表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

たばこの華

作者: 生方ツツジ

今日、花瓶にタバコ盛った。

明日それを食べよう。

次の日は、また盛ろう。

その次の日は、それに火をつけよう。

その次の日は その次の日は

そのまた次の日は

そのまた次の日は

そのまた次の日は



だけど、今日死のう。



中学生の時、先輩から渡された一本のたばこ。

葛藤を繰り返し火をつけた。

咽せる程の汚染された空気が肺を満たす感覚よりも先に大人になった感覚を感じた。


高校の時、学校の帰り道

カバンの奥からタバコの箱を取り出して、胸ポケットに刺した。

これが大人の勲章だと思ってた。だから、子どもを演じるのをやめる為に刺した。


大学の時、周りがみんな自分本位に口から煙を出していた。法律上では、吸える年齢に達していた。だけど、誰よりも早くこれの苦さを知っていた事に優越感を感じた。

だけど、煙草は吸えても野菜は嫌いになった。





真っ当な人間ってなんだろう?

他人の正義ってなんだろう?

自分の役目ってなんだろう?

自分ってなんだろう?

そんなものを全て白い有害な煙と共に吐き出す。


働くってなんだろう?

倫理ってなんだろう?

法律ってなんだろう?

ルールってなんだろう?

そうゆう単純な事を呑み込んで、火をつけてそんなの燃やせないかなってかんがえた。


知らない女と同じ部屋?

知らない女と同じベッドの中?

知らない女のシーツで隠す裸?

キスは自分の知っている汚い味がした。


咳き込む子ども?

やめろと言う妻?

同じ家 外に出る事?

冷たい空気の下、それでも出ないと行けない。

しょうがないって思う空気?


黄ばむ歯

黒くなる肺

赤くなる血管

そんなの承知の上での悪態。

それを飛せない事実。


ベッドの柔らかさ

優しい若い女

厳しい白衣の男

優しくなった女房

怪訝な目で見る子供達

どうしよもないやるせない自分


死にたくない

死ぬのか

やっぱり死にたくない

もう無理か

どうにかできないのか

そう都合のいい事なんて起こることはないよな

いや、子供達が心配だ

一緒に守ると約束した女が心配だ

だけど

ごめん

俺明日死ぬみたいだ。



死ぬ前に夢を見た。

黒い部屋の真ん中の机の上に山積みの煙草と花瓶が置かれている。

最後に一本吸うかと思った。

火がつけられない。ライターがない。

あるのは煙草と花瓶だけ。

暇だった。

ただ、暇だった。

最初は、ジェンガをして楽しむ。それも飽きてしまった。

だから、煙草を綺麗に花束にしてやろうと思った。

まず、底の方にたばこを綺麗に詰める。

罪悪を感じる。詰まるたばこはただ怖かった。

だけど、きもちよかった。

次に、花瓶から出てくるように周りに絶妙なバランスで並べていく。

精神力と忍耐力がすり減り集中は灰燼になって消える寸前で出来上がった。

最後に、中を作る事にした。

周りのバランスを崩さないようにそして綺麗と思うようにおいていく。

綺麗にキレイにきれいに置いていく。


できた。

タバコの白一色で満たされた花瓶はどうにも不安を煽ってくる。

すると、机から何が落ちていった気がした。

目線を下すと一本のマッチが入ったマッチ箱があった。

それを手に取って、欲望に呑み込まれそうになる。ただ、一本しか入っていない吸えても一本なら、


マッチをマッチ箱の側面に当てて、手にスナップを効かせると、はたまた先端からゆらゆらとした火がまとわりつく。

それを、ポーンと花瓶の中に入れた。

火は炎に変わり部屋は真っ白に充満されていく。

あらかじめ一本花束から取っていた物を口に咥えて飲み込んだ。


炎は死にかけていき、真っ白な空気の中

ゴクッと喉を鳴らして綺麗に煙草を胃まで送った。

炎の音は消えて死んだ。

心臓の音が止まって死んだ。

沈黙が人を殺した。


そんな夢を見た。

真っ白な天井、真っ白のベッドの中

ピーと耳元で響く目が重たくなって暗闇の中

慌ただしくなる周りに気にしないで私の灯火を吹き消した。






白くそしては黒く

そこに何かがあって何にもない

聞こえそうで聞こえない

触れそうで触れない

奥行きがありそうで狭い

そんな空間の真ん中で目を閉じていた。

誰かが言った。

ー死後の世界ってあるのかな?ー

ー輪廻転生ってあるのかな?ー

ー生きてるってなんだろうか?ー


答えはそこにはなく探し続けて息を止める。

息を吹き返して考える。

また、息が止まる。




目を覚ますと、知っている部屋の中で朝を待つ。


14の時の部屋に戻ってた。

体もその時のままだった。

その時の習慣のままに学校に行き、部活をやって帰ろうとした。

だけど、部活の先輩に呼び止められてついていく。

裏の公園で先輩達が点々と小さな光を灯して口から煙を出していた。

夢を見てるようだった。

あの時の未成年の過ちを見ていた。

ーなぁ吸ってみるかー

一本のそれを差し出した。



火を起こして、たばこに移した。

そして、

すぅーー

          はぁ〜〜

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ