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  ワード一覧

※)重要ワードの理解につながる作中シーンを、若干ですが抜粋して載せてあります。



破暁(はぎょう)の瞳(螺鈿の瞳)


 祭事的支配者――

 蓮暁寺家の花人(暁の巫女の血筋)が発現する特殊な紫眼。千里眼。

 螺鈿の光を宿す。

 覚醒させる者は、それ以前から兆候として予知夢を見るようになり、

 近い将来 “明か時(暁)を告げる” といわれている。


※)主人公(皐月・本名:龍牙)の(いみな)は「黎鳴(れいめい)」。

 双子の兄・飛叉弥の諱は「闢夜(びゃくや)」。

 千里眼は元来、龍王に受け継がれていたもの。

 主人公はこれを覚醒させているが、

 「闇しか見えない」=自分は「破滅へ先導する者・終焉を来す者」

 かもしれないと、指導者となることに不安を抱いている。





◆暁雲払龍眼〈ぎょううんふつりゅうがん〉


 神代崩壊の折り、

 天地を隔てていた八雲原(やくもばら)の雲海を一掃したという龍王の瞳術。






東天花輩(とうてんかはい)【官軍】


 神代崩壊後から東天地峰に割拠し、

 水源である天降瀧と、一帯の森を支配した原初夜叉族――夜覇王樹(セレイアス)の民は、

 八雲原の戦い以降、統治権を死守した王家勢力と、

 奪取に失敗した反勢力に分裂した。


 その後、西の地に落ちのび、

 「(むぐら)」と呼ばれるようになった反勢力に対する呼び名で、

 夜覇王樹壺(セレンディア)常葉庭(ときわば)を拓き、萼国の礎を築いた者たちの総称。

 現在、夜覇王樹壺に属している花人。






夜覇王樹壺(セレンディア)【軍事組織】


 東天花輩の花人が属す各衙門(がもん)

 (牙城とされている敷地全体=官庁街)の総称。





常葉庭(ときわば)【神官・語り部組織】

 

 花神子(はなみこ)をトップとし、

 その勤めを補佐する人間(常葉臣)たちが属す。

 (うてな)建国時、夜覇王樹壺と同時に拓かれた。




………………………………………………………………………………………………


※)以下、【萼国編】:『十六夜(いざよい)待月人(まちうど)』より1シーン抜粋。




   *



「なるほど――?」


 兵月(へいげつ)は久しぶりに感心させられて、とりあえず手元の御浸しに箸を付けた。


「むしろ、今宵だからこそ来たというわけですか。玉置様って、生まれも育ちも山猿同然のくせに、たまーに教養ありげなこと言いますよね。ほら、例の “命の恩人さん” にあげた伽名(とぎな)も…」


「そうそう!」


 (なずな)は興奮すると早口になる。忘れてはいたが、以前から強い関心を寄せていた話題であることが明らかな反応を示した。


「近頃は常葉庭でも、上層じゃ噂になっていますよ? “茅波野(ちはや)さま” と仰いました?」


「ああ、まぁ…」


 珍しく目を泳がせる貴京(ききょう)に、兵月(へいげつ)はこっそり笑った。


 伽名(とぎな)とは、常葉臣(ときわおみ)における筆名や芸名といった類いの隠し名である。

 常葉臣は萼の諸官司に配されながら、根本は皆、神官であり、花人の歴史を語り継ぐ史官でもあるのだが、書物に限らず歌舞や芸術品に託すなど、様々な方法で伝承者の務めを担ってきた。


 その昔、花人を(ぎょ)していた “王家九原主” には、それぞれお抱えの部民がいて、常葉臣の前身は彼らであると言われている。

 萼建国以降、花人の統治者が有徳の人間―― “花神子(はなみこ)” となってからは、前述の民が古より兼ねていた語り部的役割に加え、萼に仕える人間の職掌は後宮運営となり、伽名にも自ずと、女官や宮妓を連想するようになった。


 しかし、 “(とぎ)” といえば「お伽噺」だとか「夜伽」だとか、夜伽と言っても、死者に添い寝する「通夜」のことだとか、如何様にも解釈できる通り、常葉臣の務めは奥が深く、限定もされていない。

 現に神事を司る巫女などは、清浄な心身を保ちながら、少なからず産霊(ムスビ)の媒体を担ってきたもので、神殿娼婦と呼ぶ国もあるように、妓女の源流とされている。


 神域を地盤としている上、軍事的背景から築かれた萼は、あたかも生贄を欲しているかのような誤解を受けてきたのだが、誇り高く使命感に厚い花神子(はなみこ)をはじめとする常葉臣たちが、自ら持ち前の発信力で払拭に努めきてくれたお陰で、現在、伽名はそれ相応の格式を帯びるに至り、立派な印授に相当するものとなった。


 ようするに、紛れもない “美称” だ――。



「ぴったりじゃないですか~。茅花(つばな)の穂が波打つ、あの里の情景から思いついたんでしょ? 玉置様から伽名まで捻りださせるくらいだ」


「私もぜひ一度、お会いしてみたいです!」



………………………………………………………………………………………………




(むぐら)/葎上がり【賊軍・雑草育ち】


 「葎」とは荒地や野原に繁る雑草の総称。

 元来は八雲原の戦いで西の地に落ち延びた賊軍を示したが、

 次第に東天花輩に属していない花人全般を示すようになった。

 「葎上がり」とは、華冑(かちゅう)(権門)の生まれでないのに、

 夜覇王樹壺入りを果たした花人を侮辱する言葉。






花神子(はなみこ)【国王・語り部的神官のトップ】


 “花園の番人”と呼ばれる萼国の元首。

 常葉庭(ときわば)の統率者であり、

 花人を配下に従え、軍事力として動かす権限を持つ唯一の存在。

 姿を消した花神の意向と役目を代行する人間。

 花神子の役割は、

 花人の行いを見張り、歴史として伝え残すこと、

 花人と人間の架け橋となることであるため、

 彼らを兵器として乱用していいなどという権限は、本来なら有りえない。






九原(くげん)王家(正王家(せいおうけ)


 花神子が唯一絶対の支配者となる萼建国以前まで、

 夜覇王樹(セレイアス)の民(後の花人)を統率していた元祖支配階層。

 たとえば、蓮嵩(はすたか)氏・汪蓮(おうれん)氏は蓮王家を名乗っているが、

 歴史的証拠が不十分で “自称” 扱い。

 菊王家は菊嶋家説が有力。

 つまり、かつて各王座についたことがある王と同姓 “同氏族” を示す呼称。



………………………………………………………………………………………………

※)長らく封印されてきたが、後に「蓮暁寺王家の最後を飾るかもしれない者の大いなる宿題・大仕事の一つ」と題し、主人公・龍牙の決断によって “正王家論争” が掘り返され、同姓華冑の間で暗躍が活発化する。


※)蓮暁寺家は、各花王の盟主(蓮王家)を担ってきた歴史が最も確かで、最も古い蓮家である。


※)自分に後継者が生まれない未来を想定し、“次期蓮王” をはじめ、各花王の座に、お墨付きを得たい者たちが色めき立つ。

………………………………………………………………………………………………





※)以下、【萼国編】『岐梢路(きろ)の花守り』より1シーン抜粋。




   *




「いっそのこと、全部たたき割っちゃおうかなぁー、これ」


「頼むから、そういう心臓に悪い冗談は止めてくれ……」


「だって、どう考えても争いごとを生む素でしかないでしょ?」


 王家だとか王胤だとか、そもそも証がなきゃ、モヤモヤして不安だって時点でどうなの。


「モヤモヤで、よく分からない連中だから、証にこだわったりするんだろ。ひとの暗殺企んでまで」


「……。」



 間違ってはいないと思う半面、直偉(なおい)は龍牙の相変わらずな語彙力に半眼となった。


「父方の祖父である蓮宍宗珮(れんじしそうはい)さまが、そういった輩に葬られた可能性があるにも拘わらず、夜覇王樹壺(セレンディア)の分裂回避のために、うやむやにせざるを得なかったのは事実だ。すべての根源を怨む気持ちは分かるよ――?」


 (あるじ)であった麗枝(れいえ)さまとて、どれほど口惜しかったことか。自分の統治力が確かなものでありさえすれば、正王家(せいおうけ)のことで足元が揺るぐはずがないのだからと――……。


「でも、俺は正直、今回のお前の動機が仇打ちだっていうなら、止めて欲しいと思ってる」


 宗珮そうはいさまも、麗枝さまも、天からお前の身を案じているはずだ。



「仇打ち――……か。そうじゃないってことだけは、はっきり示しておかないとな」


 正王家を断定しようと言い出したのは、あくまで、蓮暁寺家の支配が終わりを迎える時のためだ。


「そんなに欲しければくれてやるよ――奥王の椅子くらい。ただし、仲良く分けあえる連中を見定めてだけどね。あとの問題は、そいつらとそうじゃない奴らで解決してくれ」


「お前は戦乱の時代を招こうとしているわけだな、ようするに……」




………………………………………………………………………………………………




火種花かしゅか


 蓮暁寺晁熾扇〈れんぎょうし・あきら・しせん〉を盟主とした、

 最後の九原王のこと。

 常葉臣伝承の国物語では、

 「天花園(てんげえん)を占拠する目的で同盟を結んだ九つの賊」

 と歪曲されている。

 蓮園をはじめとする、九種の花園を起点に戦火を広げた。

 その後、自らが着火剤とした花の呪いを受け、

 花神によって花人にされた――と伝えているため、

 「火種花」と言い表されている。


 火種花の子孫は末代に至るまで、それぞれが焼き払い、

 灰にした園の花を代々戒めとし、

 華痣(はなあざ)や姓として、受け継いでいかなければならなくなった。



 ※)八雲原の戦いを機に、世界平和のため、傭兵集団を名乗る決断をし、

 夜覇王樹壺と常葉庭の開墾((うてな)建国)に踏み切った当時の九原王

(蓮暁寺晁熾扇、以下九名=火種花)は、

 統治権を花神子に、軍権を各旆下筆頭(蓮宍家など)に委譲。

 反逆者の粛清と、先の戦の犠牲者の弔いに徹する墓守――兼、

 法の番人(監察官)となり、歴史の表舞台から消えた。

 熾扇の思いに応え、

 花人と名を変えた夜覇王樹(セレイアス)の民の行く末を記録するため、

 初代花神子を名乗ったのは篠雪(常葉主・白)に所縁の人間と思われる。






華冑(かちゅう)【貴族】


 萼建国以降、国の安寧を維持する花人の鑑として、

 忠実な姿勢を示さなければならない者たちであり、

 花人における権門の総称。

 とりわけ、表向きの軍事的支配階層――

 夜覇王樹壺(セレンディア)を牛耳ってきた権門(蓮宍家など)のこと。






華冑九家(かちゅうきゅうけ)【上流貴族】


 華冑の中の華冑。

 当代は蓮・梅・藤・桜・菖・菊・桐など。

 各時代、夜覇王樹壺において、

 最も畏れられる華痣(はなあざ)を持つ者たち。






裏華冑(うらかちゅう)【王家・王家が放つ諜報員】


 華冑のうち、

 萼建国以来、代々、監察官たる奥座衆を輩出してきた王家(裏華冑太一(たいいつ))と、

 仕えてきた旆下(はいか)における権門の総称。






闇黒壺衙門(ゼシア・ヴェルマンダ)【諜報・監察・司法機関(王家の牙城)】


 通称、奥座衆(おくざしゅう)・奥庭。

 「(ゼ)」=神代語で無・不可視の意。

 「(シア)」=自由に入れない場所の意。

 萼建国時、裏華冑で組織されて以来、脈々と続いてきた諜報・監察機関。

 その筆頭は、外交・人事を司る紫壺衙門〈シェセンシア〉や、

 刑罰を司る黒壺衙門〈ヴェルマンダ〉、

 地方監察に当たる野守(のもり)、墓地・戸籍管理を担う石蒜壺(せきさんのつぼ)

 などを裏で掌握しており、「奥王(おくおう)」と称される威厳と人脈を有する。


 広義には、花人を対象とする諜報活動・監査、

 ひいては粛清を行う者たちを示すが、

 出先機関として野を見張るグループは、「野守」と呼び分けられる。

 「野守」とは萩の異名。






大三閥(だいさんばつ)


 同姓の華冑内における上位三家。

 蓮家で言えば、蓮暁寺家・蓮宍家・蓮壬家。

 権威失墜、断絶などにより “元大三閥” などと呼ぶこともある。




大旆(たいはい)


 大三閥、もしくはそうなり得る家柄。




旆下(はいか)


 大旆の下に集う一族郎党(配下)。





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