ー転移しましたー
実に充実した人生だった。
優しくも厳しい両親の元に生まれ、話の合う友人と出会った。
容姿も一般的、性格も成績もそれなり。
良さげな高校に入学して、先生ガチャも割と当たりを引いて、斜め前の席にいる友人と話す毎日だった。
別に引きこもりじゃないし、人生に不満もない。
なのに…
なんでこんなことになったのだ。
「おいココ何処だよ!!!」
「うちの子どうしちゃったのよ!?」
***
数時間前、自宅にて。
高校に行ったため疲れた体。
そのままベットにダイブしてしまえば、眠くなるのは当たり前。
それは私も例外ではなく、ものの見事に爆睡をかました。
ふと目を開けると、優しいオレンジ色が目に入った。
壁だろうか。木のような材質をしている。
次の瞬間には咳込み、目の前には生暖かく赤いものが。
「うぇぇぇ!?血じゃん!」
思わず思いっきり叫ぶ。
そーいえば、喉元がヒリヒリするような…
「ちょっと大丈夫!?
アオイ、しっかりして!」
大きな声で駆け寄ってきたのは、30代くらいの女性。
多分母親だろうか。
[カイセキ中
女性ーアナタの母親
だと確認できましタ
プログラム、アップデート…
アップデート、完了
脳内のキャパをオーバーしましタ
イチド、視覚データを切断しまス]
ん?誰??
そう思いはするものの、いつの間にか前が見えなくなっていた。
おいおい、視覚データって私のかよ。
許可なく切断しないで貰えます!?
しかし過ぎたことを怒っても仕方ない。
それに、誰かに抱えられて移動しているような気がする。
私を抱えているのは、十中八九母親だと思うけれど。
とりあえずはこの流れに身を任せ、目を瞑った。
…まあ瞑らなくとも真っ暗だから寝れるのだが。
***
次に目が覚めると、そこは病院。
視覚も戻っていたが、やはり喉元には違和感がある。
当たりを見回すと人の気配がない。
ここには誰もいないようだ。
丁度いいな、私の視覚を切断してきた奴と話したいし。
「ちょっと、今出てこれる?」
[大丈夫ですヨ
どうされましたカ]
「アンタ、誰?」
[私は、アナタの中に存在するAIのようなものでス
アナタを転移させたのも私でス
なにか、必要なスキルはありますか?]
「情報量多いなぁ…
スキル?とやらは何??」
[アナタの使える能力でス
スキル以外に、MPを使うことで使用できる“魔法“もありますヨ]
説明して貰った上で言うのも何だが、全然分からん。
MPって何?ドラ〇エ的な?
くっそ、こんなことなら前世でRPGゲームやっときゃ良かった…!
「分かんないからテキトーに選んどいて~」
この選択は後々成功するかもしれないし、いんじゃね。
まあ今私が選ぶより、この……
名前なんだろ。まいっか。
……が選んだ方が実用的だろう。
とりあえずはこれでいいか。
そう思うと同時に、また視界が眩む。
「あっ、やらかした」と思うが、その時にはベットに頭からダイブしていた。