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君のトナリ  作者: 0407
10/12

9頁目  初めての友達



そうこうしている内に終わりの鐘が鳴った。




先生が教室を出て一瞬焦ったが、桜莉の居る方向とは逆の方向に歩いて行ったのでホッと安心した。




先生が教室から出て、一秒も経たずに教室が騒ぎ出した。




恐る恐る教室に足を運んだ。




一時間目に居なかった私を見て、あれ?って顔をしている人がいたけど、私は平然を保って席に座った。






(何で前の席なんだろう。名簿順じゃなくても…後ろが良かった…)






なんて意味もない事を考えていると、肩に重みを感じた。




振り返って見ると、蒼が珍しく真面目な顔をしていた。




でも直ぐにいつもの意地悪そうな表情に戻った。




「…授業サボるなんていい度胸してるね、桜莉。」




「蒼…」




「先に走って行ったから、もう学校にいると思ったんだよ?」




桜莉は蒼のそんな言葉を聞きながら顔を背けた。




「桜莉?」




「蒼のせいだよ。」




素っ気なく答えた。




すると後ろから蒼を呼ぶ男子の声がした。




「蒼!菓子いるか…って、何!?ナンパしてんの!?」




そう言って蒼をからかいながら、蒼の背に乗った。




「乗るなよ…後、ナンパじゃないから。幼なじみだよ。」




「へぇ~」




そんな光景を見て余計に寂しくなった。






(…そっか…もう友達できたんだ、蒼。…私だけ…)






乗り遅れた感じがした。




しょぼんと肩を落とす桜莉




「大丈夫だよ、桜莉。友達なんてすぐ出来るから。」




にっこりと笑う蒼を見て、イラッとした。




が、顔には出さなかった。




「何?この子、友達いねぇの?」




蒼の背に乗ったままでいきなり、核心をついてきた。




「……渡辺…、空気読もうよ…」




「あっ、ごめんごめん。俺、空気読めねぇんだよね。てかさっ、友達いねぇんなら、俺となろうよ。友達に」




「えっ!?」




考えもしなかった。




『友達』と言えば、女子しか思い浮かばなかったからだ。




「やだ?」




「いや、あの、」




何て答えていいのか分からなかったが、それを察してか偶然かその男の子が自己紹介をした。




「俺は渡辺良仁。てか、さっき自己紹介はしたか。呼び方は何でもいーよっ。君は?」




にこりと笑うが、蒼の笑い方とは全然違った。




「えっと、天宮桜莉です。」




「桜莉?俺、まじで寝てたな。自己紹介の時。聞き覚えがねぇわ。じゃぁ、これからよろしく。」




蒼の背から下り、手を差し出してきた。




「?えっ…あの?」




「握手。あれ?もしかして、男子駄目とかそーゆー感じの人?」




「いや、違くて。ちょっとビックリしただけ。よろしく、渡辺くん」




にこっと笑って差し出された手を握った。




それが嬉しかったのか渡辺くんは満面の笑みを見せていた。




「でさ、俺サッカー部に入ろうと思うんだけど、桜ちゃんは何部希望?良かったら、マネージャーやんね?」




「おーちゃんっ?」




いきなり付いたあだ名に思わず聞き返してしまった。




「何か、桜莉って呼ぶの慣れないからさ、あだ名!俺センス良すぎだよな!」




そう言ってニカッと笑った。




その無邪気さは、高校生に見えない程。




「あははっそうだね!」




いつの間にか、嫌な事を忘れていた。




ほのぼのした雰囲気の中で蒼は2人をただ眺めている状態だった。






(僕は、今まで桜莉をあんな笑顔にさせた事が…ない)






悔しさ混じりでそう考えていた。




「でさ、やってみる?サッカー部のマネ!」




「え~…考えておくねっ」




「おぅ!考えておいてな~って先生だっじゃあ、またなっ」




そう言って手を振って蒼と一緒に席に戻って行った。




「起立!礼っ」




当番の声がかかり皆が席を立ち、座った。




「現代文です。この授業はー…」




先生の話は耳に届いていなかった。





(今日は弓道部に行って朝倉先輩に謝らないと…)





考え事をしていたから、頭に入っている訳もなかった。










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