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アンケート  作者: 菊池まりな


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53/104

第53話 封じられた声

夜明け前、藍都学園都市は一瞬の静寂に包まれていた。


誰もが眠っているはずの時間帯。しかし、LAPIS中央棟の地下施設では、複数の端末が同時にアラートを鳴らしていた。




「侵入ログが検出されました。“Project MIRAGE”の研究記録に第三者がアクセスした形跡があります」




研究棟のセキュリティルームにいた黒服の男が、無表情のまま報告する。


対面のモニターに映し出されたのは、LAPIS運営本部責任者・有栖川玲。




「予想より早かったわね。……相手は?」




「特定はできませんが、内部アクセスキーを使用していたようです。外部からの侵入ではなく、LAPIS内部関係者か、もしくは……」




男が言いよどむ。




「もしくは、“対象者”ね。──美佳か、朝倉純」




玲の声は冷たく、抑揚がなかった。




「抹消対象に再指定しなさい。記録は再封印。これ以上、情報が拡散すれば……私たちの“実験”は終わりよ」




玲の背後の壁には、大型モニターが並び、その一つにはプロジェクトのシンボルマークが光っていた。


“Project MIRAGE”──虚像と現実の狭間で、人の心の構造を試す狂気の計画。




一方そのころ──




「送信、完了……!」




LAPIS内にある、かつての旧図書資料室跡地。そこに潜んでいた美佳と純は、手に汗握りながら、最後の操作を終えた。




「この端末は、まだ遮断されてなかった。ギリギリだったけど……」




美佳が肩で息をしていた。




先ほどまで表示されていた、あの“真実のファイル”を複数の匿名クラウドとダークネット上にアップロードし、一部は報道機関や記者個人へも送信していた。


送り主の名は伏せた。それでも、届くところには届く──その確信があった。




「……これで、止まらないよね。LAPISのやってきたことは、もう誰にも隠せない」




「いや、やつらは隠そうとするさ。都合の悪いものは、必ず“なかったこと”にする」




純の言葉に、美佳は静かにうなずいた。




そのとき、背後の扉が“ガチャン”と大きな音を立てて閉まった。


警報は鳴らない。代わりに、周囲の照明がすべて消え、非常灯だけが点滅する。




「……やばい。追ってきたかも」




純が身構える。だが、美佳の目は冷静だった。




「来るなら、来なさい。私は、もう逃げない」




扉の向こうから、重い足音。


それは敵か味方か、まだわからない。




しかし、美佳の心には、かつてないほど確かな意志があった。




彼女はもはや、操られる側の“モルモット”ではない。


自らの意志で選び、戦う存在へと変わっていた。




そして、この都市の誰もが、いつか“選択”を迫られるのだと、彼女は知っていた。



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