1:『八雲原の戦い』
神代崩壊から百年あまりが過ぎた頃、夜覇王樹の民を従え、東天地峰を治めていた時の按主(覇玄の馨)と反乱分子の間で起こった戦い。
(この頃になると、天神・天兵が次々と勝利を収め、彼らのような善良な主や、その一族に対しては、人間も警戒心を解き、打ち解け合いつつあった)
八雲原の戦いの発端は、ある夜覇王樹の民と人間の娘が愛しあい、子を成したこと。天地の境が失われ、常世がなくなったことが何を意味するのか――いつの間にか、悪神を滅ぼす己に陶酔し、これを機にはじめて、神威が失われていく恐怖を実感した者たちが、人間との交流を深めていく方針の馨から、主導権を奪おうとした。
羅羽摩龍王が命を賭した新世界の構築――人間との共存を誓う馨と、その賛同者は反乱軍を制圧したが、馨はこの戦いで散華している。
後に、彼の一族が中心となって東天地峰を治めなおし、東天花輩と呼ばれる首長連合の国・萼を築いた。
建国の盟主(蓮王)――蓮暁寺晁熾扇〈れんぎょうじ・あきら・しせん〉は、夜覇王樹壺(軍事を司る花人の庭)と、常葉庭(祭事・歴史編纂を司る人間(神官)の庭)を創設。軍権の一部を旆下筆頭・蓮宍家などに委譲し、菊王・蘭王など各王家は八雲原の戦いで犠牲となったすべてを弔う者となる意向の熾扇に追随して、奥庭に隠遁した。
――【 ちなみに 】――
●奥庭は建国と同時に創設された、反乱分子などの粛清にあたる監察機関であり、墓守り。萼の歴史的な闇を抱える組織となっていく。
●「八雲原」とは……
天地の境を示した神代の八雲原と同名だが、ここでは古戦場を示す。後世でも度々、激戦が繰り広げられる場となり、近年では刹那と将彗が、六瞳を相手に散華している。(龍牙・飛叉弥の 父母 VS 伯父 )
山荷葉の群生地。「山荷」は「山の蓮」という意味で、葉が蓮の葉に似ている実在の植物。五月から七月が花期。雨や朝露に濡れるとガラス細工のように花弁が透明になる。花は散りやすい。花言葉は「幸せ」。




