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第十一章 それぞれの道
数ヶ月後、萌は悠斗と珈琲館タンポポで会っていた。
「実は、お話があるんです」
萌は緊張しながら切り出した。
「私、将来は故郷に小さなパティスリーを開きたいと思っているんです」
悠斗は驚いた表情を見せた。
「故郷に?」
「はい。東京で学んだ技術を活かして、地元の人に愛されるお店を作りたいんです」
萌の故郷は、決して華やかな場所ではない。でも、そこには温かい人たちがいて、素朴でも心のこもったものを大切にする文化があった。
「素晴らしいアイデアですね」
悠斗は心から賛成してくれた。
「でも、経営は大変ですよ。特に地方では」
「分かっています。でも、やってみたいんです。悠斗さんのコラムを読んで、地域に愛される店の素晴らしさを教えてもらいました」
悠斗は微笑んだ。
「僕も実は、地方での仕事に興味があるんです。都市部だけでなく、地方の隠れた名店を発掘したくて」
二人の夢は、偶然にも同じ方向を向いていた。
「もしかしたら、将来お世話になるかもしれません」
「こちらこそ、その時はぜひ取材させてください」
二人は笑い合った。