ウォルトアスとおっさん
ドズがこの世界について教えてくれるようです。
ここはヒヅルという国の西端の森で近くにサイセ村がある。
ヒヅルは小国だが環境に恵まれ、豊かではないが貧しくもないらしい。
ドズは頼まれた薬草を採取したり獣を狩って生計を立てている。
ドズの家にはどう見ても機械にしか見えないものがたくさんある。
特に気になるのがドズの胸ポケットに刺さっているスマホらしきものと、
近くの机の上にはパソコンのようなものもある。
自分の視線に気づいたドズはポケットからスマホらしきものを取り出して見せてくれる。
動作などからみると明らかにスマホだが、通信機能は使えないらしい。
机のパソコンそっくりさんとリンクはできるが半径1km程度が限界。
昔の名残で持っていないと不安なのだとか。
じゃあということで、自分のスマホを見せる。
もとは科学技術者だったからか、興味深そうにスマホを見ている。
電源は入るが大半の機能は使えない。
充電できるか聞いたが、そもそも電気がこの世界にはないらしい。
電気の説明に雷や静電気のことを話したが、古い文献で見たといっている。
では、目の前の端末は何で動いているのか聞くと、魔素だと言う。
ファンタジーキターーーーちょっと取り乱しました。
空気中にある物質で魔素と呼ばれるもの。元素ではなく、光などと同じエネルギーだという。
魔素を取り込み現象を起こし、また魔素に戻るそうだ。
詳しいことはわからないが、そういうことらしい。
魔術や魔法もあるのか聞くと、ポケットからボールペンのような棒を取り出した。
ドズが何やらつぶやくと、棒の先にろうそくほどの火がともった。
さらに火が消えてまたドズが何やらつぶやくと今度は先端からレーザーサイトのような光が走った。
ドズ自身は魔術は得意ではないらしくこの棒を補助具として多少のことはできるらしい。
そんな光景を見ながらここが地球ではないことを確信してしまった。
そんな話をしていると、日も暮れて、夕食の時間になった。
食事の用意をするというので、自分のカバンにある賞味期限の近いものを出した。
ドワーフだから酒好きだろうと思い、ビールも出した。まだ冷えている。
初めて見る缶ビールに少し興奮気味だ。
ドズが用意した食事と自分のつまみなどで夕食を終える。
缶ビールはすべてドズの腹に収まった。
食後、自分の世界のこと、この世界のことなどを話し、今後どうするかを相談する。
結論は、明日近くの村に行き教会で話を聞いてもらうことになった。自分は神様を信じてないと言うと、この世界の教会は宗教活動より、役所的な役割の方が強いようだ。
ひとまず結論が出たので寝ることになった。
用意された寝床はハンモックのように布が張られている。
安定感に不安を抱えつつ乗ると意外といい感じである。
今日一日の疲れもあり、あっさり意識を手放してしまった。
目が覚めたら、この悪夢が覚めていればいいなと、心でつぶやきながら。