勇者(輝く瞳)
まるで生気が抜けたように崩れ落ちるノーライフリベンジャー。
その場からゆっくりと後退りして忠人はようやく安堵する。
「ふう、なんとかなったなアスター」
「はい団長」
エルフの二人もそれなりに安心しているようだ。
「で、人間」
「はい」
「その眼はどうした?」
「眼?」
なんのことです?とまさにハテナマークを浮かべる忠人にビオラは剣を突きつける。
「ひぃっ!?」
「見ろ」
「え?」
「剣を鏡代わりに自分の眼を見てみろ」
言われた通り恐る恐る剣を覗き込む忠人。
「うお!?」
そこに映っていたのは17年付き合った自らの顔。しかし何時もと違う箇所が一点。指摘された通りその瞳の色はいつもの茶の混じった黒ではなく金色で。
他の魔法と同じよう自らの眼にも幾何学模様が展開されていた。
「こ、これは!?」
そう思わず漏らした途端“快癒の御手”のときと同じように情報が忠人の脳に流れ込む。
(“輝眼”。所属領域六。魔眼系統魔法。使用者の動体視力を上昇させ発動以前の魔法を認識することができるようになる。認識するものが増えれば増えるほど魔力を消費するようになる。使用中は瞳の色が金色に変化する。魔力を注げば注ぐほどより詳細に魔法を認識できる。特に使用制限はないがこれ以外の魔眼を習得できなくなる)
大量に情報を押し込まれ頭痛に襲われる忠人。二回目なので呟いたり悶絶したりせず頭を抑えるに留める。
「なんで、こんな目に……」
「おい、大丈夫か?」
揺さぶられて余計に頭痛が増す。
「まあ、なんとか大丈夫です」
「どう見てもそうは見えないが」
力なく立ち上がる忠人を見てアスターがそう言う。
「いえ、多分これをこうすれば……」
瞼を閉じその上を忠人が指で撫でる。忠人自身は感じられていないがそれで忠人の眼に集中していた魔力が霧散した。
「ふう、疲れ目ですかね」
再び開けた忠人の瞳は元の黒へと戻っていた。酷使したせいか目を開いたり閉じたりする忠人。
「その感じからして『接続』したのか?」
「『接続』?」
なんだそれは、と表情をする忠人。接続と言う単語の意味はではなくそれ以外の意味が含まれている。忠人はそう思った。
「お前、『接続』を知らないのか?」
「はい、知りませんけど」
嘘だろおいとアスターが呟く。その表情は明らかにあり得ないと言っている。
「……人間、いや少年。お前は異世界人なのか?」
「異世界人?」
またわからない単語が出てきたと忠人は思った。
「うーん、なんというかな、そう異世界人というのは基本的に勇者と同義と思ってくれて構わない」
「……勇者?」
勇者と言えば基本的にRPGの主役を演じる者の役職だよなぁ、なんか物凄い力を持っていることの多いヤツ。
忠人はそんなことを考えて、
「へ?」
そんな声を漏らした。
「……ふむ、やはり『異世界人』か。それならば理解できないはずだ」
「ですね。こちらの世界の理を違う世界の者が理解できるわけはないと思います」
「しかし彼が勇者となると私たちの召喚妨害は失敗に終わったようだな」
「いえこの人間からは“異界の魔力”を感じません。おそらく中途半端な魔法陣で召喚されたものかと」
「それで魔力量も身体能力も歴代の勇者と比べると見劣りするわけか」
伝承では勇者の魔力はその量から実体を持つほどとまで言われているからな、とビオラは続ける。
「駄目です。全っ然話について行けません」
「しかし、どうするか。お前はどうしたい?」
「いえ、そもそも状況がさっぱり掴めないんですけど」
どうしたもんですかねぇ、と忠人が立ち上がる。ズボンはいたる所に穴が開き、上着は血に染まっている。普通の高校生には荷が重い一連の流れがようやく終りを迎える、というそのときだった。
「不味い!」
「ウルルルルルラァッ!“ネガティヴプレッシャー”!」
アスターの叫びを聞いて咄嗟に少女に覆い被さる忠人。アスター本人はビオラを突き飛ばし両手を大きく広げ自らの身体で壁となる。
忠人がそのアスターの姿を見た瞬間忠人たちを負の波動が襲う。
一気に心臓が止まるような衝撃が襲い忠人はそのまま意識を失った。
「……ん」
「気付いたか」
次に忠人が目を覚ましたのは森の中だった。適度に伐採されているのか隙間から陽光が差し込み、可憐な花が咲いている。
「ええと、ここは?」
「エルフの里から一週間の位置にある転移陣の丘だ」
「どこらへんが丘なんでしょうか?」
木が生い茂り、切り株に良い感じに腰掛けられ啄木鳥(たぶん)が木を突いているあたり丘とは言えないですよ、と忠人は続ける。
「一昔前は丘だったのだが、今は森になってしまってな、まあ慣例だ慣例」
「急にビオラさんの語り口が雑に!?」
「あ」
ぽりぽりと、頬を書くビオラはどうやら気が抜けたようだともごもご呟く。
これは気を利かせて話を戻さねばと忠人は質問を開始する。
「“ネガティヴプレッシャー”のあと俺たちどうなったんですか?」
「ああ、私はアスターが身を挺して守ってくれたお陰で無傷だった」
どうやらアスターは防御魔法と自らの身体を壁にして三人を守ろうとしたらしい。
「しかしお前は微妙に範囲から外れていてな。気絶してしまったのだ。……ああアスターなら心配するな生命に別状はない。そこでゆっくり眠っているよ」
「そうですか……アスターさんには感謝してもしきれませんね」
「そんなこともない。そもそもお前が治癒の魔法を使えなければアスターは動くこともままならなかったのだから……しかし邪魔だな」
「何が、デスカネ?」
まさか俺のことか?と僅かに後ろに下がる忠人。本当はもっと逃げたかったのだが予想以上にダメージを受けているのな身体が動かなかった。
あと、1話か2話で第一章は終わりですけどこれが書くのに時間がかかりそうなんですね。
あれです。あしからず。




