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2:神代 四生界
世界の民は皆かつて、常磐でできた、一つの大きな山に暮らしていた。
この岩山には大きな木が生えていた。
幹や枝、根で岩を繋ぎ、一つの山にしていた。
八雲の上には、大きな岩の杯に、塩水を満たした湖があった。
山腹から山裾のわずかな平地にひそむ人々は、曇天の下、常に天地の強大な支配力に怯えていた――。
雲海から山頂を、常世の楽園―― “盤臺峰”
争いから抜け出せない人間をふくむ猛獣が住んでいた地上を “蘆寨処”
魔物が巣くっていた谷底を “黄塵獄” と言った。
盤臺峰は陽の気にみちた清浄界。雲海に閉ざされていた下界は、陰の気に沈む塵界で、軽く清らかな魂は浮かび、重く穢れた魂は沈み、水母のように漂っていた。