6:『ある花人たちの物語』
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さて、天花園の花神に呪われた人間――花人の特徴は、花盗人の罪の印たる華痣と、色鮮やかな瞳を発現する見た目以上に、それら “脈印” に宿る強靭な生命力を使い、様々な贖罪に一生を捧ぐ運命であるということだ。
痩せ地の再生、傷病者の治療、穀物を貧民に恵むために回国する者もあるが、やはりその異能は傭兵として重宝され、人々に禍福をもたらしてきた。
穏健な東天の花人も、祖先を盲目にした私利私欲を嫌う形相は明王の如く、平和貢献のためと言いながら、破壊神同然の爪痕を残すため、世界各国の皇帝たちでさえも慰撫に努めている。
そんな鬼人の国に華瓊楽が使者を遣わしたのは、未曽有の大旱魃に見舞われた、八年前のことだった。
足もとに額ずく、自業自得な権力者たちには目もくれないが、盤上の戦で神算鬼謀をもてあましていた花人たちは、某若手の逸材に白羽の矢を立て、この華瓊楽の危機に挑む精鋭部隊を結成させた。
李彌殷は現在、その者らの活躍により平穏を取り戻したかに見えるが、本当の戦いはこれから始まる。
再来しようとしている旱魃の元凶を迎え撃ち、それぞれの約束を果たすため。
新たに招かれた “真の救世主” と目される、謎の少年とともに――――。




