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アンケート  作者: 菊池まりな


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62/104

第62話 偽りの境界線

藍都学苑の図書館。薄暗い読書スペースの奥、誰も足を踏み入れない静寂の中で、美佳は立ち尽くしていた。




彼女の手には、1枚のアンケート用紙が握られていた。見慣れた、しかし決して記憶の中のものとは一致しないそれ。記された設問はどれも、過去に受けたどのアンケートとも微妙に異なっていた。




> Q:あなたの「正義」は誰のものですか?








> Q:もしあなたが記憶を失っても、真実を知りたいと思いますか?








> Q:この物語の「結末」を、書き換える覚悟はありますか?








指先が震えた。この用紙は、単なる調査票ではない。「LAPIS」の本部があるこの学園都市の中枢、いや、もっと深い意図を孕んだ《鍵》なのだ。




──この世界は、誰かによって編集されている。




そんな直感が美佳の胸をかすめた瞬間、誰かが背後から声をかけた。




「……見つけたよ、美佳」




振り返ると、そこに立っていたのは朝倉純だった。けれど、その瞳は知っている彼のものとは少し違う。温もりの奥に、冷たい決意の色が混じっていた。




「純……どういうこと? あなたは……味方、だったよね?」




「味方かどうかは、まだ決まってない。少なくとも、君が《真実》に触れた以上、もう“日常”には戻れない」




そう言って純は、美佳の手からアンケート用紙を奪い取ろうとした。だが、美佳は一歩引いてそれをかざす。




「やめて。この紙には何かがある。私……知りたい。知る覚悟があるの。例え、すべてを壊すことになっても」




その言葉に、純は小さく目を見開き、そして微かに微笑んだ。




「……だったら、次の扉を開ける資格はある」




直後、図書館の奥に隠されていた隠し扉がゆっくりと開いた。かつて誰かが施した記憶の封印が、ついに解かれ始める。




その先には──LAPISの中枢へとつながる、“禁忌の記録室”。




美佳は深く息を吸い、純とともに、闇の向こうへと足を踏み出した。




そして、彼女の心に響いた言葉はただひとつ。




> 「あなたの物語を、あなた自身の手で取り戻して」





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