1頁目 春の話
「ほら桜莉、クラス分けだよ。」
後ろで文句をブツブツと言っている桜莉を呼んだ。
「蒼とだけは同じクラスになりたくないわね」
と言いながら駆け足で蒼の側に寄った。
「あ~!私A組だっ…蒼は~と…」
言いながら下に目をやっていくと蒼が肩に手を置いて、「残念だったね」という顔をした。
嫌な予感がしながら恐る恐る下を見ていくと、A組の中にきっちり『冥王寺 蒼』の名前が書いてあった。
肩を腰までガクリと落とした。
(何でこう蒼とは同じクラスになるんだろう…)
何て考えていると後ろから声がした。
「ちょっと、いつまでそこに突っ立っているの?見えないじゃない。」
振り向くと、顔の整った子が立っていた。
「あっ、ごめんなさい!」
とその場をどいた。
(あちゃー…もう入学初日から何やってるのよ…!)
また落ち込んでいると後ろから腕を引かれた。
「!?」
「…そこも邪魔になってるよ?」
腕を引いた人物は蒼だった。
「はっ?」
腕を引かれる意味が分からないという顔を、嫌そうな顔で表すと、呆れたように蒼は溜め息をついた。
「そこ、新入生の入り口だから。」
「…あ~…」
納得しました。
そしてまた肩を落とすのだった。
(そりゃあ、入り口の真ん中にいたら通行の邪魔になるよな…)
厄日だ…と小さい声で呟いた。
「ほら、教室行くよ?」
そのまま掴まれた腕を蒼に引かれていく。
「あっ…ちょっ…分かったから、離してよっ。歩きずらいから」
新入生入り口から入り自分の下駄箱を探す。
「えーと、あっあった。」
下にあったためしゃがんでそこに靴を入れ、上履きを履く。
立ち上がるともう既に蒼は上履きを履いて待っていた。
「何でそう行動が早いのよっ!!あんたは」
「そうかな?桜莉が遅いんじゃない?」
ニコリと笑う顔に何にも言えなくなり、俯いてると蒼が手を握ってきた。
「なによ」
「そこ邪魔だよ?また、怒られたいの?」
「言われなくても分かってる!」
「じゃぁ、行こうか?」
蒼が歩き出した。
それに合わせて桜莉が歩く。
(今日最下位って合ってたのかも…あーあ、せめて教室では失敗しないようにしなきゃ)
「~莉?桜莉?」
呼ばれてることに気がついて「はっ。」と我に戻る。
「教室着いたよ?」
「えっ!?あっ、うん。」
教室に入り、自分の席を…
「桜莉の席あそこだから。それと、僕の席はあっち。分かった?」
指を指して教えてくれた…が裏があるに違いない
「蒼の席がどこにあろうと興味ないわよ!」
「うん。分かってるよ。」
そう言うと蒼はするりと握っていた手を離して、自分の席に座った。
桜莉も右手が自由になった途端自分の席へ歩いていった。