2-15 絶望に堕とされた魂、砕かれた身体 緋縄の檻にて(冒頭注意必読)
作者注:本話にはR18のような直接的な性行為の表現はないものの、女性が性暴力を受ける様子が含まれます。作者のこだわりとして物語上どうしても外せない重要な場面です。
ですが、このような内容が苦手な方、強い不快感やトラウマとなる恐れがある方は閲覧をお控えください。
ストーリーとしては「玲奈が酷い暴力を受けた」その事実だけ受け取っていただければ、本話を読まなくても問題ありません。
読者の安全と心身のご負担に配慮し、ご自身の判断でご覧ください。
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「ほう……威勢がいいのはさっきまでか。哀れだな、さっきの気丈な顔はどこに消えた?」
「泣いて頼んでみせても無駄じゃ。お前の懇願などただの酒の肴じゃ」
「もっと泣け。ほれ、もっと叫べ。お前の悲鳴、心地よいのお」
「そ、そんな……」
玲奈の震える声が微かに響いた。その言葉を嘲り、彼女の体を更に責め苛む手が強まった。
室内にすえた匂いが広がった。男たちの汗と欲望の匂い……。灯火がほのかに照らす淡い陰影が広がっていた。
男たちの足音と衣擦れの音が響いていた。無遠慮な視線が玲奈の全身を舐め回した。
ビリッ ベリベリベリ ビリッ
無遠慮に身体をまさぐる手が伸びた。かと思うと巫女装束の白衣が乱暴に掴まれた。そして容赦なく引き千切られた。嫌な音を立てて白い袖が肩口から裂かれていった。
「やめて……やめてください……やめてください……」
玲奈は弱々しく訴えた。その訴えは男たちにとって心地よい響きだった。まさに猫が鼠をいたぶる気持ちそのままだった。玲奈の羽は無残にむしり取られていった。
着衣は徹底的に乱雑に引き裂かれた。そしてむしり取られた。着衣していた白麻の清浄さは無残に引き裂かれていった。
袴の重なりも男たちの手で捲り上げられた。鮮やかな緋の布があられもなく晒され、引き裂かれた。
「やめて、お願いします……やめて……ください……」
「ハハハハ。まだ言ってやがるぜ。その言葉、いつまで持つかな?」
懇願の声は笑い声にかき消された。麻縄ごと身体を露わにされる感触は強い屈辱を玲奈に与えた。
玲奈の四方に乱雑に破り捨てられた布切れが散らばっていた。玲奈はもうこの場から逃げられたとて着衣なしとなる。ちぎれ果てた布を見て玲奈はさらなる絶望に苛まれた。
男たちはそんな玲奈の表情を見てニヤニヤ笑っていた。すすり泣きの名残を残した頬。奪われた尊厳。無慈悲に打ちのめされ哀れに泣く女。実にうまそうだった。
彼らはにやりと笑って玲奈を取り巻いた。
「い、いや。やめて……」
玲奈の懇願が陵辱の始まりの合図となった。おぞましき禍々しき蛇のごとき影は玲奈に絡みついた。その白い可憐な腕はとらえられて床に押しつけられた。瑞々しい足は無惨に蛙が如き姿に開かれた。
身じろぎする度に玲奈の肌に冷たい汗の粒が浮かんだ。湿った呼吸が耳障りなほど響いた。
玲奈がいくら拒んでも、拒んでも……力を込めるほど腕は強く抑えつけられた。肉体は好きなように捻じ曲げられた。
まるで儀式に捧げられる供物のごとく玲奈は床の上に転がされた。その肢体は無残に晒された。
顔、口、胸部、下腹部、いたるところに闇に脈打つ異形の象徴が打ち込まれた。
男たちの指、肘、足、怒張――あらゆる部位が玲奈の皮膚に痕跡を残していった。
時おり漏れるかすれる悲鳴がその場の残虐さを増した。床に広がる涙の染みは玲奈の砕かれた心の欠片だった。
玲奈の髪は乱された。額には汗がにじんでいた。頬は涙でびしょ濡れになった。玲奈の女としての矜持は容赦なく足蹴にされた。蔑まれながら玩具のようにいいように扱われた。
「た、忠さま……、お願いします……や、やめて…… やめてください……」
玲奈は懇願し続けた。しかしその懇願は下半身の蛇たちをますます猛らせるだけだった。闇の宴はいつまでも続いた。
玲奈はぷつりと意識を失った。
パシン
玲奈の頬が激しく張られた。そしてまた意識を失った。
パシン
そんなことが幾度も繰り返された。
「忠さま?それがお前の想い人か?そいつはこんなお前を見てどう思う?」
「いひひひひ。そうじゃのう。ワシならこんな汚された女はもういらぬかな」
「まったくじゃ」
ゲラゲラゲラ
玲奈の心が踏み砕かれた。玲奈の目がカッと開かれた。そして……玲奈の身体は……ガタガタと痙攣し始めた……。
玲奈を覆い隠す禍々しき乳白の穢れの雫は玲奈の身体と心を内と外から汚した。滑った雫が腿を流れ落ちた。床にポタリと滴る音が静かな部屋にこだました。
「けっ。壊れやがったかよ」
玲奈が痙攣していた。しかしそのおぞましき行為は休むことなく続けられた。玲奈の全身の力はとうに抜けていた。もはや涙を流すことさえできなくなった抜け殻がそこにあった。
時折指先が微かに震えた。それだけが玲奈の微かな生命の残り火がまだ灯っていることを示していた。
「玲奈姉っ!いやあああはああ!」
「やめてください!お願いします!やめてください!」
剣奈は叫び続けた。しかしそれは心地よい調べとしてむしろ彼らの意識をさらに禍々しいものに変えていた。
剣奈の悲痛な叫びはまるで祭り囃子のようだった。剣奈の必死の訴えや懇願は彼らにとっては宴に響く三味線の音に過ぎなかった。それは夜の闇の中、淫靡な残酷さをより一層際立たせただけであった。その泣き声は男たちの心と身体を高ぶらせ快楽で包み込んだ。
空間が闇に閉ざされた。剣奈の声は闇に何度も反響した。その度に男たちの顔には歪な愉悦が現れた。
誰も救い主はあらわれなかった。ただ二人の少女の絶望、そして男たちの肉欲が渦を巻いていた。
「ははっ、今度は妹が泣き叫んでるぞ」
「面白いな。どちらが先に壊れるかやってみるか」
「ほら、お前の姉様が苦しんでるぞ?もっと必死で泣け。訴えてみろ。そしたら儂らも人の子じゃ。ほだされて手を休めるかもしれんぞ」
「そうじゃ。わしらとて鬼じゃないからの。いや、むしろ優しき善良な若人よ」
「そうじゃのう。お前の姉様はしんどそうじゃ。そろそろ休ませてやるかの」
「ありがとうございます。ありがとうございます」
「その懇願聞き入れようぞ。じゃがの。ただというわけにもゆかぬ」
「妹よ。お主が身代わりになるならの」
剣奈は無残な姿になった玲奈をちらりと見つめた。男たちの目は残虐に次の標的をとらえていた。
男の低い声が部屋の隅々まで響き渡った。空気は澱んでいた。床に染み込んだ汗と涙、淫靡な白い香。淫虐の名残は入り混じり不快な湿っぽさで部屋を包んだ。
剣奈の肩は震えた。口元を噛んだ。どんなに叫んでも、どれほど懇願しても、誰も聞いてくれなかった。そして今度はその毒牙がこちらに向けられていた。
剣奈の心を絶望が支配した。
床には玲奈の髪が白く濡れ汚され広がっていた。乱雑に破り捨てられた布切れが散らばっていた。玲奈の指は血色を失って真っ青になっていた。どれもがこの無惨な宴の証だった。
ヒヒヒヒヒ
男たちは、互いの間に不気味な笑い声を交わしていた。最下層の遊女のように、いやそれ以下に扱われ、誇りも感情も砕かれた愛しき姉。その惨状に誰も憐憫を覚えなかった。夜はますます深く濃くなっていった。
静かになったその部屋で剣奈の嗚咽交じりの叫びだけが虚しく響いた。それは狭い社に反響して広がった。男たちの言葉はなおも剣奈を責め、期待と絶望を反芻させた。
「さあどうするのかな?お前が身代わりになるなら姉はもういらぬ」
「おめえも姉様のようになりたくなければ、わしらの機嫌を損ねぬよう大人しくするのだな」
「まあ妹の泣き顔も一興よ。たっぷりと見せてくれよ。姉と並べて見比べようじゃねえか」
「ははは。そりゃいい」
茶化し揶揄する声音だった。男たちの嗜虐的な笑いの中、剣奈は己の小ささと痛ましさに身をすくめた。
灯火の明かりが床にぼんやりと滲んだ。空気はますます重くなった。玲奈は虚ろな目のまま、薄く開いた唇から乾いた息を吐き続けていた。意識をかすかに漂わせるだけの姿は、もはや人間という感じではなかった。汚され、捨てられた人形のようだった。
玲奈のその静かな絶望に剣奈は言い知れぬ怒りと悲しみを抱いた。しかしどうすることもできなかった。
夜はなお無慈悲な圧迫感となって二人の少女を責め続けた。床に広がる血のような男たちの影。重たい息遣い。淫靡な音色。全てが渦巻いた。悪夢は醒めることがなかった。
剣奈の小さな拳が何度も握りしめられた。その力なき抵抗は男たちには届かない。ただ宴の余興へと変わるのみだった。
騒めき立つ空気の中で、二人の姉妹の魂は削り取られた。その心の傷は淫靡で無残な夜に静かに沈んでいった。
やがて……
コクリ
剣奈は小さく、しかし覚悟をもって顎を引いた……