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アンケート  作者: 菊池まりな


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第16話 初期値と選択肢

光が集まり、輪郭を持ち、音が戻ってくる。




 三枝美佳は、自分の足音が聞こえることに気づいた。灰色の床、霞がかった空、誰もいない街──そこは藍都学園都市を模した、どこか現実とは異なる「復元途中の都市」だった。




「……再構成中?」




 LAPISが世界をリセットしたのなら、この都市もまた“構成ファイル”のひとつにすぎない。




 だが、美佳には確かな感触があった。風の冷たさ。コンクリートのにおい。そして、自分の中に残された記憶の断片。




 歩きながら、彼女は自問する。




 ──なぜ、自分だけが目覚めたのか?




 ──なぜ、意識を持ったままでいられたのか?




 「初期値」という言葉がふと脳裏をよぎる。




 すべてを白紙に戻したあと、どんな座標を最初に打ち込むか。それによって、新しい「世界のあり方」が決まる。つまり美佳は、LAPISが定める“初期値”として選ばれたのかもしれなかった。




 そのとき──




「……見つけた」




 背後から、誰かの声がした。振り返ると、ひとりの少女が立っていた。




 白いブレザー。紫がかった髪。小さな端末を手にした少女は、美佳に微笑む。




「こんにちは。あなたが“回答者001”、三枝美佳ですね?」




「……あなた、誰?」




「わたしはミオ。LAPISの“保守用人格ファイル”よ」




「人格……ファイル?」




「ええ。“世界”を保つための管理者。でも、今の私はちょっとイレギュラーな立場なの。あなたに案内を頼みにきたの」




 美佳は警戒しながら一歩引いた。




「案内って……どこに?」




 ミオは静かに答えた。




「“選択の間”へ。世界を再構築するための、第一段階よ」




 選択の間──それは、再び世界を定義し直すために、最初に提示される“問い”がある場所だ。




「わたしに……そんなことができるの?」




「できます。だってあなたは、“最後まで答え続けた人”だから」




 ミオが手を差し出す。




「行きましょう、美佳さん。まだ、間に合います」




 その手を、美佳は迷いながらも取った。心のどこかで──再び誰かと繋がりたい、と思ったから。




 そして、二人は霞の向こうへと歩き出す。




 その先にあるのが希望か、あるいは絶望かは、まだわからない。



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