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第十二章 心からの選択
半年後、萌はシェ・ルミエールを退職することを決めた。オーナーパティシエのシェフ・デュボアは惜しんでくれたが、萌の決意を理解してくれた。
「君は本当のパティシエになったね」
最後の日、シェフ・デュボアは萌にそう言った。
「見た目だけでなく、心で作るようになった。それこそが真のパティシエの姿だ」
萌は涙ぐんだ。長い間追い求めていたものが、ようやく分かったような気がした。
故郷に戻る前に、萌は悠斗と最後の食事をした。
「寂しくなります」
萌は正直に言った。
「僕も寂しいです。でも、萌さんの新しいスタートを応援しています」
「悠斗さんは東京に残るんですよね」
「しばらくはそうです。でも、地方の仕事も増やしていきたいと思っています」
二人の間には、恋愛とは違う深い絆があった。お互いを理解し、尊重し、成長を支え合う関係だった。
「また会えますよね」
「もちろんです。今度は僕が萌さんのお店に取材に伺います」
「その日を楽しみにしています」