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アンケート  作者: 菊池まりな


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第69話 侵入の代償

冷たい蛍光灯の光が、地下通路のコンクリート壁を白く照らしていた。


その光の中に、LAPISの隊員たちが整然と並び、無機質な瞳で三人を見据えている。


白い制服の胸元には、青い石を象った徽章(きしょう)──零域の管理者だけが持つ印章が輝いていた。




「……何人いる?」


純が低く呟く。


彩音が即座に答える。


「最低でも六。背後にも二人、距離を詰めてる」




指揮官と思しき女性が一歩前に出た。


「三枝美佳、あなたは無許可で零域へのアクセスを試みました。これ以上の行動は、規定により制止します」


その声は冷たく、感情を削ぎ落した機械のようだった。




美佳の喉がひくりと動く。


「どうして……私を知ってるの?」




「あなたの存在は、零域システムの中枢に刻まれている。生まれた瞬間から」


その一言に、美佳は息を呑んだ。


何を意味しているのか、理解が追いつかない。けれど背筋を這い上がる寒気だけは、はっきりと感じ取っていた。




純が美佳の前に立ち、短剣を抜く。


「悪いが、こっちは後には引けない」


彩音もポケットから小型のEMP発生器を取り出し、指をかける。


「三秒間だけ、視界と通信を潰す。あとは……走って」




「彩音、でも──」


「美佳、今しかない!」




次の瞬間、耳をつんざく高周波音と共に、通路全体が暗闇に沈んだ。


蛍光灯が瞬き、LAPIS隊員たちの動きが一瞬止まる。


純はその隙を逃さず、二人の隊員の間をすり抜け、美佳の腕を強く引いた。




階段を駆け上がるように、防爆扉の前へ。


美佳は再び端末をかざし、心の中で強く念じた。


──開いて。私を、通して。




低い振動音とともに、扉の錠が解ける音が響く。


重い扉が左右にゆっくりと開いていく。しかしその背後から、暗闇を裂く怒号が飛んだ。


「阻止しろ! 認証を止めろ!」




純が振り向きざまに短剣を構え、迫る影を牽制する。


彩音は美佳の背を押し、低く囁いた。


「行って。あなたが進まないと、この扉は閉じる」




美佳は一瞬、二人の顔を見た。


その表情に迷いはなかった。自分を送り出す覚悟と、背負う覚悟だけがそこにあった。




深く息を吸い、美佳は防爆扉の向こう──零域の闇へと足を踏み入れた。


背後で扉が閉まりかけると同時に、金属がぶつかる音と短い叫び声が響いた。




──彼らは、大丈夫なのか?


不安が胸を締めつけるが、美佳は立ち止まらなかった。


今、引き返すことは許されない。




扉が完全に閉まった瞬間、零域の内部は外界と隔絶された。


そして、目の前に広がった光景は、美佳が想像していた「地下施設」とはまるで違っていた。



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