プロローグ
海歴二百六十六年、世界地図の右下に位置するシュルツガルト公国は、北西に面するルシェナ王国との間で戦いを繰り広げていた。百万を抱える人口を抱える大国ルシェナを相手に、シュルツガルトは大いに苦戦を強いられる。
その圧倒的不利を打ち砕いたのが、十年ほど前に開発された術法、《リンク》だ。
どこかの酔狂な魔術師が生み出したこの術は、二人の人間の間に魂の契約を結ばせる。不死者が守護者に己の魂を預けることで、彼らは只人ではなくなるのだ。
不死者はどれだけひどい傷を負っても死ぬことはない。
___守護者が命を落とさない限りは。
守護者が命を失ったとき、どんな健康体であろうとも、不死者は魂を道連れにされる。
守護者が二倍のリスクを負うことで、仮初めの不死身の戦士は完成された。
この守護者たちを後部戦線に置き、不死者のみに戦わせることでシュルツガルトは人員の損耗を回避し、圧倒的不利を覆してのけたのだ。
だが、ある日ルシェナの軍に現れた、《リンク》を破壊し、不死者をも殺す能力をもつ悪魔と呼ばれる兵士たちが、戦況を大きく変える。
彼らがなぜそんな力を持っているのか、誰にも説明がつけられない。
ただし、共通しているのは、彼らが皆、黒髪赤眼の風貌をしていること。
悪魔の登場によって《リンク》の加護を失ったシュルツガルトは、事実上敗北同然の休戦協定を結ばされ、長くルシェナの圧政に耐え忍んでいた。
わずかに一年前、黒髪の、あかいろの眼の少年が、シュルツガルトの兵団の門を叩くまでは。
第一章開始!完結まで駆け抜けていきたいと思います。
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