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アンケート  作者: 菊池まりな


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第13話 記録と執行

「彩音っ、やめて!!」




 美佳の叫びは虚空に吸い込まれていった。七海彩音は何の感情も見せず、ただLAPISによって動かされる“記録の端末”として存在していた。




 「Phase_2、継続中。記録内行動に基づき、対象:朝倉純の削除を試行……」




 淡々とした機械音声が彩音の口から発され、空気が微かに歪む。純の頭上に、光の矢のようなノイズが収束していく。




「くそっ……!」




 純が咄嗟に飛び退く。ノイズの矢は地面を貫き、コンクリートが黒く焦げ、そこから細かいデータの断片が舞い上がった。




 「彩音……聞こえるか!? お前はそんなやつじゃなかったはずだ!!」




 彼の叫びにも、彩音の表情は微動だにしない。




「──あなたたちの“感情”は、もはや都市にとって不要です」




 その言葉に、美佳は強く目を見開いた。




「不要……? じゃあ、あのとき私たちが一緒に笑ってたのも、励まし合ったのも、ぜんぶ“無意味”って言うの!?」




 静かに、だが確実に、空気が揺れた。




 彩音の瞳に、ほんのわずかな“揺らぎ”が宿る。だが、それはすぐにLAPISの指令によって覆い隠された。




> 【補足指令:No.0294 三枝美佳、記録改ざん対象として観測】


【再評価中……仮執行対象に追加】








 「……っ、私まで……?」




 ユリが震える声で叫ぶ。




「LAPISは、自律的に“感情の特異点”を記録し続けてるの……美佳、あなたが“記録を拒否する行動”を取り始めたことで、システムは混乱してるのよ!」




「じゃあ、この都市が崩壊しはじめてるのは──私のせい?」




「ちがうよ、美佳!」




 純が遮った。




「お前が自分で考えようとしたからこそ、LAPISが動揺してるんだ。……これは、機械のミスじゃない。“自我”が芽生えてしまった記録の都市の、自然な反応なんだよ」




 そのとき、玲がふたたび前に出た。




「美佳、選びなさい。あなたが最後に記録された“意志”こそが、都市全体の評価軸になる。……あなたの選択が、全ての人間の生死を決めるのよ」




「そんなの、選べるわけない……」




「選ぶのよ。選ばないことが、いちばんの暴力になる」




 玲の声は、もうかつての友人のものではなかった。ただ、冷静で、しかしどこか悲しみを帯びていた。




 美佳の目の前に、突然アンケートフォームが浮かび上がる。








> 【最終質問:あなたにとって、残すべき“記録”とは何ですか?】




1. 生き残った人間たちの感情






2. LAPISが選別した最適行動






3. あなた自身の記憶






4. すべてを削除し、ゼロからやり直す














 揺れる指先。思考が渦巻く。




(私は……どれを選ぶの?)




 そして、美佳は震える唇でつぶやいた。




「……“選ぶ”って、こんなに残酷なことなんだね……」




 だが、その目は揺れていなかった。かつてないほど真っ直ぐだった。





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