森に放置されるおっさん
初めて書きますので誤字や設定の不備などいろいろ問題もありますが、楽しんでいただければ幸いです。
それはいつもの木曜日。仕事は定時に終わり、趣味の居合道で汗を流した帰り道。
明日から月曜まで、有給消化なので、コンビニで食料などを購入し、久しぶりの休みに何をするか考えながら歩いていた。過去形である。
急に視界が明るくなった、そこは森の中。突然のことで混乱する頭。
「ナニガオキタ?」
近道に公園を通って、街灯の下を歩いていたはず。
「とりあえず、落ち着け」あえて声に出して自分に言い聞かせる。
こんな状態で、まずしなければならないのは、現状の確認と安全の確保。
まずは自分の体を確認する。
ケガはない。
体調は多少疲労感があるくらいか。
気になる異常はなさそうだ。
続いて、自分の周りを見渡す。
視界に入るのはあまり太くはない樹木と、足首ほどまで伸びている草。
見上げると、かすかにのぞく青い空と雲。
動くものは見えないな。
遠くで鳥が鳴いているのが聞こえる。
今のところ命の危険はなさそうだ。
次は持ち物について確認する。
これから何日サバイバルするかわからない。
重要な食糧。コンビニ弁当を含めて、要冷蔵のものが多い。
飲み物は、缶ビールが3缶と炭酸が500ミリリットルのペットボトルで1本。緑茶が2リットル。
要冷蔵の食料を何とか出来て1週間。何とか出なければ2日持たないか。
食料以外では、汗でぬれた稽古着と袴に帯、汗拭きタオル1枚と予備のタオルが1枚。洗濯したい。
刀の手入れ道具などの小物、傷バンと消毒剤。安全ピンが10本。携帯裁縫道具一式。
財布とスマホ。紛失防止のためのチェーンがついた自宅のカギ。
最後に唯一の武器である日本刀が一振り。軽量化のために樋が入っているので耐久性が低いか?
結論。不安が増しただけだ。
続いて、自分がいま置かれている状態を確認する。
何の前触れもなく知らない場所にいる。
直前の記憶は前述のとおり。
つまり、流行りの異世界転移?
ということはチートな能力が与えられて、俺Tueeeって感じですか?
そんな年でもないですが。
手始めに、ステータス画面を表示してみる・・・うん出ないね。
次に身体能力について試す。
近場の木を軽く殴る・・・痛いです。木には傷一つつきません。
力いっぱいジャンプ!上に飛ぶのは苦手なんですよね。
じゃあ、魔力だ。魔法が使えるかもしれない・・・何も起きません。
チートの定番、アイテムボックス・・・鑑定・・・悲しくなってきた。
結論、まったく変化はありません。
溜息しか出ない。
今できることを一通り終わらせ途方にくれたところで、腹の虫が鳴く。
買った時に温めてもらった弁当を消費しよう。
冷めるとうまくないのと賞味期限が一番早いのが理由だ。
周りの気配に気を配りながら、急いで掻っ込む。味わう余裕はない。
ちょっとお高めの弁当だったんだがな。
食べ終わったゴミをどうするか迷う。
ポイ捨ては社会人としての常識が許さず、予備のコンビニ袋に入れてカバンにしまう。
ほかの食料もカバンに全てしまい、できるだけ荷物を少なくする。
刀はまだしまっておこう。ケースのチャックを開ければすぐに使える状態にしておく。
ここにいても事態はよくならないので、移動を考える。
方角はわからない。地図なんてない・・・スマホがあるじゃないか!
急いでロックを外し画面をのぞき込むと、無情にも圏外を示すマークが。
ダメもとでGPSを作動させるが、そもそも地図がないのだから意味がない。
膝から崩れ落ちる。ちょっと考えればわかりそうなものだ。
いい年をしたおっさんが、体育座りで途方に暮れているのは、かなりシュールだ。
黄昏ていると、鳥の鳴き声や風の音に交じって水の流れる音がかすかに聞こえた。
川のそばには人が住んでいるはず。少なくとも下流に向かえば何かあるはずだ。
周りに気を配りながら歩くこと数分、飛び越せない程度の小川を見つけた。
川に沿って下流に向かう。
そろそろ疲れを感じ始めたあたりで、風景が変化した。
木がまばらになり、視界が開けた。
なんとなく安心したところで、後ろの草が音を立てる。
振り返ると同時に、ケースのチャックを開け、刀を握る。
出てきたのは・・・ちっさいおっさん?
見切り発車なのでこの先どうなることやら私にもわかりません。
主人公にはチートもハーレムはありません。