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君のトナリ  作者: 0407
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7頁目  初恋と先輩

「そうだ蒼!昨日はよくも勝手に話を進めてくれたわね!」




急に思い立ったように、蒼に指差して言った。




「ああ、部活?」




「そうよ!私、まだ入る気ないんだからっ」




そう言って蒼を置いて走って先に行ってしまった。




「……鈍感だね。昔から」




蒼は1人呟いた。いつもの意地悪そうな顔で。









「はぁ…はあ~」




蒼が見えない所まで一気に走ってきた。




これでも全力だったので、息があがっている。




「入る気がないと言っても、あんな嬉しそうな麻倉先輩を断れないしなぁ…」




「え…?」




「えっ!?」




聞き覚えのある声に振り向いてみると、麻倉先輩がいた。




「麻倉、先輩っ?!」




「おはよう~。ハハ、聞いちゃった。そっかぁ、桜莉ちゃんは弓道部に本当は入りたくないのね~」




嫌な汗がダラダラと流れる。




「ああっあのっ…」




必死に訂正しようとした。




「ううん。いいのよ。強制するものじゃないし。まだ仮入部期間だから、色々見て決めてね~」




そう言って麻倉先輩は手を振って先に行ってしまった。




「…どうしよ…」




流石に涙目になる。




入学したばかりなのに…いきなりこんな…




フラフラと人影の少ない道に入った。




学校に行くにはいくつかの道がある。学校付近に住んでる人は家から近い道を歩いて登校している。




桜莉はいつも通学している道を外れて別の道に入ってしまったのだ。




近くにあった木に隠れて膝を抱える。




「どうして、こんなっ…」






私の独り言を聞いてしまった麻倉先輩は残念そうな顔をしてたし…昨日なんて、朝から失敗してばかりだし…



あの、顔の整った子…私のせいで不機嫌そうな顔をしていたし…しかも、その子と同じクラスだし…






「もぉ…この先不安すぎる…」




涙が頬を伝う。




「どうしたの?」




男の人の声が聞こえた。




とても優しい声で、包み込まれるような…




「え…?」




その声の主は、私にとっての初恋の人になる先輩だった。







一目惚れをしてしまったんだ…!







「女の子に涙は似合わないよ」




ハンカチを差し出してくれた。




端正な顔つき、倉敷先輩くらいある身長




「あっ、ありがとうございます」




「泣いてる女の子はほっとけないよ。どうしたの?」




にこりと笑う。




その笑顔に安心して更に泣き出してしまった。




「あっのっ……で、すね……っ…ふ…」




「うん、ゆっくりで良いよ。」




その人が隣に座り、頭を撫でてくれた。




「どう………っ……して…良いのか…………分かっ………ない………」




「うん」




「なんっ………で…………私ばっか…り……」




後から後から涙が溢れてくる。






自分が情けなくて…


さみしくて……


かなしくて……


でも、やっぱり、自分の事が好きになれなくて……


何をして良いのか分からなくて…






初めてあったその人に昨日あったことを、今日の朝あったことをすべて話した。




一応、個人名や部活名は伏せておいた。




何かあったら困るから・・・。





「なんだ、そんなこと?」




「!?……わたっ…わたしにとっては」




「うん、分かってる。君にとっては凄い大きな問題なことは。それでも、『そんなこと』だよ。」




いってる意味がわからなかった。




「でも、それは『いまの君にとって』でしょ?これから、全部挽回していけば良いんだよ。」




「そっかぁ」




目からウロコだった。




「ほら、笑って?」




ふわりと笑うその人を見てつられて笑った。




「可愛いよ、笑ってた方が。さぁ、行こうか?制服を見る限り白木高校の生徒だよね?もう、遅刻だけど。」




もう、会えないかもしれない。




格好いいし彼女もいるかもしれない。




そう考えていたのに自然と口から出ていた。




「あのっ、名前教えてください!!」




「白木高校3年B組齋藤和巳だよ。君は?」




「天宮桜莉です!」




「おうりちゃん?1年生?」




「はい!」




「じゃぁ、自己紹介もすんだことだし、学校行こうか。」




齋藤先輩が立ち上がり付いている砂を落とす。




私も同じ様にして砂を落とし一緒に歩き出した。








「はぁっはぁはぁ……」




齋藤先輩、足早い。




でも、息上がってないってことはもっと早く走れたってことだよね?




「もしかして、桜莉ちゃん。運動苦手?だったらごめんね?走らせちゃって」




「いえ、あのっ…だい…じょうぶですか…ら。」




本当は大丈夫じゃないけど…




だって、遅れたら私のせいだし…




もう、授業始まってるから




遅刻だけど……




歩いてる先輩に対して走ろうと提案したのは桜莉だった。




走ってみたものの…




学校まで持たなかった。




「齋藤先輩?先行って良いですよ?あと少しで学校なんですし」




「いいよ、別に。桜莉ちゃんのペースに合わせるから。」




そんな言葉にドキンと胸を高鳴らせる。




「じゃぁ、行きましょう!もう、走れます!」




「OK。じゃぁ、ラストスパートって言うことで、」




学校まで走った。




「ふっ…はぁはぁはぁはぁ。」




膝に手を置いて息を整える。




「お疲れ様。」




桜莉が息が整ったのを確認してから昇降口に向かっていく。




「一人で教室行ける?」




「はっはい。」




桜莉は右へ和巳は左へと行った。




階段を登っていった。







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