、魔法どちらにも優れ回復魔法も使えるユニットじゃないのかよ!いや、回復魔法使えるけどこんな非戦闘時じゃないと使いにくいやつじゃなくてさっ!」
夜の森に忠人の叫びが響き渡る。確かに剣とは呼べない木の棒も端た金も渡されていないあたり国民的RPGよりスタートラインは悪いだろう。
……というか忠人のジョブは戦士どころか奴隷である。比べるまでもなかった。
「魔物を呼ぶから大声を出すな」
「すみません」
「……不運なのは認めるがな」
「ありがとうございます」
「では、薪を探そうか」
そう言ってアスターが足を進める。
それを追いかけ忠人が歩んだ3歩目。
「ーーーッ!アアアアアアアアア!?」
忠人の身体が雷に打たれように痙攣し地面にどさり、と落ちる。
「おい!どうした!」
「ーーーッ!ーーーッ!」
声にならない叫びを上げ、胸をかきむしり、地面を転げまわる。
忠人はまるで全身を針に貫かれるような痛みを全身で表現していた。
「スレイヴリングか!」
忠人が仰向けになり腕を振り回したときその手にはまった黒い腕輪に赤い線が走っているのが見えた。
命令違反による罰則。
異世界人である忠人が忘れていたそれによる激痛が彼を襲っていた。
ここに奴隷商人や帝国の暗部を知る人間がいればよかったのだろうか。
『絶対何処にもいっちゃダメ』というあやふやな命令に対してスレイヴリングは一定距離、ご主人様から奴隷が離れることを罰則対象とした。
そのことに誰も気がつかなかったが故に忠人は激痛に苛まれることになったのだ。
エルフという見目麗しさから奴隷として狙われがちな種族のため、知識こそあったアスターとビオラも命令の意味を正しく理解できていなかった。
「これは……マズイな」
痛みに悶える忠人のその原因を察知したアスターは素早く忠人を抱え上げた。
忠人の罰則はマスターたるユリから離れ過ぎたことによるものだ。つまり距離を縮めれば罰則は無効化されるはず。
そう判断したアスターは忠人を抱えて走り出した。
腕の中でのたうちまわろうとする忠人を無理やり片手で押さえつけ、駆ける。もう片方の手には薪が少量。
川の方へ走れば走るほど忠人の呻き声が小さくなっていく。これでやはり正解か、とアスターが思ったときだった。
びーっびーっびーっびーっ。
忠人のスレイヴリングからふざけたようなしかし危険を感じさせる音が鳴り始めた。
「川はもう少しだというのにっ……」
アスターは悪態を吐くと。
「仕方あるまい。許せ、少年」
そう言って忠人を川の方へ放り投げた。




