10頁目 お昼休み
こうして、桜莉は授業はほとんどぼーっと過ごしお昼の時間になった。
授業が終わっても自分の席でまったりしていた。
(次何だっけ?あぁ、お弁当か…お弁当!?私持ってきたっけ!?)
「桜ちゃん!ご飯一緒に食おーぜ」
お弁当があるか無いか確かめようとガタンと立つと丁度、渡辺くんと蒼が来た。
「渡辺くん、蒼。」
一緒にお弁当を食べるというお誘いは嬉しかったが
(それよりも今はお弁当だよ!)
「食べたい!んだけど、ちょっと待っててくれるかな?ロッカー確認してくるから!」
二人には申し訳無かったが机を離れてロッカーへ向かった。
が、しかしそこにもお弁当はなかった。
ガクンと肩を落とし二人のいる机に戻った。
「どーしたの?桜ちゃん」
「お弁当……忘れちゃったみたい」
「えっ!?まじで!?どうする?俺の食う?」
「そんなっ、大丈夫だよ!きっと…」
体の前で両手を左右にふる。
最後の「きっと」のところは肩を落としていたが。
「ねぇ、桜莉。何の話?」
「えっ!?さっきから言ってるじゃん!お弁当を忘れたみたいなの!」
「桜莉のお弁当ならここにあるけど」
差し出してきた蒼の手には男の子には似合わないピンク色の包み。
「なんで!?」
「今朝頼まれたんだ。桜莉のお母さんに。どうせ、桜莉は忘れるだろうからって。はい、どうぞ」
蒼にお弁当を渡してくる。
蒼が持ってるのは癪だったがお昼抜きはきついので取り敢えずお礼を言った。
「ありがと」
「よし!じゃぁ食うか!」
三人とも丁寧に「頂きます」と言ってお弁当を食べ始めた。
「そういやさ、購買にパンが売ってるって知ってた?」
食べていると良仁が話を持ち出してきた。
「そりゃあ、大体の高校にあるんじゃないの?」
玉子焼きを口に含みながら聞く桜莉。
「だろうけど、一番種類が多いのはこの白木高校なんだってさ!」
「へぇ~食べてみたいなぁ」
「でも毎日のように混んでるから、先輩に遠慮してたら昼休みがなくなるよ。」
今まで静かだった蒼が口を開いた。
「そうだけどさぁ…だったら遠慮せずに堂々としてりゃいいんじゃね?」
「僕は弁当があればいいから、渡辺だけで行ってきなよ」
すかさずブーイングをする良仁。
その様子が可笑しくて桜莉は笑い出した。
「あっ!!話変わるんだけどさっ、二人は幼馴染みなんだろ?」
「幼馴染みっていうか、なんていうか……腐れ縁みたいなモンだよ。保育園から一緒で困っちゃうわ。ねぇ?」
蒼に同意を求める。
「そうだね、桜莉は昔から手の掛かる子だったよ。」
蒼が桜莉を見ながら懐かしむように言った。
(確かに昔は色々とお世話になったけど、って今もこの時点で世話になってるか。)
顔には出さずに心のなかで落胆する。
「えー、いーなー。」
良仁が本当に羨ましそうに蒼と桜莉を見る。
「何が!?今の話聞いてた!?」
「聞いてたけど?そーゆーことじゃなくて、幼馴染みが羨ましいなぁって思って!」
「渡辺くんは居ないの?」
良仁は少し考えてから
「いないっていうか………俺さぁ、高校入学と一緒にこっちに引っ越してきたから知り合いがいねぇんだよなぁ。」
と言った。
「そうだったんだ…」
悪いこと聞いたかな?
もしかして、そのことあんまり話したくないとかだったのかな?
「ははっ!桜ちゃん顔に出過ぎ!」
「えっ!?そんなに出てた!?」
「めっちゃ分かりやすい」
アハハッと笑い声を口に出して笑う良仁につられて桜莉も笑い出した。
「ふたりとも、笑ってる時間じゃないと思うんだけど?」
笑っている二人を止めるように蒼が話す。
「あと、五分で午後の授業始まるよ。」
すべての片付けが終わっている蒼がふわりと笑う。
「うそっ!早くしなきゃ!」
良仁と桜莉は素早くお弁当を片付けた。そして、その後良仁と蒼は自分の席に戻っていった。
午後の授業が始まった。