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アンケート  作者: 菊池まりな


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第6話 記憶の継ぎ目

同窓会の会場は、複合施設の中でも最上階に位置する展望ラウンジだった。藍都市街を一望できる広々とした空間に、懐かしい制服の写真や当時の卒業アルバムが展示されている。




「こんなに来てるんだ……」




 美佳は小さくつぶやいた。


 見覚えのある顔ぶれがちらほら。かつての教室で過ごした記憶が断片的によみがえる。




 だが、どうしても繋がらない。自分が卒業式で誰と話したのか、いつ彩音と最後に会ったのか、記憶にぽっかりと穴が空いていた。




 「美佳?どうしたの、顔色悪いよ?」




 彩音が心配そうに覗き込む。


 その視線に応えようと、美佳は笑顔を作った……が、唐突に会場の照明がチカチカと明滅した。




 ピピッ、ピピピ……




 場違いな電子音。誰かのスマホかと思ったが、誰も取り出していない。


 次の瞬間、展示されていた卒業アルバムのデジタルパネルに、見覚えのある画面が浮かび上がった。




> 【アンケート:第0区画データが検出されました】


【回答者ID:M-319A】【感情データ同期完了】








「……!」




 美佳の背筋が凍りついた。




 (これ……私の、ID!?)




 慌ててスマホを確認しようとした瞬間、横からスッと差し出された手が彼女の手首をとらえた。




「久しぶりだね、三枝さん」




 低く、落ち着いた声。


 そこに立っていたのは、長身の青年。黒縁眼鏡に整った顔立ち。制服の頃から目立っていた朝倉純(あさくらじゅん)だった。




「……朝倉くん?」




「僕は、こうなることを少しだけ予期していたよ。君も、もう気づいたはずだ。“記憶”が改ざんされている」




 声をひそめる彼の口調は、冷静ながらも焦りを含んでいた。


 美佳はわずかにうなずいた。




 「アンケート……何かがおかしい。でも、私には何も分からなくて──」




「分かってる。だから、教えるよ。


 “あのアンケート”はただの質問じゃない。


 それは記憶のプロトコルを“書き換えるための鍵”なんだ」




「記憶の……?」




「君は何かを答えた。選択肢を、文末を、思考を……そうしてLAPISは“君という存在”の輪郭を上書きしていく」




 その言葉が意味するものの恐ろしさに、美佳は一歩引いた。




 (私……自分の記憶を、自分の意思で、書き換えられてたってこと?)




 「──でも、なぜ私に?」




「……君は“第0区画”の出身だからさ。


 LAPISの試験的導入が行われていた、特別なクラスだった」




「第0……?」




 美佳の頭に、一瞬だけ、誰かの泣き声がよぎった。


 制服の胸元に記された「0」のバッジ。そして、校舎の地下、真っ白な壁とノイズ混じりの電光掲示。




「今夜、もう一度来てほしい場所がある。君の記憶の“継ぎ目”を、見つけ出すために」




 朝倉が差し出したのは、旧校舎の鍵だった。


 錆びた金属。深い藍色。手の中で、まるで心臓のように脈打つ感覚がした。







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