無意識の共闘?(魔眼の真価)
第一部もそろそろクライマックスです。
(ビオラさんたちには見えてないみたいだけど。あの黒い光の発射位置と方向が見えるんだよね)
そんなことを思い走る忠人。
光線の通るコースがわかる以上その発射口である歪みを見逃さなければそれほど怖くない。
(しかも、ビオラさんのご厚意でかけて頂いた“フィジカルブースト”のおかげで避けるの余裕!)
軽くなった身体はきちんと忠人の要望に応える。
「いけるッ」
あらゆる方向から襲い来る光線を全て回避して忠人はノーライフリベンジャーの元へたどり着く。
「よっとォッ!」
横に一閃。遠心力で剣が飛んでいきそうになるのを堪える。バットのスイングのような一撃だった。
ガイン、と音がして剣が弾かれる。
「ならあッ!」
片手を放し、剣を振り子の代わりにして左脚を振り上げリベンジャーを蹴る。リベンジャーがよろめいた瞬間剣を構え直して思い切り振る。
(掠っただけか!)
持ち直したために連続攻撃とは成らず相手に躱す余裕を与えてしまった。
(しかし変だな。さっきは腹で弾かれたのに今度は入った。魔法かなんかで防御しようとしたとこだけ硬いのかも)
よく見ればノーライフリベンジャーの全身に細かい傷が残っている。
(ビオラさんの剣も届いてないわけじゃないのか。対エルフと対人間っていう集中力の差かな)
そんなことを思いながら後ろへ飛び退る忠人。攻め過ぎてやられては元も子もない。
そして忠人の推測は正解である。
ノーライフリベンジャー。死人がアンデッドモンスターへと姿を変えたときにその死人が大きな復讐心を抱えていたときに出現するモンスターだ。
復讐心だけしか残っていないためにそれ以外のものに対してはただ攻撃性しか示さない。対象とされると厄介極まりないモンスターだが復讐心のあまりアンデッドの弱点である太陽の下へ出て自滅することも多い。
それゆえ|生命と理性失いし復讐人形と呼ばれる。
「これでもかァッ!」
復讐人形は復讐対象以外への戦闘力が低い。しかし、もし復讐の邪魔ばかりされたら普通人間はどうなるだろうか。
「ウルルルルルラァッ!ジャマダジャマダジャマダジャマダァッ!シネェッ!」
怒り心頭。
そう言った様子で光線を撃ちまくるリベンジャー。しかし忠人には効果がない。
「全部!見えてんだよねぇっ!」
召喚により強化された身体能力は時が経つにつれ身体に馴染みさらに上昇する。さらに“フィジカルブースト”で上昇した身体能力を強化しているのだ。
そんな強化された身体能力だ。見えている以上忠人には当たることはない。
掠めることもない自らの攻撃に業を煮やしたリベンジャーは数を増やす。
「ちょ、その数はヤバいって!」
「ウルルルルルゥッ!クラエクラエクラエ!クラエェッ!」
しかしその大量の光線が現れることはない。なぜならここには他にもリベンジャーの敵がいるのだから。
「“アサルトファイア”!」
アスターの炎がノーライフリベンジャーを焼く。忠人が目をやるとニヤリと笑うアスターの姿が。
“プロテクションウォール”は解除して炎によりリベンジャーを吹き飛ばす。
「あまり魔力がない。人間どうしようもなくなったときだけ手を貸してやる」
「アスター、私の魔法もそろそろだ。死人ごときに遠慮する必要はないぞ」
(俺は今、物凄いツンデレを見た気がする)
戦慄を覚える忠人。動きを止めれば命が危ないため動き続けてはいるもののなにやら背筋にぞわぞわとしたものを感じた。
「シネェッ!シネェッ!シネェッ!シネエエエエエエェッ!」
「ッとぉッ!」
黒い光線を増やすノーライフリベンジャー。剣を投げつけて光線を躱す忠人。光線が自ら避けるようにすら見える。
「フウーッ!フウーッ!ルラララアアアアアアッ!」
さらに光線が増える。
「やべ、詰んだ」
忠人の視界が全て歪みで埋まる。
どこを見ても安全地帯がない。ノーライフリベンジャーも肌の色が黒から青白に戻っているあたり本当に全力で放った結果のようだ。
(何か、何か手はないか!?俺の切れる手札はーー強化された身体、歪みが見える眼、ナイフ、調味料、腕時計、靴、ハンカチ、“快癒の御手”か、なら!)
「ビオラさん!“フィジカルブースト”切って!」
「何!?」
「いいから速くッ!」
吠える忠人に気圧されてビオラが“フィジカルブースト”を解除する。
忠人の身体に滾っていた何かが抜けていく。
「“快癒のーー」
閃光。
黒い光が無数に忠人へ向かう。
「ーー御手”ッ!」
光が忠人に襲いかかり全身に無数の穴が開く。
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いィッッ!)
心臓と頭、即死しかねない場所だけ防御して忠人は光に打たれる。
全身が熱をもち身体が焼ける。そして“快癒の御手”が忠人身体を治していく。
しかし“快癒の御手”の回復速度では光が忠人を穿つ速度に追いつかず治りかけの傷が身体全体に増えていく。
(だ、けど……1秒稼げば!)
「“プロテクションウォール”!」
障壁が忠人を包む。閃光と障壁がぶつかる音がけたたましく鳴る。
地面を転がり障壁の反対側にぶつかって止まる。
「ッーーァッーー!」
“快癒の御手”は触れた近辺にしか効果が無い。そのため忠人の脚は穴だらけになっていた。致命傷になる攻撃だけ食らったあとすぐに治すという防御とは呼べない方法。アスターが“プロテクションウォール”を展開してくれなければそのまま死ぬ。
そんな賭けに勝った忠人はそのことを喜ぶこともせず“快癒の御手”で脚の穴を埋めていく。
多くても3から4の傷しか一度に癒せない“快癒の御手”。小さく深い傷相手では非常に使い勝手が悪かった。
どんどん体内から力が抜けていく。
倦怠感、吐き気、そんなものが忠人をおそう。
「でも、治った!やれる!」
運良くその場に落ちていたモップを引っ掴みノーライフリベンジャーへと駆け出す。
ビオラへと突撃するノーライフリベンジャーの前へと飛び出る。
「あと少しだ、耐えろよ人間!」
「了解です!」
リベンジャーの振るう右手をモップの柄の中央で受ける。
木製のモップが耐え切れるわけもなくバキリ、と音を立ててへし折れる。
「まだまだぁ!」
前のめりになりながら日本になったモップを叩きつける。
全く効果がなく即座に殴り返される。
その場に崩れ落ちる忠人。
「ラァアアアアアアッ!」
無理やり体勢を立て直し腰のベルトに挟んでおいたナイフをリベンジャーの腿に突き刺す。
「“フレイムスピア”!」
炎でできた槍がノーライフリベンジャーに突き刺さる。
爆発で吹き飛ばされる忠人。
(また、歪みが……何だよあれ?)
吹き飛びながらノーライフリベンジャーの腕に歪みが出来ているのを見る。
もっと俺によく見せろと、目を細める忠人。すると歪みが次第にはっきりとした形を取り始める。
(何だあの幾何学模様?)
ふと視線の端にうつったアスターの手にもそれはあり、また少女を覆っている“プロテクションウォール”にもそれは存在していた。
(もしかしてあれが魔法の発生源かなんかか?)
それだけのことを推測して忠人は床に背中をぶつける。鈍い痛みが走った。
「“ダークーー」
「やらせねえよっ!」
声が聞こえるやいなや立ち上がる忠人。
飛びかかりノーライフリベンジャーの腕を無理やり押し込める。
「ーーストライク”ッッッ!?」
発射方向を変えられた黒い波動がノーライフリベンジャーの肩を削る。
痛みに悶えるリベンジャー。そしてこれだけの時間稼げればーー
「十分!“エアスピア”!」
大気の槍がノーライフリベンジャーの腹に文字通り風穴を開ける。
「これで、終わりだ!」
忠人「なんで俺が避けられたかって?御都合主義だからさ」
作者「そう言うこと言うのやめなさい」




