表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンケート  作者: 菊池まりな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/72

第2話 静かなる崩壊

翌朝、インターホンの音で美佳は目を覚ました。




「──郵便でーす!」




眠気眼のままドアを開けると、小さな白い封筒が手渡された。差出人には「LAPIS DATA調査部」とだけ書かれている。




(昨日の……もう来たの? 早すぎ)




部屋に戻って封を開けると、折りたたまれた現金五千円と、印刷された簡素な手紙が入っていた。








> ご協力ありがとうございました。


あなたのご回答は、大変貴重なものとして記録されました。


どうか、今後も変わらぬご協力をよろしくお願いいたします。










(協力って……もう送っちゃったし、終わりでしょ?)




そのとき、ふと違和感を覚える。




──手紙の裏面。印刷ではなく、手書きでこう書かれていた。




「次の質問も、すぐに届きます。」




鳥肌が立った。遊び心だろうか、あるいは偶然だろうか。




それでも、美佳はポケットの五千円札を見つめると、いつものように財布に押し込んだ。貧しさには現実が勝る。怖さは、あとで考えればいい。










それから数日後。




雨の降る朝、美佳はスマホでニュースを眺めていた。暇つぶしのルーティンだった。




> 【速報】都内の会社員、田代誠さん(42)が自宅マンションから転落死。


現場の状況などから、警察は自殺と事件の両面で調査を進めています。








指が止まる。




(……田代?)




記事に載った顔写真を見て、美佳は息を呑んだ。三年前に派遣先で彼女を罵倒した、あの男──田代誠だった。




「……そんなバカな……」




スマホを握る手が汗ばんでいた。画面の裏側から、誰かが自分を見ている気がする。




(関係ない……偶然よ。こんな偶然、いくらでもある)




美佳は頭を振って立ち上がる。窓の外は重たい雨。しとしとと降りしきる音が、心の中にじわじわと染み込んでいく。




机の上のパソコンが、ふいに起動音を鳴らした。




「え……?」




触っていないのに、画面が勝手に立ち上がる。昨日まではスリープ状態だったはずなのに。




──画面の中央に、ひとつのメッセージが浮かび上がる。




> 【第2回アンケートに進むには、以下をクリックしてください】


※ご協力は義務ではありません。


ただし、1回目の回答内容との整合性を維持するため、


ご参加を強く推奨いたします。








画面の隅には、前回と同じ会社ロゴ──「LAPIS DATA」。




(どういうこと……なんで……?)




混乱の中で、美佳は、これが単なる悪ふざけでも偶然でもないことを、肌で感じ始めていた。




彼女が名前を書いた──それだけのことが、たしかに“何か”を起こした。




これは偶然じゃない。


これは──罰なのか。


それとも、願いの代償か。




美佳の目の前には、ふたたび「回答を始める」ボタンが静かに待ち構えていた。




雨の音が、少しだけ強くなった気がした。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ