19. 卒業
学園生活二年目が終わった。
私は陽光石と月光石を使った浄化用ポーションの作成と効果が認められて、魔法科の卒業が決まった。高等科の方は、昨年の評価対象だった三級ポーションの領民への配布の他に、晩夏の嵐シーズン時の医術師派遣などの効果が認められて、昨年より良い成績を貰えた。一年待った甲斐があったのかもしれない。
みなし成人として領主就任の推薦も貰った。学長だけでなく、魔法学科の全教師と高等科の教師からの推薦は前代未聞らしい。更には卒業式で卒業生代表に選ばれた。今まで魔法科の学生が代表に選ばれたことがないらしい。代表の九割までが騎士科、たまに淑女科と高等科から代表が選ばれるから、こちらも前代未聞と驚かれた。
「卒業生代表、魔法科ユエィン!」
ユーグ先生が力強く私を呼び、壇上に上がる。既にその場に待機している学長から卒業証書を受け取ると、周囲からどよめきが起きる。
当然といえば当然のことだった。魔法科というだけでなく、私はまだ八歳、もう数か月で九歳になる子供で、この場にいる誰よりも年下だった。幼いと言ってもいい。フードを目深に被った姿であるが、子供だというのは身体の小ささで一目瞭然だった。
昨日、学長を後見として国王陛下との謁見が終わっており、その場でアングラート公爵家の当主に就任した。だからもう隠す必要が無くなったとはいえ、まだまだ年齢的に素性を明らかにするのは、デメリットしか考えつかなかったので差し控えた。
少し前に作ったポーションの素材である光石の扱いは、国王案件になって私の手を離れた。フェム神聖国と協定を結び、ルスュール王国が軍事で全面的な支援をする代わりに、光石の優先権を受けることになるらしい。光石の研究を国内でもするとかしないとか。
卒業したけど、まだ学園には通うことになる。研究科に籍を置くからだ。まだ勉強し足りないことも多いし、治癒術や魔法薬作成ももっと腕を磨きたいので、同級生たちと机を並べることになる。
「卒業おめでとう!」
「首席って凄いよ!」
卒業式の後は、卒業生と父兄が参加するパーティが開かれるけれども私も含めて魔法科の卒業生は全員が不参加だ。
代わりに魔法科だけの卒業パーティを開いた。在校生も参加可能なので、同級生も一緒に楽しめるのが嬉しい。
食材の持ち込みは、卒業生の実家からの差し入れが多く、学園の卒業パーティと遜色ないか、それ以上に豪華で美味しい料理が並ぶ。
入学当初は全員が目深に被っていたフードだけど、今では校舎内でフードを被っている同級生はいない。しかも着飾るのに興味が無さそうな学生たちも、この日だけは正装なのでとても華やかだ。
パーティの最中、こっそり学長が顔を出す。
「学長先生!? 卒業パーティはどうしたんですか!」
「そんなものどうでもなるよ」
学長を見つけた私はびっくりした声を上げるけど、鷹揚に笑って返される。
「こっちの方が面白いねえ」
ご機嫌でグラスを傾け、出会う先生達と片っ端から乾杯をしていく。
「学生は可愛いんだけど、直ぐに政治と絡めようとするから面倒くさいんだよね」
ぶつぶつと言うけど仕方ない。学長は現在の国王陛下の叔父だから権力が大きい。王族におもねろうと思う人も多いだろう。
「親がいない、子供だけのパーティって良いなあ。ずっとこっちにいたいなあ、僕も魔法学科の教師になろうかなあー」
「学長、また言ってるな」
「毎年の恒例行事ですねえ」
ドキドキしながら学長の愚痴を聞いていれば、愚痴は毎年の事だった。権力欲がある学生や親たちは、地位の低い魔法師なんか選ばないので、魔法科の卒業パーティなど見向きもしない。だから気楽で良いのだろう。しかも魔法科の卒業パーティは家族は不参加なので、学生ばかりなのも楽な一因だ。
「入学した時から、早く卒業したいって思いながら通学してたけど、いざ卒業すると寂しいかも」
「え、ユエィンってこれからも学園に通うんでしょう? 少なくなるけど授業も受けるんでしょ? 何が寂しいのよ」
「うん、まあそうなんだけど、形としては研究室の所属になるから、なんとなく気持ちがね」
授業も一部、同級生たちと一緒に受けられるのだけど、なんか違うんだよね。




