【8】あらすじ『仰望の星衆河は青く』
◍ 仰望の星衆河は青く…… 闇夜の光と香り
ひとりでは微光でも、集まれば仰がれる存在に
◍ 本当の俺・私が、理想・現実・周囲の期待と違いすぎる編……
( 煬闇編(下):娘になりたい大隊長 )
◍ テーマ…… “周囲、自分が望む理想とのギャップ”
無力、無能・英雄の苦悩
信用崩壊、裏切り
被害者、加害者意識の狭間
男社会・女としての本音
◍ 時間軸…… 《 十二月上旬(異界) 》
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【 あらすじ 】
【花街最上層――瓔珞院にて。睿溪・燦寿・朝灘・飛叉弥・皐月の会食&密談】
【皐月、薬漬け妓女に噛み殺されかける……。】
【警軍の狙撃部隊エース・莫十駕、投入。皐月を気に入る】
【鳥妖による襲撃事件の裏に、新たな黒同舟。やづさに次ぐ、花人の背信者?】
【痛感が鈍りまくってる皐月の正体。迫る嘉壱……】
*
当然・簡単と思われている世の中の大概は、実のところ理想で、難しかっりするものだ。
“こうなるべき” だと分かってはいても、 “そうなる” にはどうしたらいいかが、分からない。
そもそも、 “そうなることが正しい” のかも、考え出すとよく分からなくなってくる。
「気にしなければいい」のだとしても、同じこと。
本当にそれでいいのか。
気にしない自分になるには、どうしたらいいかを教えてくれ―――。
*
鴉陣の巣に閉じ込められたのを機に、紗雲が実は、摩天から召喚される飛叉弥の代行―――皐月と知った唐馬。喪ったと思っていた同胞・磨琦が皐月に助けられ、飛叉弥らにかくまわれていたことも分かり、敵意しかなかった心の内に変化が……。
撲滅したはずの魔薬・ケリゼアンが、煬闇の妓楼街を汚染している現状を打開するため、情報を共有し合ってきた警軍・八封旗営を訪れ、正式に共闘を提案する。
皐月を隊長とする花連と手を結ぶ構えの唐馬に対し、どういう風の吹きまわしかと不快感をあらわにする唯大隊長だが、飛叉弥と仕事をするよりマシと言って、とりあえずタッグを組むことには同意。
実は、数週間前から警軍を手こずらせていた謎の鳥妖による襲撃事件も、鴉陣絡みである可能性が高まっていた。
さらには黒同舟の関与も浮上。
唯らとの不仲を解消するよう、睿溪から促されていた飛叉弥も、「俺は信用されてない」などとは言っていられず、さすがに腰を上げざるを得ない事態に……。
*
英雄として仰がれていた立場から、大旱魃を機に、一転して蔑まれることとなった亡き父に対する思いをよみがえらせた唯は、皐月にその心中を見抜かれて動揺する。
「あんたが恨んできた相手って……、誰――?」
本当に飛叉弥なのか。
そうでなければ、この感情にどう決着をつけたらいいのか……。怒りや嘆きのやりどころがなくなることに気づく唯。
花人への不信感・旱魃によって生活が一変した恨みなどを原動力とし、その悪評を広めている民間団体・セイカの過激化を把握している彼女は、飛叉弥に対する悪感情の正当性について、疑問を抱きはじめる。
警軍内に裏切り者の影も浮かび上がり、「信頼」とは何処にどう生まれ、何処で消失するのか……。
仲間を信じ抜きたい思いとの葛藤を抱えた不安定な状態を、皐月に支えられながら、鴉陣を失い野放しとなった鳥妖が、都を襲撃する事態に立ち向かうことに―――。
「彪将は強いな。何を言われても平然と……いや、いつも毅然としている」
私は、ひどい娘だろうか。
不孝者だろうか――……。
民衆から罵倒される日々に耐え兼ねて、自害という最期を遂げ、母を苦労させた不甲斐ない父親の記憶を払拭しようとしてきた。
男社会で伸し上がり、それ相応の地位を得た自分を誇りに思いながら、反面、女としての人生に対する未練を抱いてもいる。
許す気になれず、人目も気になり、父の墓参りを一度もしたことがないという唯に、皐月は――……。
罪人という足かせを科しつつ、
辛い境遇から解放されたい心情が分からなくもない立場で、
世間から怒りと憎悪を向けられる者の死にも、花を手向けてきた “独特の花人” であることをにおわせる―――。
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