表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/34

【2章完】2-22 邪気去りて地脈戻る 夢終わりて 金狐は碧海に輝く


 時をかけても、時空を超ても

  ボクは……必ず君を見つけ出す……


――――――


 ――東京・市ヶ谷 防衛省地下指令所


「JAXA経由、ALOS-4干渉SARの最新解析入りました!」


 統幕情報本部 当直幕僚(二佐)が声を張った。スクリーンには淡路島南方を中心とする干渉縞が投影さていた。五分前の画像と比較して表示された最新画像には、先ほどまで複雑に輝いていた縞模様が跡形もなく消えていた。この地域、闇坂村を含む。 


「観測ミスか?」統合幕僚監部運用部 運用一課長(一佐)が尋ねた。

「いいえ! GEONET(ジオネット:全国GNSS観測網)でも同様です! 島全域に数センチ規模の急変動が出ていたのに……それが一気にゼロに!」気象庁派遣地震火山部の技官が答えた。

「歪が解放されたのなら、M七級の主要動が島を襲うはずじゃないのか……」中央防災会議に随行していた内閣府政策統括官(防災担当)付 地震火山対策担当参事官が尋ねた。

 

「はい。そのはず……なのですが……。揺れは消失しました。余震もありません。観測波形はスロースリップ様の収束を示しています」気象庁若手解析官が返答した。

「だが速すぎる。スロースリップは通常、数日から数週間かけて進行する。これは……わずか数分での収束だ」中央防災会議の臨時顧問として臨時招聘された龍岡門大学の地震学教授が絶句した。


 その場の誰もが息を呑んだ。

 

「歪消失現象……?そんなもの存在しないぞ?そもそも地震学の根本を揺るがす内容だ。過去のどんな事例にもない」教授が唸った。


 その時、官邸地下にて。内閣官房内閣危機管理センターの直通回線が点滅していた。

 

「米国USGSから照会だ! 「Mw七相当の地震モーメントに匹敵する地殻歪の解放が検出されていた。にも関わらず地震波が観測されていない」……説明を求められている!」


 内閣情報調査室当直内閣参事官が読み上げた。外務省北米局参事官が顔をしかめた。


 別の端末ではハワイ・PTWC(太平洋津波警報センター)が緊急ファクスを送ってきていた。

《AWAJI REGION / ANOMALOUS STRAIN RELEASE DETECTED.

NO ASSOCIATED TSUNAMI SIGNAL.

POSSIBLE DATA ERROR OR UNKNOWN MECHANISM》


「津波電位ゼロ……?太平洋全域のブイ観測網にも反応なしです!」気象庁海洋情報課から派遣された監視員が報告した。


 中央防災会議の席上で気象庁地震火山部の理事官は顔を蒼白にしていた。

 

「USGSは観測異常として処理するつもりらしい……だがこれは、もはや「地震ではないナニカ」としか言いようがない」


――――

 

 NHK総合は臨時ニュースに切り替わっていた。

 

《NHKニュース速報》

「本日午後、兵庫県南部、淡路島で大規模な地殻変動が観測されました。しかし通常の地震動は初動のみで収束しました。津波も確認されていません。気象庁は「極めて異例である」とコメントしています」


 解説席の研究者が声を震わせた。

 

「観測された歪の規模はマグニチュード七クラスに相当します。しかし今、震度計にも海底圧力計にもそれが出ていない。言葉を選ばずに言えば……自然法則に反しています」


 民放ワイドショーは盛り上がりを見せていた。

 

「ネットでは「幽霊地震」、「幻の歪」などと話題になっています!ご覧ください。SNSの投稿です。「緊急速報が来たのに揺れは数秒で消えた」「体感震度ゼロのM七」。混乱の声が相次いでいます!」

 

 淡路島の避難所では皆が報道番組にくぎ付けになっていた。確かに揺れはあった。潮も引いていた。

 それなのにテレビのキャスターは気の抜けたことばかり言っていた。皆の口からは不満の声が上がっていた。

 

「はあ!?今の揺れ、確かに感じたのに「誤報」て何でやねん!」

 

 避難所の体育館に不満の声が飛び交っていた。テレビに映る専門家は「異例」と言っている。しかし避難所ではその言葉に納得する人は誰もいなかったのである。


「おかしいで。ほしたらあの黒い雲は何やねん?」

「島全体で鳴っとったあの地鳴りはなんや?」

「衛星?アメリカ?知らんがな」

「データ回収しとる?だから何や」

「肝心なことの説明はどうなっとんねん」


 同時刻、ワシントンD.C.のUSGS本部でも緊急ブリーフィングが開かれていた。

 

「日本の観測網は正確だ。だが地震の歪エネルギーが一瞬で消失した。これは何だ?未知の摩擦解放メカニズムか?もしそうなら、これまでの学説が一気にひっくり返るぞ。それとも計器に現れない非地震性破壊があったのか?」


 別の研究者が反論した。

 

「そんなことがマントルレベルで起こるはずがない。地球物理学の常識が根底から覆されます」


 報告は即座に国連防災機関へも送られた。だがあり得ない公式コメントが発表された。

 

《説明できない。前例がない》


 東京、総理執務室では報告を受けた首相が短く息を吐いていた。

 

「我が国の観測衛星と米国のデータが同時に異常現象と指摘している。これはただの地震ではない。未知の現象と認めざるを得まい」


 首相が重々しく口を開いた。内閣官房副長官が問うた。

 

「総理、国民にはどう伝えますか?」

「……正直に伝えるしかあるまい。科学では説明できない異変だと」

「ですが正直に伝えれば国民は混乱しますよね?」

「隠蔽よりましだろう」


 首相が静かに言い返した。会議室に重苦しい沈黙が流れた。その沈黙を破ったのは首相秘書官が差し出した一枚の封筒である。

 

「総理、内閣官房危機管理センターを通じ、()()()()()()()()()より「本件に関して内密に伝えたいことがある」との打診がございました。公式依頼ではありませんが極秘扱いを求めています。お取次ぎいたしますか?」


――――

 

 一方その頃、民放各局は幻の地震だけでなく、もう一つの映像に熱狂していた。


「カメラ引いて……いや、ズームだ! ……映ってます!海底を……金色の光が駆けています!速いっ!速すぎるっ!あっという間に沖へ!」

 

 現地リポーターが声を張り上げていた。映像には潮が引いた海底を金色の獣が駆け抜ける様子が映っていた。


「ご覧ください!潮が引いたはずの伊毘の海底を一頭の狐が……いや、これは……金色です!金色の狐です!金狐が走っていますッ!」


 スタジオのキャスターが言葉を失った。

 

「き……金狐……?神話の中で語られる伝説の……?」


 別のチャンネルでは、リポーターが狂乱気味に絶叫していた。

 

「皆さん信じられますか!?狐です!金色の狐が現れました!海底を駆け、南へ――白坂村伝承の海没地に向かっています!!!」


 モニターに釘付けになったコメンテーターが身を乗り出した。

 

「これはただの動物ではありません! 神使です、神の使いです!あの金狐は封印の地へ向かっています!」


 SNSは瞬時に炎上した。

 

「#金狐 #淡路島 のキーワードがトレンド入りしました!」「《金狐様降臨》が世界的トレンドに!」


 外国のニュースチャンネルすら、この映像を切り抜いて放送を始めた。

 

〈This is unbelievable… A golden fox… running across the ocean floor… Japan is witnessing mythology coming alive――〉


 NHKが幻の歪に翻弄される間、民放各局は海を走る金狐の中継に興奮していた。専門家は解説を忘れてただただ絶句していた。


 

 ――――

 

 淡路島の危機は去った。剣奈は無事帰還した。しかし玲奈は……いつまでも目を覚まさなかったのである……


 

第二章 完





――――――――

邪気去りて地脈戻る 

 夢終わりて 金狐は碧海に輝く


 

白黄の奔流、闇を退けど

 血の華を咲かせし鉛弾が遮る

地脈の嘆きは正せども

 愛しきあの人は戻らない

 

時をかけても、時空を超ても

 ボクは……必ず君を見つけ出す……

 

#小説宣伝です #安土桃山幻想 #小説家になろう #剣奈の祝詞 #白黄の奔流 #玲奈の囚われ #和風伝奇 #歴史ファンタジー



白流奔湧退妖氛

 鉛華一発隔紅塵

地脈已平情未返

 越時空誓救故人


夏風



――――


 こんにちは夏風です。闇坂村の村人の篠への陵辱、そして殺害。

 一章で剣奈が篠の魂を浄化して大団円を迎えた……はずでした……

 

 しかし物語は夏風にペン、いやスマホで描いてるから親指か?まあその……指を置くことを許しませんでした。

 そして一章で闇坂村の子孫を皆殺しにしてやると激怒していた玲奈……。玲奈に復讐させるストーリー案もあったのです。剣奈?剣奈はダメです。村人、殺せません……。

 そんな玲奈。それがまさか……ざぁこざぁこさせられるとは…… 玲奈ごめん……。

 

 玲奈にはまだまだ隠し設定がたくさんあります。あまりにも重く過酷ですが……どうして玲奈ばかり……と思います……。


 え?おまゆう?

 

 はい。ごめんなさい。私が書き手でした。藤倉!お前だけが頼りだっ!

 

 玲奈さんと藤倉。かなり早い段階からカップリングは考えてました。ほら、本作一章にも伏線あるでしょ?


 まあほんとはもう少し引っ張ろうと思っていたのです。ですが……児童趣味はどうかとのコメントなどいただきまして……まあ私は藤倉に剣奈には一切に手は出させる気はなかったですけどね……地球滅びますし……

 

 でもどうでしょ。今でもやっぱり剣奈にマグナムおったてて玲奈に嫉妬まじりに蹴り潰されてる未来も見えますけどね。

 あっと、話が錯綜してきました。ごめんなさい。

 

 ということで『第二章 地図にない村……描けない池……』終了です。闇坂村はどうなるのか。篠の池はどうなるのか。玲奈はどこにいるか?

 邪気はちょっと意外な場所に逃走してます。日本神話にお詳しい方、あるいは地質にお詳しい方は、もしかしたら当てられるかも?


 ここまで読んでいただいてありがとうございます。もし、もし、よろしければ、★★★なんていただけたら泣いて喜びまする。


 三章はどうしょうなかな。本作ちょっと長くなってきたので、三章を独立させて短編を作ろうかなとか。

 ここはひとまずこれにて完結にしますね。ここで三章書く場合はまた完結外しまする。

 玲奈探しの旅、あと少しお待ちくださいませ。えっ待ってる人いるかって?そ、それは言わない約束じゃ くすん……


 あと、先に書くかもってお話もありまして。学園ものです。剣奈、女の子になって学校に通います。転校先にちょっと意地悪な上位カースト女子グループがおりまして……。


 あと、またそれらとは別にダンジョン探索などさせてみたくもなりまして……


 さてさて。それらはともかく。


 お読みくださいりありがとうございました。皆様には感謝しかございません。


 夏風を見つけてくださってありがとう

とっても嬉しいです。感謝しかありませぬ


 2025年9月1日


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ