表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンケート  作者: 菊池まりな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/69

第67話 第三の道

ホール全体が軋むような低音を響かせ、床がわずかに揺れる。


光の壁に映し出されたミオの映像が、何度も途切れながらも必死に言葉を紡いだ。




「その端末……選ぶな……壊すな……“抜け出す”んだ」




「抜け出す……?」


美佳は眉をひそめる。


彩音が鋭い視線を向けた。


「そんな方法は存在しないはずよ。LAPISの管理下で……」




「あるんだよ」


ミオは彩音の言葉を遮る。


その声には迷いがなく、焦燥だけがにじんでいる。


「私が……そのためにここに戻ってきた」




純が目を細める。


「……お前、やっぱり“中”の人間だったか」




ミオは答えず、美佳にだけ視線を向ける。


「美佳、あんたが答えたアンケート──あれは単なる参加条件じゃない。


 あれは都市の“核心”と同調するための認証だった。


 つまり、今あんたは、この学園都市の心臓部と繋がってる」




美佳は思わず端末を握り直す。


心臓部──それはつまり、この世界そのものを動かす何か。




「でも、そんな繋がり……どうやって抜けるの?」


震える声で問いかけると、ミオは短く息をつき、映像越しに微笑んだ。


それはかつて電話で聞いた、あの優しい笑みに近かった。




「抜け出す方法はひとつ──“書き換え”だよ。


 自分の記録を、自分で上書きする。そうすれば、この都市はあんたを追えなくなる」




「上書き……?」




彩音が顔をしかめる。


「そんな無茶な……もし失敗すれば、存在そのものが消える」




「それでもいいの?」


純の低い声が、美佳の心を刺す。




美佳は口を開きかけ、すぐに言葉を飲み込む。


消える──それは死よりも曖昧で、恐ろしい響きだった。


だけど、同窓会で笑っていたあの人たちを、誰かの“記録”に閉じ込めたままにはできない。




ミオの映像が再びノイズに包まれ、途切れがちになる。


「……場所は……旧校舎の……地下……“零域”……」




その瞬間、ホールの壁面全体が赤く染まった。


『警告──外部通信を遮断します』




ミオの姿は霧のように掻き消え、代わりにLAPISの紋章が冷たく浮かび上がる。




「……やばいな」純が低く呟く。


彩音はすでに動き出していた。


「零域に行くなら、急がなきゃ。封鎖されたら二度と入れない」




美佳は端末を握りしめ、深く息を吸い込む。


もう、立ち止まっている時間はない。




──選択肢は三つになった。


選ぶ、壊す、そして“抜け出す”。




その中で、美佳が取るべき道は……。




彼女は小さく頷き、純と彩音の後を追った。


背後でホールの扉が音を立てて閉ざされ、冷たい電子音が響き渡る。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ