表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アンケート  作者: 菊池まりな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/94

第10話 記録の部屋

旧藍都学苑の事務棟──現在はLAPISの監視本部とされる場所に、三枝美佳たちは足を踏み入れた。




 建物は外観こそ古びているが、内部は驚くほど整備されていた。白く光る無機質な壁面に、動作音もなく動く自動扉。まるで病院と研究所をかけ合わせたような空間だった。




「こんな場所、学苑にあったなんて……」


 純が眉をひそめてつぶやく。




「なかったよ。表向きはね」


 そう答えたのは宮下ユリだった。彼女の口調はあくまでも冷静で、もはや同級生というより、別の“何か”に属している印象すらあった。




 廊下を進み、彼女が導いたのは、「記録室」と書かれたドアの前。


 壁には小さなプレートが貼られていた。




 > LAPIS:分類管理セクション第3保管ユニット




 ユリは立ち止まり、振り返る。




「ここには、あなたたち──アンケート最終項目に“YES”と答えた者たちの記録があるの」




「“記録”? どういう……?」


 美佳が尋ねると、ユリは無言でドアに指を添えた。


 開かれた瞬間、冷たい空気とともに、ホログラムの映像が壁一面に浮かび上がった。




 そこに映っていたのは──




「……わたし?」


 美佳自身の姿。スマホを操作しながら、アンケートに答えていた、あの夜の様子だ。




 画面右下には、こう表示されていた。




 > 被験者No.0331:三枝美佳


 > 選択項目:最終項目「許可する」→YES


 > ステータス:観測対象・“再編済”




 「再編済」──その意味が、理解できなかった。




 同時に、純や彩音、そして東郷翔(とうごうしょう)有栖川玲(ありすがわれい)の映像までもが連続して表示されていく。


 それぞれがアンケートに答える瞬間、無防備で、何も知らないまま。




 「LAPISは、都市の“構成因子”を収集しているの」


 ユリの声が、冷たく響いた。




「記憶、感情、選択、直感──そういった“非物質的な情報”をね。あのアンケートは、無作為に選ばれた市民の意識を取得する“鍵”だった」




「……私たちは、そのデータの一部ってこと?」


 彩音が食い入るようにホログラムを見つめた。




「一部であり、起爆剤でもある」


 ユリは端末に触れ、さらに別の画面を呼び出した。




 そこに映っていたのは──都市の全体地図と、赤く光る複数のポイント。




「何、これ……?」


 東郷翔が声を上げた。




「これは、“観測対象”たちの動向と感情変化のリアルタイム追跡記録。つまり、あなたたちは今も都市のどこかで“生きた情報体”として監視されている」




 静寂が支配する。




「じゃあ……この先、私たちが何かを選ぶたびに、それがLAPISに利用されていくってこと……?」


 美佳の問いに、ユリはわずかに視線を逸らした。




「そうよ。でも、それを止められるかもしれないのは──自分の“記録”を完全に破壊できた人間だけ」




 瞬間、室内の照明がチカッと点滅した。


 建物全体が揺れるような微振動とともに、非常灯が点いた。




 「再編フェーズが始まる……」


 ユリが呟いた。




「時間がない。“次の選択”は、すでに始まってる」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ