5:神代崩壊後 新世界樹の樹立・国生み
◍【 穹海山原の歴史(時)と、界境の誕生 】
産霊の強い盤臺峰の一部を核として、時化霊をふんだんに孕んだ塵界の土を交えながらも、世界は四つの圏に形を留めた。それまでの力関係や均衡が失われた、まったく新たな天地に再生を遂げ、各世界各国で夜覇王樹を台木とし、新世界樹の活着・地盤の再形成・国生みが試みられた。
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『古い鐘楼は役目を終え、音色の違う新しい鐘楼が、これらの大陸に出現した』
『一つだった鐘の音――共有されていた時間が、各大陸で次第に異なっていき、それはつまり、文化の多様化と、歴史の違いに発展していった』
『吼えることを好んだ竜の脈持の中には、この〝鐘〟に執着し、時を知らせる務めを担ったり、人原の支配者――王となって現れるものがあった。また朝天吼(望天吼)のように天地の通信役――巫女となるものもいた』
――【 ちなみに 】―――
●夜覇王樹神、善狐、霓尾などの末裔は、各世界・各地の新たな天柱が、再び大地を不毛とし、そこに暮らす生き物の命を削ぐことがないよう、按主として住み着き、己の強い生命力を養分として供給、維持管理に当てる役目を担った。
●夜覇王樹の民は、羅羽摩龍王一族と同じ目的(人間との共存)のため戦ったが、神代崩壊に乗じ、神々との戦に興じた好戦的な破壊神の末裔――「萼国夜叉」と呼ばれ、八雲原の戦い(人間と交わり・神威を失っていく是非が問われた内紛)を境に、 “花人” と呼ばれるようになった。
●穹海山原は産霊を放つ各天柱を楔とし、無形となるまで分解する時化霊の力と拮抗状態を保つことで、現在も隔てられ、維持されている。
離れているだけで同じ空間に存在している惑星や対岸のように見えるが、時化霊に取り囲まれているため、渡航は困難極まりない。
●〝吼ほえることを好んだ竜の脈持〟とは。
竜生九子の一、蒲牢。竜の子は九匹いて、兄弟でも性格が異なり、親のような竜にはなれなかったが、それぞれに合った場所で各々の活躍を見せたという。
蒲牢はその性格から、梵鐘の上部に取り付き、音を大きく響かせるのを手伝うとされ、時計がらみのものに装飾された。ゼンマイ時計の「竜頭」とは元来、釣り鐘をつるす綱のこと。
●龍牙は蓮暁寺家の血筋で、元来は龍王の能力であった破暁の瞳(千里眼)を覚醒させており、「暁(明か時)を告げる者」とも言われている。
ネタバレとなるが、蘆那珠王国の政治を操っている悪龍――「時守の主」の本名は「竜頭」である。
●神代終焉を象徴する事柄
その1――清浄界(常世の盤臺峰)と塵界(蘆寨処・黄塵獄)の交雑。二種が混ざり合った新世界(化錯界)が誕生し、穢れないゆえの浮力・飛行能力と、半永久的生命を維持できる天界由来の神霊が激減した。
その2――人間の暮らしが発展し、〝人原〟が形成された。
〔参考資料〕
竜生九子 - Wikipedia
コウ (霊獣) - Wikipedia
妖狐 - Wikipedia