初めての戦闘、生きるって
ドズ、ノックスと朝食を取りながら自分の今後について話し合った結果、まずは普通なりに何ができるか調べることになった。
現在自分の唯一の武器は持ち主よりもチートな日本刀。
一般的な認識?と異なり日本刀での戦闘は難しい。
自分がどの程度戦えるかを試すことになった。自分が知らないうちに。
釣り位でしか生き物を殺す経験などしない元の世界。
やれるか?
この辺りでちょうど良い獲物は、ハンターラビット。
大型犬位のウサギで、肉食、突進から頭突きと後足の蹴りが武器。
まともに当たっても死ぬことはないそうだが、気を失うと大変なことになる。
索敵はできるが戦闘力は低いノックスが斥候。真ん中に自分。最後尾にドズ。
ハンターラビットを見つけたら自分トノックスが入れ替わり、とりあえず一人で戦う。
危なければすぐにドズが助けてくれるらしいが、死なないように頑張ります。
ドズの家を出て森の奥に向かう。ノックスの頭からパラボラアンテナが出てクルクル回っている。
昭和のマンガか!!と言うツッコミがのどまで来たが、ぐっと堪える。
失われた科学技術とやらが怪しくなってきた。
ノックスを先頭に無言で歩くこと数分、前方から気配を感じる。あまり強くはない気配。
30歩ほど進んで、急にノックスが頭だけで振り返る。心臓に悪いからやめてほしい。
「ゼンポウ、20ポノトコロニハンターラビット。スデニコチラヲケイカイシテイマス。」
斥候の意味がなくないか?
ノックスと入れ替わり、頭の中でいろいろ考える。
ふと居合道の師匠の言葉を思い出す。
「居合道は型稽古だ。実戦で役に立たないと剣道連中は言うが、体が覚えれば、考えなくても戦えるはずだ。そこまで行って初めて身に付いたってことだ。」
肩と柄を握る右手の力を抜く。
先ほど感じた気配がハンターラビットだとすれば、目の前の藪に隠れているということか?
「ルー〇、フォースを信じなさい」
星戦争の強い爺さんの言葉がなぜか頭に浮かぶ。
ふざけた思考ができるほどには緊張していないようだ。
眼だけではなく、すべての神経を草藪にそそぐ。
草がざわついた瞬間、黒地に黄色いブチ模様のウサギ?が飛び出してきた。
気負わず、ウサギに真横に抜きつける。速すぎた、鼻先を軽く切っただけだ。
ウサギの勢いは止まらない。振りかぶる時間はない。
右に振りぬいた刀を手首で返し、右から左へと切りつける。
刀は吸い込まれるように、ウサギの口からのどまで切り裂いた。
切り抜くことができなかったようで、ウサギはそのまま自分の左を通って後ろへ飛んで行った。
振り返ると、大量の血を流して痙攣するウサギがいる。
「首を落としてとどめを刺せ。」
ドズが叫んだ。え?標準語?訛ってないよ。
気づいていない風をよそおい、刀を上段に振りかぶる。
うわ、ウサギと目が合った。一瞬たじろぐが、刀を振り下ろす。
日ごろの鍛錬の成果が出たのか、きれいに首を切り離した。
大きなためいきが出たと同時に両手が震えだした。
生き物を殺した感触が腕に残っている。
感傷に浸っている後ろでは、おっさんとバケツが嬉々としてウサギを解体していた。