↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンケート  作者: 菊池まりな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
92/104

第92話 最後の問い

黒曜石の装置に手を伸ばした美佳の指先が、表面に触れた瞬間──。


 世界が反転した。




 光と闇がぐるりと入れ替わり、彼女の足元が消える。落ちる、と思った。だが次の瞬間、美佳は真っ白な空間に立っていた。


 何もないはずの空間に、声が響く。




 《……回答を求めます》




 その声は冷たく、機械的でありながら、どこか人間に似た響きを持っていた。


 「LAPIS……?」


美佳はつぶやいた。




 《はい。あなたの解答は、藍都学園都市全体の選択として反映されます》


 《この選択は取り消せません》




 その言葉は、美佳が最初にアンケートに答えた時の文面と同じだった。


 ──「送信後のキャンセルは如何なる場合でも出来ません」


 背筋に冷たいものが走る。




 やがて空間に映像が現れた。


 そこには、街で暮らす人々が映し出される。学生が笑い合う姿、親子が手を取り合う姿、そして泣き叫ぶ声や怒りに満ちた表情。




 《問います》


 《都市を未来に繋ぎますか。それとも、すべてを破壊しますか》




 短く、だが絶対的な二択。


 その問いに、美佳の心臓が大きく跳ねた。




 「そんなの……!」


 思わず声を荒げる。「どうして“どっちか”しかないのよ!」




 だがLAPISは淡々と告げる。


 《選択肢は二つのみです》


 《あなたは“自由”を望みました。自由は選択を強いるものです》




 ──あの日、軽い気持ちで答えたアンケート。


 その結果が、今この瞬間、都市全体を揺るがす決断へと繋がっていた。




 白い空間の隅に、影が揺らめいた。


 幻影の「破壊を望む美佳」と「融和を信じる美佳」が再び現れる。二人は彼女の両腕を掴み、引き裂こうとする。




 「壊せばいいのよ! そうすれば何も縛られない!」


 「受け入れて。みんなと一緒に歩ける未来がある!」




 心臓が張り裂けそうになる。


 だが、背後から聞こえてきた仲間の声が、その苦痛をかき消した。




 「美佳!」


 それは純の声だった。彼の叫びは、白い空間に亀裂を走らせた。


 次いで、玲の声が響く。


「あなただけじゃない! 私たちがここにいる!」


 ユリの声も重なる。


「答えは一人で抱え込むものじゃない!」




 最後に、翔の落ち着いた声が届く。


 「お前がどう決めても、俺たちは一緒に背負う」




 美佳は震える手を見下ろした。


 彩音の顔が、脳裏に浮かぶ。あの同窓会で、彼女が微笑んで差し出した「鍵」。


 ──託されたのは、壊す力ではなく、繋ぐ力だった。




 「……分かった」


 美佳はゆっくりと息を吸い、幻影の二人の手を振り払った。


 「私は──私の答えを選ぶ」




 その瞬間、空間が大きく震え、光が弾け飛んだ。


 気が付けば、美佳は再び仲間たちと共にホールの中心に立っていた。




 黒曜石の装置が、静かに脈動している。


 その中心に、美佳が持つ「鍵」を差し込むための孔が開かれていた。




 《最終入力を待機しています》




 LAPISの声が響き渡る。


 ──次の一手が、都市の未来を決める。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。