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宴の席で

炎嘉は、最上位以外が出て行ったのを見送ってから、さっさと決めてあった事を他の王達に報告した。

「義心と嘉張が調べて参っておった通りの宮が自立を断念しておったから、事前に言うておった通りに告知しよう。それより、高峰の皇女のことぞ。志心が迷惑しておって蒼の所に厄介になっておるから、早めに進めたい。会合では三番目だけの言及だったが、この際二番目もと考えておる。」

公明が、手元に配られた書を見下ろして、言った。

「…その前に、傘下を持つのはかなりの手腕が必要であるし、我も王座に就いてからその面倒さを痛感した次第。財力だけでは賄えぬこともあろうが、大丈夫なのだろうかと案じるが。」

確かにそれはそうだ。

炎嘉は、答えた。

「分かっておる。しかしこちらは一つの宮の規模が小さいものが乱立しておるから、数があってもそうでもないのだ。面倒そうな大きさのものは、塔矢の所にいれておる。塔矢は我の血筋であるから、かなり優秀なのだ。恐らくやりおるだろう。後は我らが補佐するゆえな。」

公明は、まだ納得していないようだったが、頷く。

思えば公明も、最初はいろいろと見誤って大変に苦労したのだ。

公明の傘下の甲斐は、元は翠明たちと同じように5つの傘下を抱える宮だったが、あまりにも王らしくない王で、あの頃の公明は、中央の宮を守るために、甲斐を抱き込んでその傘下の宮の兵力を、自分のものにしようとした。

まだ若かったので短絡的に考えてしまったのだが、傘下の世話というのは思った以上に大変で、初めてであった公明には、それは試行錯誤を繰り返し、そうして戻って来た父親の公青に助けられて何とか宮を回した過去がある。

なので、傘下を持つというのが、甘くはないのを知っているのだ。

いくら炎嘉の血筋と言われても、自分だって公青の血筋だったのに、という想いがあるのだ。

維心が、言った。

「公明が言うのは道理よ。だが、こうするよりない。吉賀など王として宮を持つのは問題ないが、傘下まで回して行けるような気概がある王ではない。だが、妃の那海が月の眷属で大変に優秀ぞ。あれが何とかするゆえ、あの宮は大丈夫だろうと踏んだのだ。そして、陸は旭が居る。旭も、蝦夷を一人で回しておるから、中にはたくさんの小さな宮々があるのだ。知らぬ事は妃の愛羅か、旭に聞けば事足りる。塔矢は今、炎嘉が言うたように臣下まで現在、自立しておって優秀であるからあやつのことは案じておらぬ。一番案じられるのは涼弥であるが…、あれは、これからであるから。宮を立て直しさえできたら、今より優秀になっておるだろう。そうでなかったらまた考えたら良い。そういうことぞ。」

公明は、やっと納得したのか、維心の目を見て頷いた。

志心が、言った。

「で、精査をどうするのだ。また誰か指定して調べさせるのか?」

炎嘉が、頷く。

「今回は全て龍に任せるつもりよ。というのも、面倒な気を持つ奴らも混じっておるから、そこは義心が一番優秀であろうし、対応を任せた方が良いだろうと思うてな。維心、引き受けてくれるの?」

維心は、軽く炎嘉を睨んでから、言った。

「何ぞ、支援の事といい、勝手に決めよって。まあ良いわ。義心と鵬に行かせる。先に高峰の所を見て参れと申す。志心は、それが終わるまでは蒼の所に居よ。あそこが一番良いわ。」

志心は、頷く。

「そうさせてもらう。月の宮への今回の会合の報告は我がするわ。とにかく、始末できそうならさっさとして来てもらえるか。」

それには、翠明が言った。

「始末とて、軍神が勝手に皇女を殺せるはずはあるまいが。いくら何でも、維心殿が最初からやれと命じておったらいざ知らず、離縁されて悲しんでおるだけで斬られるなど哀れぞ。」

志心は、翠明をジトッとした目で睨んだ。

「あのな。だったら主、あの気の側へ行ってみよ。誠に面倒なのだ、何か分からぬが、胸騒ぎのようなものがして、嫌な予感が拭えぬで。面倒で鬱陶しいことこの上ないのだからの。」

炎嘉が、手を振った。

「ああ分かった分かった、とにかく義心に見て来させて早いところ維心に警告してもらおうぞ。そうしたら、高峰は絶対に無視できぬからの。」

維心は、頷いた。

「明日から行かせる。まずは高峰の宮から。とはいえ、三番目は今29、二番目は10。公明と翠明、それに樹伊は良いとして7か。一日二日で終わるの。どうする、終わったら集まるか。下位のように適当ではすまぬだろう?志心が月の宮なら、我らも月の宮へ一度参っても良いがの。」

焔が、頷いた。

「だったら終わったら連絡をくれたら予定を空けて参るわ。そうしようぞ。」

維心は、頷いた。

「ではそのように。」と、高彰を見た。「して高彰よ。もう一人の面倒な気の主は、主の宮の隣りへと移動したようだの。清の所へ帰っておるのだろう?」

高彰は、頷いた。

「は。あれから様子を見ておりますが、志心殿が言うように確かに面倒な気。傍に来ると余計にそう思うのか、それとも大きくなっておるのか分からぬのですが、質が悪いように思いまする。霧ではないのですが、瘴気と言えばそうで。ただ、女神であるのでそこまで強くないので…それでも、見逃せぬようになって来ておりますな。」

箔炎が、紙を見下ろしながら言った。

「…清の妹だったの。あやつは、此度は自立を断念しておるな。ということは、もう日の目を見ることもあるまい。陸の傘下になるようだが…余計に遺恨が膨らむとかないのか。陸の結界内に入るということであろう?」

炎嘉が、言った。

「だが、そうするよりないのよ。領地がちょうど丸くなっていいのは、この形でな。吉賀でも良かったが、吉賀にこれ以上負担を掛けたくないゆえ、数を減らしたので陸の方へ入れる事になったのだ。高彰も見ておるし、面倒は起こらぬかと思うて。」

高彰は、言った。

「ですが、表立ってこちらが知っておることは清に警告しておきまする。そして、こちらがそれを警戒しておることも。そうしたら、あれも放置はできぬでしょうし、そこから様子見ということで。」

炎嘉は、ため息をついた。

「腐ったものは早めに取り除いた方がいろいろ無くて良いのだが、それは許される事でも無いしな。昔が懐かしいわ。面倒だと思うたらさっさと処分しておったのに。今は太平であるから、下手なことは出来ぬ。」と、立ち上がった。「宴の席へ参るか。あれらも待っておるだろう。早う誰が誰の傘下になるのか、教えてやらねばの。」

維心が、頷いて立ち上がる。

「参ろうぞ。ついでに二番目だけでも我が話を聞いておいても良いがなあ。」

焔が、立ち上がりながらはあ?という顔をした。

「主が直接?やめておけ、どうせびくびくして読み取れぬわ。だったら炎嘉が良いぞ、あれなら相手が油断するゆえ、酒の席だしよう話すのではないのか。」

炎嘉が、ブンブンと首を振った。

「もう、本日はこれ以上しゃべりとうない。会合でも我が話しっぱなしではないか。たまには誰か代わらぬか、我ばっかり!もう疲れた。」

言われてみたらそうだ。

皆思ったが、炎嘉が進行するのが普通になってしまっているのだから仕方がない。

それを維心に求めることは、こんな感じなのでできないし、最上位の二位が鳥なのだから、仕方ないだろう。

皆思っていたが、何も言わずに宴の大広間へと、向かったのだった。


歓談の声が聴こえていたのだが、維心達最上位の王達が大広間に入って来たのを見ると、シンと静まり返った。

皆が檀上の席に座る中、炎嘉だけがうんざりした顔をしながら、立ったまま言った。

「ここに、それぞれの宮へと振り分ける、宮が決まった。吉賀、塔矢、陸、こちらへ参れ。」

どうやら炎嘉は、本当にもう、話すのが面倒で仕方がないらしい。

呼ばれた三人は、炎嘉がそんな感じだが、行かないわけにはいかないので、壇の前まで行って、頭を下げた。

炎嘉は、並んだ三人に、一枚ずつ紙を手渡した。

「そら。主らが傘下とする宮の王の名を書いておる。領地の境界は、下の図面の通り。四カ月後には結界を張るのだぞ。領地を見回り、宮の位置を変えたいと考えたら我らが手を貸してやるゆえ、そうせよ。それから、塔矢、主もな。主の場合は一から建てねばならぬだろうし、早う場所を決めよ。我が宮から軍神を送る。あれらならひと月ほどで建てよるわ。さ、席へ戻って己の新しい傘下の王を集めて、話すが良い。この宴の席で、いろいろ次の話し合いの日程やらを決めて帰って、宮へと呼んで始めるのだ。分からぬことは、問い合わせて参れば良いから。分かったの。」と、父親のように言うと、固唾を飲んで見ている、皆を見た。「ちなみに申す。190の宮を、王の能力と領地の兼ね合いを見て、吉賀10、陸30、塔矢30。まあ、領地を見ればわかるわ。大きいのと小さいのが綺麗に収まるように考えてある。次の会合で皆に新しい境界の絵図を配る。とうことであるから、そのようにな。で、残った120の宮であるが、これらの宮とは離れておるし、点在しておるから、これから近い宮の王で二番目、三番目の序列の王達を精査してから振り分けは決める事にした。ま、決まるまでは我らが引き続き支援を送るゆえ、案じる事は無い。以上よ。」

炎嘉は、予め皆で話し合って決めていた事を、一気にまくし立てるように言うだけ言うとスッと座った。

…気持ちは分かるが、あれでは面食らってしもうたのではないのか。

最上位の王達はそう思って聞いていたが、自分達が説明しろと言われたら面倒なので、黙っていた。

三人は、戸惑った顔をしていたが、命じられたのだから仕方がない。

下位の席へと戻って行き、早速に塔矢が自分に渡された紙を見ながら、自分の傘下になる王達を呼び集めている。

それを見て、吉賀も陸も、自分達もやらねばと思ったのか、同じように名を呼んで集めていた。

…最初は誰でも手探りよ。

維心は、それを見ながら思い、杯を傾けていたのだった。

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