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1:〝真実〟の設定――甘露をめぐる歴史


《 注意 》

あくまで初期設定なので、変更する可能性もありますが、下記は様々な〝真実〟の中でも、この物語全体に関わる非常に重大なネタバレとなります。

本編の方でも、世界樹や甘露についてよく触れるようになったため(あと、本編いつ終わるか分からないくらい長いので……。)出しちゃうことにしました。てっとり早く秘密部分を知りたい場合は、読んで頂いて問題ありません。



常葉臣ときわおみたちの謎解きの歴史


「裏と表があること」「抜けている部分や言葉があること」「あえて置き換えられているか、似ている何かと間違われて伝わっている言葉・物があり得ること」「曖昧なところに、歪曲や秘密が隠されている」――


その可能性に着目して、常葉臣たちは文字通り、怪しい箇所を洗い出した。すべてに考え得る限りの意味付けをし、真実の可能性が高いものを絞り込んできた――。





◍【 月には海と陸がある――〝明〟 】

 原初の世界(太一界)は神々が住む安泰な山海と、地獄のように熱く、汚い、真水が貴重な砂漠の地で成り立っていた。

 呼吸はできるものの、豊かな所は半ば海中のようで、穢れた重いものは沈み、清らかな軽いものは浮いた。



◍【 月に木が生えていたわけ。はじまりの花木 】

 神々は、〝月の地下水を抽出するための道具〟として〝世界最初の花木〟の生誕を喜び、得た果汁・蜜(甘露)を味わった。




◍【 とりわけ生命力(産霊ムスビ=造現力)が強い神がいるのは何故 】

 上記の〝元祖甘露〟を飲んでいた者の血筋だから。霓尾げいび(人魚)、天狐、盤猛亀神、龍、黄鶴など。ちなみに、独占した神(罪神)と彼らは別。甘露は本来、世界維持に必要な事象を体現する者=〝神〟の力と称号を認められた者が、永久不滅=〝不老不死〟のために摂取していた霊薬。

 だが、そんな世界維持の役割を放棄。なまけているにも拘らず飲み続け、あまつさえ独占しようとする神が現れた。これが後の罪神。





◍【 甘露の効果は一度の摂取では持続しない――? 】

 後の神代崩壊によって時化霊トケビから守られた空間の大半が消滅し、甘露を摂取していた神々でさえ、不老不死ではなくなった。(〝不老長寿〟ではある)

 不老不死に近い体を保っているのは、あらかじめ、甘露を大量摂取していた神(罪神)か、神代崩壊後も甘露に近いものを定期的に摂取している神(善神)のみ。(=力を維持・強化する必要がある、または、世界維持の役目を引き継ぐために摂取。天壇按主てんだんアヌスのほか多数)

 壺中天など、常盤に囲まれた強固な小天地に籠ることでも長寿を保てるが、常盤の質が悪ければ、受ける長寿の恩恵は真秀場まほろばの住民と大差ない。





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◍【 真実の伝承 】簡潔に語ると……?

※《 》部分が伏せられている事柄です。本編が完結しない場合、明かされないままになる可能性があるので、ここで語ってしまいます。



 《 砂漠の地上に住んでいた 》ある青年が〝天梯〟《 翼の生えた蛇・植物 》を使い、月に昇る。地上にも平等の命をもたらしたかった。そこで甘露を神々から盗もうとした。

 《 この時、青年の行いを善と主張した神と、悪と主張した神、分からないと答えた神がいた 》


 青年は、願いを叶えると同時に罰を受けることになる。地上にも分けるという約束で、青年は手ずからその分の甘露を花木から作り続けた。《 罰として永遠にこの労働をこなすため、人間ではじめてこの甘露を口にして不死身にまでなった。》後に月夜神つくよみ造酔水つくよみの神 》と言われる。


 だが、ほとんどを裏で一部の神々《 青年の行いを悪と主張した神々 》が独占。地上に行き渡っていなかった甘露は人々の間で奪い合いとなり、花木は月の地下水を吸いつくして枯れた。


 月夜神の悲しみにより、月は砕け散った。

 楽園を失った善神と月夜神を哀れに思った現化畵僊げんげがせんが、新たな世界(四生界)を作り上げ、月夜神と花木の神を掛け合わせた心象から、夜覇王樹セレイアスランサ(元祖世界樹)を生んだ。




◍【 世界初の花木が枯れた場所は、月――ではない? 】

 世界初の花木が枯れた場所は、あくまでも〝砂漠のような場所〟である。





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◍【 真実 】何があったか、さらに詳しく



神代初期(太一界)


 世界初の花木は月の地下水を吸いつくして枯れ、月夜神の悲しみにより、月は砕け散った。と伝わってきたが――、実は、花木は水を吸いつくした後も枯れなかった。その水を味わってきた神の一柱(花神・絮花(じょか))として、不死身を得ていたからだ。

 

 月の地下水自体が甘露ではなく、月の地盤成分・地下水・それを吸収する花木があって〝元祖甘露〟は作られていた。


 青年と地上の人々を哀れに思った絮花は、「私を甘露に代わる霊薬とすればよい」と青年に提案。約束を破り、甘露を独占した悪神たちに罰を与えるため、絮花は月から足を抜き、砕いて、神々だけの楽園に終焉をもたらした。




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 現化畵僊が、欠けた月を丸く整形し、新たな月に。

 善神らのため、盤猛亀神と協力し、月の欠片を集め、盤臺峰ばんだいほうを造った。

 罪神を封じる黄塵獄こうじんごくは、元地上・砂漠だった部分を多く使って造った。


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神代中期(四生界・前期)


 この時、人間は罪神らに代わり、善神と共存する存在となった。

 罪神を拘束する楔として地獄に根を張り直した絮花は、青年と共同で、伐っても伐っても復活する自らを使い、人々のために薬を作ったが、いざ人々に飲ませてみたところ、月の地下水を吸い上げていた頃の自分が為した甘露とは、効能に違いが生じたことが判明する。


 月の水ではなく、罪神らの血肉を糧として吸い取ることになった絮花が為す甘露は、嫌な事を忘れられ、美味である反面、依存性があって、人間には、怒りと欲望と愚かさ(三毒)が増すだけの毒でしかないことが分かった。=悪い酔いの神酒(悪甘露。罪神らの呪詛を含んだ)。人々はすっかりこれに取りつかれてしまい、絮花を独占しようと争うようになった。


 絮花自身も、この三毒に当てられないよう、己を律する必要性が生じたが、あくまで地獄に根を張りながらも取り澄まして、罪神との違いを知らしめ、むしろ聖樹となって見せた。

 だが、悲劇的なことに、人間たちは絮花を襲撃。戦火によって絮花の本体である花木は燃えてしまったが、不死身ゆえにか、青年が涙を落とすと火の中から涙を受け止める不思議な高坏のような葉が生え、炎のような花が咲き、新たな神に生まれ変わる。息子とも言われた(=夜覇王樹神。つまり、現化畵僊が夜覇王樹を生み出したという伝承は、正確ではないことになる)






神代後期(四生界・後期)


 現化畵僊は結局、盤臺峰ばんだいほうとは接触できない雲の下、黄塵獄こうじんごくとの中間に人間の住処(蘆寨処ろさいと)を位置させ、共存を断念した。

 青年は自責の念から、以来、善き神々のために、この悪甘露の浄化に取り組むことを誓った。黄塵獄で苦しみながらも、元祖甘露をたらふく摂取していた罪神たちはしぶとい。彼らと半永久的に戦える力を維持し、悪い心を持つ人間を正してもらうためだ。青年は「造酔水つくよみの神」という神号を与えられた。


 一方、夜覇王樹神は前身・絮花の二の轍を踏むわけにいかない。

 蘆寨処の人間が根を切って悪甘露を飲まないよう、防御と、別の飲み水を与える方法として、現化畵僊が棘をまとわせた。棘は夜露を生み出した。


 造酔水つくよみの神はしばらくして、夜覇王樹が成す悪甘露を浄める方法を思いつく。ある時、夜覇王樹の誕生とともに炎の中から生まれた花(=〝ラスア〟)が泥中にあり、泥水を吸っているはずなのに、美しいことに気づいた。


 まさに、絮花と夜覇王樹の生き様を彷彿とさせる花だ。試しにその高坏のごとき葉の中心に穴をあけ、悪甘露を注ぎ入れて漉すと、見事にかつての甘露に近い清らかなものが出来上がる。こうして悪甘露を新甘露に作り替えることに成功した。


 造酔水の神はこの新甘露を善神(後の天神ら)にふるまった。また、天海を支える高坏岩を通して濾過したものを八雲原に撒いて、悪しきものの侵入を阻む術の一つとした。

 だが、夜覇王樹自身は地獄に根を張っている以上、相変わらず三毒が含まれた血肉を糧として吸い、悪甘露を身に巡らせるしかないままだった――。





神代末期(四生界・末期)


 夜覇王樹が四生界の世界樹の務めを担うようになって幾星霜。

 罪神の進軍を共に阻んできた龍王に、異変が起こり始める。

 龍族は唯一、雲下との交流が可能で、先遣隊のような役割を担っていた。黄塵獄での動きと、蘆寨処の人々の様子を龍族伝いに伺ってきた雲上の神々は、人間が虐げられている現状を目の当たりにし、龍王が心を痛めていることを知る。



 悪甘露に呑まれ、絮花を焼き殺した罰として、あるいは、二度と甘露を得る機会がないよう雲下に住まわせてきたわけだが、人間が愚かになったそもそもの原因は、悪甘露を口にしたから。しかもそれは、絮花と夜覇王樹への呪詛(=地獄に封じられた罪神による謀。人間を手駒に染めて叶えた復讐)であったとも言える。


 

 今はもう、悪甘露を新甘露に作り替えることが出来ている。それを与え、人間を盤臺峰へ上げて、かつて抱いた時の共有(=共存)という理想を叶えるべきではないかという意見が出る一方、悪甘露の三毒はそう簡単に消えない。親から子へ受け継がれているだろうから、慎重に検討すべきという意見が出る。



 同じころ、八雲原を越えてこようとする禍等まがらとの攻防で、夜覇王樹は疲弊し始めていた。我が身に巡る罪神らの呪詛(三毒)に呑まれてしまうのではないかという不安とも人知れず戦っていた時、葦陽あしひという人間の娘と出会う。

 彼女は世界で初めて起こった竜巻に遭遇し、不本意に雲上への越境を犯してしまった人間だった。(〝世界初の結び巫女〟)



 造酔水の神は、黄塵獄から糧を得ている限り、三毒と闘い続けなければならない夜覇王樹の苦悩を知り、あらためて己の罪深さをかみしめていた。

 人間にして唯一、元祖甘露を飲み、不死となった。それはあくまで万民に平等の命をもたらす労働を背負うためだったが、結果として自分は多くの人間を毒しただけ。慈悲を向けてくれた絮花を死に追いやり、夜覇王樹に生まれ変わった後も、聖樹でいなければならない苦しみに縛り付けている。



 結論――、

 造酔水の神は夜覇王樹が龍王に加担し、それに乗じて四生界の構造・天地の境の崩壊、ひいては神代を終わらせることを看過した。

 単に、世界樹の務めから解放されたかっただけでなく、人間の葦陽のことを愛したのが決め手だとすれば、余計に責められないと思った。



 すべての元凶たる人間のことを、恨む気持ちがないほうがおかしかった。だが、夜覇王樹も最期に望んだのは、人間と死を分かち合うこと。

 だとすれば、自分がその夢を追い続けないわけにはいかない。造酔水の神は自分への罰として、また、すべてを今に至らせた責任を負うため、罪神との闘いが終わるその時まで、天神(現在の破軍)のために甘露に準ずる霊薬となり得るものを、求め続けることにした――。





化錯界かさっかい(当代)


 月の水はもう無いので、元祖甘露ももう無い。夜覇王樹も、高坏岩ももう存在しないので、悪甘露も無ければ、それを濾過して為した新甘露(第二の甘露)も当然のこと無い。


 だが、破軍星神府を機能させ続けるため、第三の甘露、第四の甘露を編み出し続けると造酔水の神は誓っている。元祖甘露に匹敵する効能を持つ霊薬は当代にないが、月の地盤を多く含んだ常磐の多いうてなのような地では、第三の甘露が生じ得る。造酔神つくよみは各世界を旅して回り、その可能性の種を拾い集めてきた。

 この造酔神、当代も生きていて、現在は〝月凊隠げっせいいん〟と名乗っている――。





(※)ベースとしている神話は『呉剛伐桂』・『盤古』です。

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